食堂、豚の生姜焼き
ブクマ少しずつ増えてフヘッてなりました。
「花瓶、ですか・・・。」
「ええ、この前屋台の奥さんから聞いて。いろいろな物を取り扱っていたり修理もしてるっていうから、一度聞いてみたくて。」
中心街にある花屋。
この前の屋台の奥さんからの紹介だ。
まさかこんなに早く口コミが伝わるとは・・・。
ありがたい、この調子で割のいい依頼が増えると嬉しいが。
しかし、花瓶か。
一応似たような依頼もあったが、私の場合普通の花瓶にいろいろな機能を付けることになる。
流石に陶芸なんてのはできないからな・・・。
「まぁ取り扱い自体はできますね。ただ普通の花瓶ですと私の知り合いの方を紹介しますが・・・。」
「えーと・・・普通じゃない花瓶っていうのはどんなものかしら?」
「そうですね・・・単純なものだと夜に光る花瓶があります。花瓶や花の色に合わせた色もできますよ。」
「あら・・・いいじゃないの。」
「ありがとうございます。ただこの光る花瓶、あくまで既存の花瓶に加工を施したものなんですよ。なので花瓶自体はこのえーと・・・合った。このインテリアのカタログから選んでいただくか、もしくはお客様自身でご用意していただく必要があります。」
家具のカタログ、一応持ってきておいて正解だった。
私の場合加工や修理もあるため、インテリアなどのカタログも持っていた方が都合がいい。
その為前回のアクセサリーと同様、家具やインテリア、大工などの知り合いもいる。
後はどんな花瓶を選ぶか・・・。
流石にあまりにも薄いものだと加工が非常につらい。
まぁできないとは言わないが、時間がかかるので正直嫌だ。
「見せてもらうわね。あら・・・いろいろな種類があるのね・・・。」
「ええ、あとは花瓶の形状や材質によって加工の時間や費用が変わります。」
「へぇ・・・。あ、これいいかも。」
「よければそちらのカタログお渡ししますので、じっくりと考えてください。」
「あら、ありがとう。じゃあまた決まったら連絡するわね。」
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うん、すんなりと終わった。
あとはどんな形の花瓶を選ぶかだが・・・目をつけていたやつは普通の花瓶だった。
ならそんなに時間も労力もかからないだろう。
さて、午前中の仕事はこれで終わりだが・・・。
―――腹が、減ったな。
午後の仕事は・・・そんなに遠くない場所か。
よし、なら軽く腹ごしらえ。
だが飲食街は真反対か。
仕方ない、今日は中心街で店を探すか。
さてさて、今日の私は何を求めているのだろう。
豪華な物はこの前食べた。
なら今日は・・・普通の物だな。
ただカフェとかの軽食って気分でもない。
がっつり、しっかり食べたい。
定食、サービスランチ。
うん、きっとそんなものでいいんだろう。
そうと決まれば食堂でも探すか。
歩く、歩く。
しかし時間が少し早いのか、営業中の店が少ない。
カフェとかはやっているんだが・・・。
何かいい店は・・・私のオアシスは・・・どこだ。
お。
「ダイニングキッチン マティーナ」
おお、良いんじゃないか。
カフェだらけの中に突如として現れた、ダイニングキッチンという名のオアシス。
きっとここに私が求めるものがあるんだろう。
よし、今日はここに決まり。
「いらっしゃいませー!こちらどうぞー!」
おお、いかにも食堂。
名前のおしゃれ感とは裏腹に、思いっきり大衆食堂。
メニューが壁とボードのみというのがまたそそる。
そして客が意外に多い。
きっとこの時間に飯を食いたい人がこぞって集まるのだろう。
働く人の、労働メシ。いかにもそんな感じだ。
さてさて、あとはこの中からどんな料理を選ぶかだ。
壁、そしてボードにのっている料理の羅列、この中から私が求めるものを選び出さなければ。
今の私の気分は・・・肉だな。
労働メシ、がっつりとした、肉。
肉の料理は・・・豚の生姜焼き、か。
食べたことないが、外れはないだろう。
あと・・・小鉢も行こうか?
