普通の日、ペペロンチーノ
今日はなかなか良くかけてるんじゃないかと思ったり思わなかったりそんな感じがしなくもなくもないような・・・。
うーん、良い朝。
きつい冷え込みもなく、晴れてて過ごしやすい1日だ。
明日からもこんな天気だと嬉しいんだが。
さて、今日の依頼は営業か。
前の屋台の奥さんによる口コミから始まったこのつながり、中々どうして侮れない。
確か、精肉店だったよな。
時間にはまだ早いが・・・とりあえず出るか。
まぁダメだったらダメでいい、どこかで時間をつぶすだけだ。
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「すいません、主人今しがた市場へ行ってしまって。」
「あ、そうですか。いつ頃お戻りになられます?」
「そうねぇ、お昼前には戻ると思うんだけれど・・・。ごめんなさいねぇ。」
「いえいえ、こちらが早く来すぎただけですし。どこかで時間つぶしてまた来ますね。」
不在、まぁ仕方がない。
結局こっちが早く来すぎただけだし。
じゃあ、そうだな。
―――小腹を満たしに、カフェでも行こうか。
確か近くにあったよな。
そこでコーヒーと甘味、あるいは軽食でもつまむとしよう。
場所は・・・あ、あったあった。
「いらっしゃいませ!お好きなお席にどうぞ!」
うん、普通のカフェだ。
木でできた机、そして椅子。
カフェの内装と思い浮かべたら、10人中7人はこんな内装を思いつくだろう。
さて、コーヒーは確定として、軽食は何にしようか。
お、季節のケーキ。
いやでもこのシュークリームも中々捨てがたい。
うーん、ここは・・・。
「お待たせいたしました。コーヒーとシュークリームになります。」
お、来た来た。
・コーヒー
湯気、そこから漂うはもはや気品さえ感じる香り。苦みが私の心をほぐしてくれる。
・シュークリーム
サクサクの生地、そこから出てくるは甘さ抜群生クリーム。この形、思い切り齧り付きたくなる。
では、いただこうか。
ホットコーヒーを、まず1口。
―――うん、これは、いいコーヒーだ。
すっきりとした後味、苦みの余韻。
その温かさも相まってしっかり私をリラックスさせてくれる。
飲んだ後にも感じるこの香りがまた、コーヒーらしくて素晴らしい。
そして、ここでシュークリームだ。
苦みを感じた後、そこに入れる甘さの緩急。
さぁ、どんな感じだろうか。
―――苦みが残る中、そこにサクサクの食感、そして上品な甘さが口の中へ。
いい、いいね。
この苦いものと甘いものの組み合わせ、凄くいい。
このシュークリームも凄く美味しい。
最初に噛んだ時のサクッとした感じ、リズミカル。
そこからくるのは生クリーム、甘さが白い雪崩のように口に流れ込む。
これがコーヒーを飲んだ時の苦み、余韻と凄くマッチ。
ふわふわのシュークリームも好きだが、こういう硬い系のシュークリームも私、好き。
まだ時間は・・・あるな。
ゆったりシュークリームとコーヒーで時間をつぶそう。
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「いやはや、先ほどは申し訳ない。」
「いえいえ、こちらが早く着きすぎただけなんです。こちらこそすいません。」
さて、ご主人も戻ってきたところで。
いざ商談開始。
「それで、今回はどういったご用件でしょう。」
「ああ、実はですね・・・これなんですけど。」
ん?
これは・・・絵?
