中華料理、麻婆豆腐
今回少な目。
前の焼肉、美味かったなぁ。
そんなことを思いつつ、もう少しで魔王祭が始まる今日この頃。
私はいつものように依頼を選んでは消化する日々、まぁ消化しないとお金稼げないしなぁ。
しかし何だろう、今、自分自身に、気が抜けている様な気がする。
最近美味い店が増えたのか、もしくは私の観察眼が良くなったのか、美味い料理にありつける今日この頃。
気づけば今日の昼は何を食おうか、夜は何にしようか、そんなことばかり考えている。
いかん、今から学院での依頼なのだ、気合を入れなければ・・・。
「おはようございます!先日の授業の立ち合い、ありがとうございました!!」
「いえいえ、こちらこそ。報酬もしっかりいただいてますしお礼要りませんよ。」
ただしもうあの依頼は嫌だが、と心の中で付け足しておく。
あんな意識の子供ばかりではいつ重大な事故が起きて責任を取らされるかわかりゃしない。
「そ、それでですね・・・良ければなんですが・・・。」
おっと、いきなり不穏な空気。
「申し訳ありませんが、授業の立ち合いは今後難しいかと・・・。こちらにも予定がありますので・・・。」
「あぅ・・・そうですよね、すいません・・・。」
しゅんとうなだれる新任教師。
うわぁ、その体系でそうされると、何だかこっちが悪者みたいじゃないか。
「あ、で、でも!受けてくれれば学院側でも今後いろいろな依頼を出してくれますよ!教育長も多少融通するって言ってました!」
ね、どうですか!といわんばかりに目をキラキラさせる教師。
まるで子供みたいだ・・・。
しかし、学院側の依頼は多少面倒でも美味いものが多い。
うーむ・・・。
「まぁ、でしたら予定次第では・・・たまにならお受けできるかもしれませんが・・・。」
「本当ですか!?ありがとうございます!!じゃあいついらしてくださいますか?」
「え?えーと、予定を確認しないと何とも・・・。今週は確か埋まってたかなー・・・?来週は完全オフですが・・・。」
「じゃあ来週ですね!ありがとうございます!!」
やったーとぴょんぴょん跳ねる教師。
君ほんとに教師?
見れば見るほど中学生くらいにしか見えないんだが。
「で、ですが、来週と言えばいよいよ魔王祭ですよ。授業も休みじゃありませんでしたか?」
そう、来週はいよいよ魔王祭が始まる。
1週間ぶっ続けのお祭りなんだが、確か昔はその間授業はなかったはず。
「ほかのクラスはそうみたいですが・・・私が持つクラスは魔王祭は補習になってますね!」
基本的に休みないので、だから大丈夫ですよ!と笑顔でいう教師。
なにも大丈夫じゃないんですがそれは・・・。
ていうか私その補習に付き合わされるの?
「来週毎日忙しいと思いますが、補習の立ち合い、よろしくお願いしますね!」
ニコっと笑う教師。
わたしは めのまえが まっくらに なった ▼
気づけば、来週の段取りを終えゾンビの様に歩く私がいた。
やはり今の私は気が抜けているらしい。
不用意な一言で来週の予定が埋まってしまった・・・。
何だろう、疲れてるのかな、私。
いや、疲れてはないはず、けどなんかだるいというか、でも病気じゃないし。
とりあえず腹が減った。
店でも探すか。
今の私に必要なもの、それは優しさでもがっつりでもない。
きっと気合い、気合や活が必要なんだ。
そんな料理を食べれる店、ないだろうか。
飲食街についた。
飯を探すとなると気合が入るこの体、何とも現金なものだ。
気合が入る料理、気が引き締まる料理、活が入る料理・・・。
定食系。
違う、これじゃない。
焼肉。
この前食べた。
中華料理。
・・・?これじゃないか?
