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薬膳シチュー

食材とかの設定、ふわっふわなので察してください。

「出来上がった魔道具がこちらです。ご確認ください。」


「ほぉ・・・ほぉ!こりゃいい出来じゃないか!」


「ありがとうございます。」


先日受けた依頼、ヒノキの大将に魔道具を納品する。

何だか昨日居酒屋に行った後気持ちが高ぶって、少し早めに完成させてしまったんだよな。

しかしこれで鍋という料理が食える・・・はず?


「どうでしょう、これで鍋という料理、できそうでしょうか?」


「おう、たぶん大丈夫だが・・・これどこで火加減とか調節するんだ?あと燃料とかはどうなってる?」


「ああ、燃料は魔石を使用してまして。火加減についてはこのつまみを・・・。」


「おお、なるほど。」


「さらに事故を防ぐためにも転倒した際自動で消火、またそもそも転倒しずらいように形状を整えてですね・・・。」


ほう、とかへぇ、とかこりゃすごい!しか言わない大将。

大丈夫か・・・?




「なるほどな、大体わかった!これがあれば鍋料理うちでも出せそうだ!」


「それは良かった。」


本当に良かった。

私の新しい料理の発見が増える。


「じゃあ、前話した通り追加分の納品もよろしく頼むよ!」


「ええ、お任せください。・・・ところで、鍋っていつ頃になります?」


開発者特権で今日食べれないだろうか。


「あー・・・、鍋料理、まずは鍋自体の発注もあっからなぁ・・・。まぁまだ先だな。」


なんと・・・ズーンだな・・・。


「まぁ、鍋の発注が終わって完成したらお前さんに連絡してすぐ食わせてやるよ!楽しみにしときな!」


「ええ、その際はぜひ。」


うーむ・・・今日の夜は鍋!という気分でいたんだが、少し悲しみ。

まぁいい、追加の分の納品が終わったころには鍋の開発も終わっているだろう。


「ああ、後他にも注文したいもんがあるんだが大丈夫か?」


「物によりますが・・・どんなものですか?」


「ああ、いやー、あのな・・・。」


大将が作ってほしいもの、それはアクセサリーだった。

というのもあの美人な嫁さん(女将)との結婚記念日が近づいているとの事。

折角なら良いものを贈りたいが何にするか決めれずここまでズルズル。

とりあえず贈り物として無難なアクセサリーにしたいが、デザインも何も分からない。


そこで、私を思い出した。


ここまで来るのにまたもやのろけをくらったんだが。

書けば4、5行で終わることを1時間近くも話さないでほしい。

だが、アクセサリー・・・。


「なるほど、お話は分かりました。ですが少し私では手に負えかねますね・・・。」


「おぅ、そうか・・・。」


のろけていた時の幸せhあどこへやら、すごくしょんぼりしてる。

おっさんのしょんぼりとか需要ないぞ。


「ああ、ですが無理ではないですよ。アクセサリー等に詳しい知り合いがいますので。」


こういうのもなんだが、私は自分の人脈は広い方だと思っている。

なんせ普通の魔術師がやらないような依頼もこなしたりするからな。


「そいつなら今暇してるって言ってましたし、多分受けてくれるんじゃないかと。」


「本当か!!いやーよかったー・・・。」


「一度連絡して、後日お店の方に向かわせますね。」


「おう、あんがとな!!」


「では、この辺で・・・。」


「あいよ!今度うち来たらサービスしてやるよ!」


「それはありがとうございます。」


さて、連絡をしておかないとな・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――


ふぃー。今日も仕事が全部片付いた。

だがもう夕方、こりゃ今日もどこかの店へ行ってみるかな。


しかし鍋、鍋が食えなかったのは気に病まれる。

いかんいかん、気を取り直して別の料理に切り替えよう。

とりあえず飲食街へ歩いてみるか。



さて、今日は何にしようか。


魚料理。

うーん・・・気分じゃない。


肉バル。

肉を出すBarか?気になるが・・・酒は昨日のんだからな。チェックしつつ今日はパス。

というか、昨日は少し飲みすぎた気もする。


がっつり行きたいが、行きたくないというか、何を食えばいいかわからん状態だ・・・。


うんうんうなりながら歩くこと数十分。

そろそろ疲れてき・・・あ。


「薬膳料理 ザゼン」


薬膳料理・・・。

どんな料理なんだろう。

ポーションでも使ってる料理か?


気になる・・・気になるぞ。

しかも店の名前がもう、なんかこう、来る。


いや、臆するな私。

今の私は酒で少し体が弱っている。

さらに胃袋も空腹、このままでは胃袋が無くなりそうだ。


ならば、入るしかあるまい・・・!!




「いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ。」


おお、なんというか、不思議な内観だ。

お洒落な店、しかし派手過ぎず、落ち着く雰囲気も併せ持っている。

案内された席も非常に綺麗、清潔感を感じるね。


「こちらメニューになります。ごゆっくりどうぞ。」


合わせて給仕の優雅な姿よ。

金髪にしっかりとした生地の黒の執事の恰好。

気品を感じるな・・・。


まさか高級店じゃないよ・・・な、うん、価格は普通だ。

ただ一般より少し高めか。

まぁ、払えないほどじゃない。


と、料理は・・・。


・ザゼンシチュー

当店自慢、お勧めの1品。


決まりだな。

気品を感じる店、その店が自慢だというならば間違いはあるまい。

更に・・・ライスのセットもあるのか。

シチューライス、良いじゃないの。


「すいません、注文をお願いします。」




「お待たせいたしました。ザゼンシチュー、ライスセットになります。」


おお、どれどれ・・・。


・ザゼンシチュー

綺麗なホワイトシチュー、何だろう、普通のシチューよりも更に白く見える。香りもすごい。具材もごろっと入ってるのもポイント。


・ライスセット

ライス→色とりどりの雑穀米。雑穀米、生きてて1、2回しか食べたことないんじゃないか。


・スープ

ライスセットについてくる日替わりスープ。今日はトマトスープらしい。汁物と汁物が被ったが、まぁいいか。しかしこれはまた綺麗な赤色・・・。


・小鉢

これもまた日替わり。今日はマジックマッシュのアンカケというやつらしい。このドロッとしたソース、気になる・・・。


まぁとりあえず食べるとしようじゃないか。


「いただきます。」


まずはメインディッシュ、ホワイトシチューから。

このシチュー、スプーンですくって、1口・・・。


―――身に、心に、沁みる様な、そんな美味しさ。


これはあれか、五臓六腑に染み渡る、そんな感覚を今私は体験している。

濃い味付けではないんだが濃厚なホワイトシチュー、この感覚わかる人いるだろうか。

そして具材が・・・また美味い。


ホワイトシチューなのにシチューだけじゃないぞ!と主張をしてくるごろごろ感。

でも優しい主張、そんな口当たり。


ごろっと硬派な主張、しかし柔らかいポテト。

シチューに寄り添うキャロット。

まさに文字通りとろけるオニオン。


優しい、でもしっかり美味くてグッと染みる。

具材とシチューが手を取り合うような、優しい世界。

それがこの1皿に詰まっている。


では、これをライスと食べるとどうなるのか。

この優しい世界に、好奇心で、敢えて部外者を交えてしまう私。


ライスをそっと掬い、シチューに少しだけ浸し、食べる。

―――ああ、杞憂だった、このシチューはライスを暖かく迎えてくれる。


口の中でシチューの味に包まれるライス。

この組み合わせ、尋常じゃないほどおいしい。

雑穀米ならではのたまに違う歯ごたえ、これがまたいい味と仕事してる。

シチューだけじゃない、自分もいるぞ、そう、訴えてくる。


ではトマトスープはどうだろう。

シンプルなトマトスープ、具材は・・・入っていないな。

どれ、1口。


おお、トマト感満載なのにトマトじゃない、でも少しトマトな感じのする美味しいスープ。

見た目真っ赤なのに、完全にトマトじゃない。

しっかりとトマトを使用したスープに姿を変えている。


後味もスッと入ってきて、良い感じ。

優しいシチューに、優しい口直しのスープ。いいじゃないか。


再びシチューへ。

これは・・・改めてみるとごろごろとした具材がまるでお宝の様だ。

例えばシチューという大海原に眠る宝。


では、次はシチュー、具材、ライスの三すくみで行こうじゃないか。

ここは・・・キャロット、君に決めた。

キャロット、シチュー、ライス、さぁ、口へ。


―――美味い。優しくて、美味い。


シチューとライス、そこに具材が混じってもなお調和しているこの奇跡。

これはもう、手が、止まらない。


体に染み渡るシチュー。

胃袋へ優しく積み上げられる具材とライス。

高ぶった気持ちと余韻をまた優しく癒してくれるトマトスープ。

酒を飲んだ次の日の、ごちそう。


というか、何だろう、体がポカポカする。

熱い料理とか食べた時の一時的に熱い感じじゃなくて、こう、芯からあったまる様な。

これはあれか、薬膳なのか。


酒に酔った体を、このホワイトシチューという優しい薬が、癒してくれる・・・。


嗚呼、


―――ごちそうさまでした。




「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」


あー・・・美味しかった。

体じゃない、こう、心が美味いシチューで癒されて、何だか優しい気分。

嫌きっと体も癒されたのだろう。

今もほんのり暖かい。


タバコは・・・家で吸おう。

今はまだ、このちょっとした余韻に浸っていたい気分。

さ、帰りますか。


願わくば、次も美味い店に会えるように。

主人公(男)・魔術師。実は少し二日酔い気味だった。しかし酒はやめない。


ザゼンの給仕(男)・イケメン。執事の恰好をばっちり着こなす。彼目当てのお客もちらほら。

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