しかも中々立派じゃないか。
「その絵、魔石をはめると動くんですよ。それも小さいやつで。」
「ああ、加工された絵ですね。」
これはまた、中々レアな品物だ。
絵を動かすのは簡単だが、その絵自体を上手く書ける人でないと立派な作品にはならない。
「そう、そうなんです。私そういった絵が好みでですね・・・中々他の作品を探しているんですが、見つからないんですよ。」
「あー、それは・・・そうでしょうね。」
上手に絵がかけて更に魔法や魔術での加工が必要な作品だからな、これ。
「それで、是非とも魔術師さんに違う絵を探してきてほしいんですが。お金はしっかり払いますので。」
「あー、なるほど。・・・うーん、ご期待に添えれるかどうかは分かりませんが、それでよければ・・・。」
「ありがとうございます。・・・前金は必要でしょうか?」
「ああ、いえ。とりあえずご予算だけ教えてください。私も知り合いに連絡するので、その際に予算と合ってれば立て替えて購入してきますよ。」
さてさて、これはまた難しい依頼になりそうだ。
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うーん、やはり中々すぐには見つからない。
品物自体も珍しいし、私自身中々見かけたこともないからなぁ。
とりあえず顔なじみには連絡しておいたが・・・そうだな、美術関連の取引先や古道具屋の取引先にも聞いてみよう。
流石にしらみつぶしに探せばいくつかは見つかる。
と、思う。
まぁまずは顔なじみたちの連絡待ちだな。
しかし、もう昼か。
いい匂いがあちこちからしてくる。
こんな香りかがされちゃあ、そりゃあもう。
―――腹が、減ってくるってもんよ。
うん、腹が減った。
とっとと飲食街へ行こう。
私は絵みたいに、魔石だけじゃ動けないんだ。
よし、到着、飲食街。
今日は何を食べようか。
うーん、私の胃袋は・・・美味いもの。
私の脳は美味しいものを求めている。
ダメだ、全く参考になりやしない。
結局何でもいいけど美味しい料理、こういう事なんだろう。
だが、どうするか。
いや。あれこれ考えてるからダメなんだ。
ここは1つ、歩き回って店を探そう。
食堂。
混んでる。パス。
居酒屋。
ここは・・・閉まってるな。
ランチ営業もないみたいだ。
レストラン。
レストランかぁ・・・最近行ってなかったよな。
何だろう。そう思ってきたら急に行きたくなってきた。
良し、今日はこのレストランに決定だ。
「いらっしゃいませ。奥のテーブル席へどうぞ。」
お、テーブル席、しかも奥側とは。
何気に嬉しいポジショニング。
しかし、何というか。
ここもさっきのカフェみたいに、ザ・レストラン的な感じだ。
メニューは冊子か。
どれどれ・・・。
お、グラタン、パスタ、ドリア、更にはステーキ、ハンバーグ。
なんだなんだ、私の好きな物ばかり、目白押しじゃないか。
しかし全部美味そうだな。
どうする、どうする私。
全部美味しそうで、これは中々決めるのが難しいぞ。
どれを主食に、どれをサイドにするか、店をすんなり選べたと思ったらメニューで迷宮入りだ・・・!
「お待たせいたしました。ペペロンチーノとシュリンプグラタンになります。ごゆっくりどうぞ。」
おー、壮観だな。
・ペペロンチーノ
迷いに迷った挙句、主食枠をこのパスタに。最近食べてなかったし、久しぶりに食べたくなった。
・シュリンプグラタン
サイドメニューらしからぬサイド。私がサイドと決めたんだ、サイドだ。しかしボリューム満点、しかも底にはマカロニとシュリンプが眠っている。あー、香りがもう美味しそう。
では、いただきます。
まずは、やっぱりペペロンチーノ。
こう、響きが楽しいよね、ペペロンチーノ。
フォークをくるくるっと回せば、ほら。
ペペロンチーノが巻き付いてきた。
それを口へ・・・。
―――まず最初に言わせてくれ、美味い!ちょっぴりスパイシーな感じが美味さを倍増してる!