前に食べたことあるが、中華料理と言えば確か辛いものが多かったよな。
辛いもの、いいんじゃないか。
今の気の抜けた私にぴったりかもしれない。
辛さで気合を、活を、気を引き締める。
いかん、想像したら辛いものが食べたくなった。
今日は中華料理で決定だな。
「いらっしゃいませー。そちらのお席にどーぞー。」
やってきたのは「中華料理 テンシン」。
ここは前にも来たことのある中華料理屋だ。
確か前はチャーハンとギョーザを食べた。
しかし今回の目的は違う。
今日は気合を入れに来たのだ。
メニューをめくりながら、前に見かけたものを探す。
・・・あった。「麻婆豆腐」。
この赤に染まっている料理。説明書きにも辛いので注意と書いてある。
写真を見た時点で辛いとわかる料理。
いいじゃないかいいじゃないか。少しずつ期待も高まってくる。
今回はこの「麻婆豆腐」をメインにメニューを組み立てるとしよう・・・。
「お待たせしました!麻婆豆腐極辛、ライス、中華サラダになります!ごゆっくりどうぞ!」
さてさて来ました、今回の料理。
・麻婆豆腐極辛
ぐつぐつ煮えたぎっている。活を入れるために一番辛いやつを頼んだ。今日の私に活を入れてくれるはず。
・ライス
麻婆豆腐のお供。何とでも会う万能主食。
・中華サラダ
箸休め的な感じで頼んでみた。春雨を使用した一般的なサラダらしい。
では、さっそく麻婆豆腐・・・。
熱っ。
まだぐつぐつ音がする。
しかし、しかし!
この辛い香りが私を誘う。
―――熱くても、掻っ込めと!!
いざ、1口目!
はふっ、ぐおおお、熱い!
熱くて、味が、わからん!
いや、これは辛い?少しずつ熱さに慣れてきた・・・?
はふっ、はふ・・・おお、慣れてきた慣れてき・・・辛い!辛いぞ!
でも・・・美味い!!!
この熱さ、辛さ、そして美味さ!
美味いのに、気が引き締まる!
こりゃたまらんぞ!
うおおお、舌がしびれる!口が痛い!でも美味い!
体が悲鳴を上げているのに、悲鳴を上げているからだがスプーンを止めない!
汗だらだらでも、目を見開いても、私はこの麻婆を食べ続ける!
手を止まらせようとする辛さ、それを拒否する辛い美味さ・・・!
いかん、汗が噴き出てきてすごいことに。
一度箸休めだ。
中華サラダ・・・どれ・・・。
おお、優しく美味い。
優しいけど、辛さへの探求がより強くなる。
ひりひりとした口の中、そこを優しく撫でてくれる春雨、そして火が付く私の心。
これはある意味麻婆豆腐にピッタリのサラダだ。
箸休めのはずなのに、麻婆豆腐が食べたくなってしょうがない。
いざ、麻婆豆腐へ・・・おおお!また味が変わって辛い!
さっきは熱で麻痺していた口の中、中華サラダが洗い流して、ダイレクトな味が伝わってくる!
これもまた・・・辛美味い!!!
さっきの辛さがひりつく辛さなら、今の麻婆はしびれる辛さだ!!
そして合間に挟むライスがいい仕事してる。
辛さを中和するだけじゃなく、麻婆豆腐のおいしさを引き立ててくれる。
そうだ、せっかくなら残りのライス、麻婆豆腐をのせちまえ。
うぉぉぉおおん!麻婆をライスにON!!
これは美味い!辛い!しびれる!美味い!!!!
汗が噴き出す、手が震える、それでも私は食う!
もはやこの麻婆豆腐は食卓の王様だ、いや、暴君だ!
その暴君を支えるライスという名の妃、そして忠実な家臣の中華サラダ!
私はその兵士、暴君に使えるただただ忠実な兵士!
王のためならどこまでも!
美味い!辛い!美味い!万歳!!!!!
おっと、唐辛子をダイレクトに噛んだ・・・。
くぅぅっ、痺れるッ・・・!!
この唐辛子は王の逆鱗、私は今、逆鱗に触れてしまったッ・・・!!
これは、気合が、活が、私にみなぎる!
正に今、私が求めていた料理!!!
麻婆ライス、最高!麻婆豆腐、至高!!
中華サラダの優しさ、そしてその裏で麻婆を進める働き、万歳!!
この中華大国のために、私は汗を流してでも、手がしびれてでも、食べるのを、辞めないッ!!!
「ありがとうございましたー!」
ふぅ、すごい飯だった。
刺激的で美味く、且つ気合も入りなおしたような気がする。
ピンポイントでこの料理に出会える私、幸運じゃないのか。
辛さで今も少し痺れる口で、タバコを吸う。
この余韻、またこれが幸せ。
ああ、心に火がついているのに体は穏やかに暖かい。
次はどんな料理に出会えるのだろうか。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。今の私に触れると火傷するぜ・・・?
中華屋の給仕・美少女。チャイナドレス。髪はもちろん・・・。