そうだな、行こう。
「すいません、注文をお願いします。」
「はーい。」
「お待たせしました!豚の生姜焼き定食、小鉢の卵焼き、ミニサラダです!」
これこれ、良い感じ。
・豚の生姜焼き
見た目と香り、そして色。量も満点、まさに働く男の飯。ライス1杯で太刀打ちできるか・・・?添え付けのキャベッジ、そのボリュームも満点だ。
・小鉢の卵焼き
完全に黄色じゃない、少し茶色のある感じがまたいい。食事の黄色い存在感、どうしてこうも私を魅力するのだろう。
・ライス
定食といえばライス。ライスといえば白。何物でもなく、何にでもなれるその存在感。
では・・・いただきます。
さて早速の生姜焼き・・・きっとショウガが使われているんだろう。
そしてこの肉の・・・ぺらっとしているのに全く薄くない存在感。
私に早く食ってその実力を見せてやるといわんばかり。
いざ。
―――ガツンと来るショウガのパンチ、薄いのに分厚い肉の存在感。破壊力絶大、これでもかと私に豚がショウガの牙で突進してくる。
これは・・・何とも硬派なおかず。
ガツッときてグッとくる、そんな美味さがここにある。
なんだろう、お洒落とか気取ってない、正に食うための料理。
薄いはずなのに、ジューシーな肉。
この肉でライスをまくと・・・ほら、美味い。
こいつはライスお代わり必須、それだけの実力がある。
そしてこの肉の感じ、香りが私の空腹にドスンと答えてくれる。
生姜焼きとやらのタレ、君の存在がすごい。
薄いはずの肉に存在感を出し、メインディッシュに押しあげるその実力。
薄い肉をここまで加工できるこの料理。
薄い花瓶に加工が難しいといっていた私をあざ笑っているかのようだ。
きっと私が薄い肉に塩を振って食ったとしてもここまでの美味しさにはたどり着けない。
そして・・・キャベッジ。
こいつがまた美味い。
そのままだとただのキャベッジ、しかしこのタレが合うともはやおかず。
―――ほら、美味い。タレキャベッジ、もはや立派なごちそう。
タレ、憎いほどいい仕事する。
君はどうしてこうも簡単に、難しい加工を施してしまうんだい?
肉にたれが絡んでジューシーな美味さ。
こいつはさっぱりとした美味さ。
1つの皿で2つの味、まさに一石二鳥のメインディッシュ。
野菜がこうも美味くメインディッシュになりうる定食、中々ないぞ。
あー、肉でライスとキャベッジをまいて、食う。
これが・・・たまらん!!!
ジューシーさ、シャキシャキ感、ライスの食べ応え。
そしてすべてが混じったその味、デリシャス。
これはライスの劣勢確定、その為の・・・卵焼き、君だ。
黄色く輝くその存在、きっと私の味方な筈。
―――うまい、程よい塩味、何にでもなれるその圧倒的存在感、グッド。
シンプルな塩の卵焼き。
しかし、これだけでライスが進む。
この味付け、そのままでも、どんな調味料でも、万全に合う。
これは裏切られた。
こいつは味方だと思っていたが、その実、こいつもライスを減らす伏兵だった。
黄色に輝いて主張するその存在、憎し、美味し。
この卵焼き、もしかしてこの生姜焼きのタレにも合うんじゃないか・・・?
物は試し、行ってみようか。
―――タレ、卵、口の中で大爆発。まさに美味さの絨毯爆撃。
卵焼き本来の味とは違う、しかしこれはこれで美味いと認めざるを得ない存在。
ライスが、減っていく。
もう・・・お代わりをするしかないじゃないか。
何だ、何なのだ、この定食。
私は今、ライスと共におかずの群れへ立ち向かっている。
そこに味方はなく、まさに孤軍奮闘。
これは世界一、空腹を満たす、幸せな戦場。
豚の猛攻をしのぎ、キャベツの地雷を除け、空から降る卵の爆撃を除ける。
まるで1人闘争。
しかしこれぞ、働く男の飯。
ライスをお代わり、猛攻をしのいだか。
後はとどめだ。
ラストはやはり・・・生姜焼きライス、これでとどめだ。
いくぞ生姜焼き、これぞ最終決戦だ。
「ありがとうございましたー!」
ふぅ、これは私の勝利だろう。
猛攻をしのぎ、幸せな気分で空腹を満たし、食欲を満足させた。
なんだ、終わってみれば私の圧勝ではないか。
しかしライスをお代わりする予定はなかったんだが・・・してしまった。
いやあの破壊力、ライス1杯じゃ足りないだろう。
まさかの卵焼きという伏兵もいたんだ、仕方がない。
さ、煙草で一服して・・・。
ふぅ、この1仕事終えた感、凄い。
飯を食っていただけなんだがな。
まぁいい、気力十分、元気ばっちり。
この勢いで午後の仕事も片付けようじゃないか。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。ショウガの可能性を感じ、ポーションに配合。無事死亡。
花瓶の依頼主(女性)・花屋を営んでおり、花を魅力的に見せる花瓶を依頼。屋台の奥さんとはマブダチ。