久しぶりに食べたが、この美味さ。
安定して美味しいペペロンチーノ。
こりゃペロンと食べれちゃう、なんちゃって。
こう、少し油で、オイリーな感じがまた良いよね。
この感じがつるっと食事を勧めさせてくれる。
具材もシンプルなのがまた良い。
私は今、パスタを食べている!そんな気分になれる。
でももう少しオイリーな感じが欲しいな。
底からもう一度、しっかり混ぜてみるか。
あ、良い感じになってきた。
この麺のテカリ具合、もはや芸術品だろう。
しかし本当に美味しい。
食べているはずなのにどんどんと腹が減ってくる。
こう、パスタを、味付けを、店の歴史と技術を、シンプルに頂いている様な・・・。
ああ、パスタがフォークだけじゃなく私の食欲にも巻き付いてきた。
だが、ここいらでグラタンと洒落こもうじゃないか。
折角のアツアツグラタンなんだ、熱いうちに食べないとそれは失礼というもの。
食欲に巻き付いたパスタを振り払い、グラタンの熱湯へ飛び込んでみよう。
ふと疑問に思ったが、グラタンってフォークとスプーン、どっちで食べるのが正解なんだろう。
まぁ今回は、フォーク。
君に決めた。
お、ホワイトソースがゆるくない。
これはフォークで正解だった。
フォークもいい感じに着底、マカロニとシュリンプを一緒に捕らえた。
では、1口。
―――お、美味しい。もちもちのマカロニ、ぷりっぷりのシュリンプ!そこにホワイトソースが絡んでくれば、もう最強!
いやはや、このグラタンにはびっくり。
こう、グラタンの文字をじっくりぐつぐつ煮込み続けたような、そんな感じの美味しさ。
これは・・・サイドメニューと言えないな。
すいませんでした。
このマカロニとシュリンプの弾力、これがまた美味しくて楽しい。
マカロニはもちもちな感じ、そしてその穴にホワイトソースを秘めてる。
シュリンプはぷりっぷり、歯ごたえしっかり。
口の中でシュリンプが跳ねまわってる・・・。
そしてどちらも表面に纏う、この濃厚なホワイトソース。
ホワイトソースというグラタンの基本、こいつが凄く美味しい。
ああ、グラタンの表面を破るときに少し硬いというか、サクッとした感じ。
この感触を何て表現しようか。
だが、そこからまた湯気が昇ってきて、私の視線をくぎ付けにする。
いかん、ペペロンチーノもいるというのに、完全にグラタンに魅了されている。
熱さを感じさせないその表面、そこを破ると立ち上る美味さの情熱、この二面性にいちころだ。
これは、何だか、こう、もうたまらん。
グラタンを勢いよくフォークで・・・アッツ!
そうだ、まだまだ中は熱いんだ、気を付けないと。
そこで出てくるペペロンチーノ。
フォークで巻いて、口の中へ。
ああ、何だろう、浮気してごめんね。
君も美味しいんだ、でもグラタンも美味しかったんだ。
食べ進めて、気づけば、ペペロンチーノを完食。
そこから挑むはまだアツアツのグラタン。
やはり、こいつはメインだったのかもしれない。
いや、両方メインでもいいか、美味しければ。
よし、このままグラタンも食べまくっちゃおうじゃないの・・・!
アッツ!
「ありがとうございました。又のお越しをお待ちしております。」
あー、美味しかった。
パスタとグラタン、中々ヘビーかと思ったが、全然そんなことなかったな。
いや、きっと本当はヘビーなんだろう。
それを感じさせない、あの美味しさ。
まさにレストラン、天晴!
さて、少し火傷した口をいたわるために煙草を・・・。
まぁ私が吸いたいだけなんだが。
うーん、煙の余韻、良いね。
というか今思えば私いろんな料理でも煙草でも余韻ばっかり味わってるな。
・・・ま、いいか。美味しいんだし。
さ、絵探しの再開だな。
どこかにポロっと落ちてないかなあ。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。今後はグラタンをフォークで食べようと決意。だが3日後には忘れた。
精肉店の主人(男性)・魔物肉から畜産まで、幅広く対応。実はかなり儲かっている。




