ルマンスでの1日 前編(食事シーン無し)
総合9万PV、そして200話達成記念で遅くなりました!
今回は仕事編のみ、中編と後編で食事シーンがあります。
そして感想ありがとうございます、励みになります!
「はい、それでは転移開始になります!3、2、1・・・はい、転移完了です!水の都ルマンスにご到着!お仕事の人もそうでない人も、是非観光して行ってくださいね!」
「ほらほら、タッちゃん!海、凄く綺麗だね!」
「ああ、アーちゃん。凄く綺麗だね・・・最も、君の方が美しいけど。」
「もう、やだ!タッちゃんたら!!」
「あはは。」
ケッ。
人の横でいちゃつきやがって。
こちとら仕事なんだぞ。
しかし・・・ああ、水の都、ルマンス。
ついに到着してしまった。
観光なんてする暇ないぞ、後1時間後には即売会の準備があるんだから。
どうせならもっと、仕事が関係ない時に来たかった。
・・・いいさ。
先輩に大きな借りを作ったと思えば安い・・・筈。
さっきのカップルはオーシャンビューの良いホテルとか取ってるんだろうか。
そこでラブロマンス?
はは、私には関係のない話だな。
あ、そういや私のホテル。
どんなところなんだろう。
先方が用意してくれてるって話は聞いてるが。
まぁ、来ちゃったものはしょうがない。
とりあえず仕事をしなければ。
さて・・・即売会の会場はこっちだったな。
―――――――――――――――――――――――――
「お?あんたは・・・。」
うわ、会場についたけど。
凄いムキムキの人に目を付けられた。
・・・というか、辺り見まわしてもムキムキの人が殆どなんだが。
だがここにいる以上、何らかの関係者だよな。
とりあえず挨拶しておくか。
「どうも、雑貨屋の先輩・・・ああ、ミュウさんの代理で来た魔術師です。今日と明日はよろしくお願いします。」
「おお、あんたか!ミュウさんから話は聞いてる、中々やり手らしいじゃないか!・・・あ、俺は今回のイベントを取り仕切るレオっつうモンだ、よろしくな!」
「分かりました。レオさん、今日と明日頑張りましょう。」
「おいおい、そんなかしこまらなくたっていいぜ!?ハッハッハ!!」
うお、バンバン背中を叩かないで欲しい。
レオさんムキムキなんだから、そんなに叩かれると痛いでしょうが。
「あ、あはは・・・。」
これ、もしかして。
先輩このこと知ってて私に丸投げしたな?
この出張終わったら本当に結婚式があったかどうか確かめねばなるまい。
「とりあえず、即売会についてですが・・・。」
あの後、ある程度の人たちに挨拶周りをした後。
今回の主要メンバーの方々とのミーティングだ。
「おう、それなんだが・・・ミュウの嬢ちゃん、お前に任せれば大丈夫って言ってたんだが。」
「・・・。」
そんなこと一言も聞いてない。
これはもう、私嵌められたな?
先輩、覚えておいてくださいよ。
魔術師はねちっこいんだ。
「えーと・・・今回の即売会の目的。確か地元の特産品や名産品。その価値をもう一度知ってもらうためでしたよね?」
「おう。ここルマンスは水の都。だからこそ観光業に負けず漁業も盛んなんだが・・・。中でも貝殻やシーグラスを使ったアクセサリーの売り上げがもう少し欲しいって話になったんだ。そしたらミュウちゃんがよ、即売会はどうかって話をしてな?じゃあ一回やってみようって訳になったんだ。」
もちろん魚も売れてほしいがな、はっはっは!と豪快に笑うレオさん。
成程、もともとはアクセサリー系の話だったのか。
だが・・・それにしては此処にいる人、全員ムキムキマッチョの厳ついおっさんばかりだぞ。
「でもよ、俺らは漁師。シーグラスは娘がいる家庭が集めてるくらいで、即売会に関しちゃ右も左も分からねぇ。それで今回ミュウちゃんを呼ぼうと思ったんだが・・・用事で来れないと来た。それで魔術師さん、あんたになったって訳だ。」
あ、今の話で分かった。
とりあえず私嵌められたことが確定した。
先輩、覚えておいてくださいね・・・!!
「成程・・・とりあえず、会場は此処でいいんですよね?」
「ああ、告知はしっかりしておいた。明日にはそこそこ人が入ると思うぜ。」
そうか、そこそこ人が来るのか・・・。
良かった。
とりあえず人が来るなら何とかなりそうだ。
「では、早速即売会の肝。ワークショップや展示販売についてですが・・・。」
「ワークショップ?なんだそりゃ。」
おおう・・・。
そうか、歴戦の漁師だもんな。
ワークショップも知らなくて当然か・・・。
これは、説明が凄く長くなりそうだぞ・・・!
―――――――――――――――――――――――――
「・・・なるほどな。実演販売みたいなもんか。」
「ええ。お客様に直接体験してもらう販売方法です。自分だけの作品を作れますから、結構受けはいいですよ。」
「しかしそれだけでいいのかねぇ?」
「ほら、魚でも同じです。店にならんでる魚を料理するより、自分で釣った魚を料理する方が楽しみでしょう?とりあえずやってもらうことが大事なんです。」
あの後、説明を開始して早2時間。
ワークショップや展示販売会。
またその流れなどを説明して今に至る。
「ああ、成程・・・。そりゃ分かりやすいな。」
「ええ・・・ですが、ワークショップ等をやるにしても、重要なことが1つ。」
「何だい?」
「お客様はいわばアクセサリー製作の素人。お手本となる展示品や、時には指導する人が必要なんですよ。」
「それは・・・魔術師さんがやってくれるだろ?」
「ええ、勿論私もやります。ですが私1人じゃ回りきりません。たしか告知は地元の方以外にも、観光客向けにもしてるんですよね?」
「ああ・・・。あ、そうか。そりゃ1人じゃ足りねぇわな。」
そう、だからこそもう何人か指導ができる人。
そして見本を作れる人が欲しいんだが・・・。
「ちなみに今、商品のシーグラスや展示品、販売品などは用意してありますか?」
「おう、あるぜ。そこの箱全部がそうだ。」
箱全部って・・・えぇ。
これ明日の垂れ幕とか机とかの箱だと思っていたんだが。
全部とは、また・・・凄い量だな。
「では、中身を少し拝見させていただきますね。・・・おお。」
・・・驚いた。
数が多いからあまりきれいじゃないシーグラスが多いと思っていたが。
全くそんなことなく、凄く綺麗なシーグラスがたくさん。
中には中途半端な宝石より綺麗な奴もあるぞ・・・!
貝殻も凄く綺麗な物ばかりじゃないか。
「これ、皆さんが?」
「いや、さっきも言ったように娘がいる連中だな。砂浜で遊んだりするときに拾ってくるんだが・・・みんな気合を入れたのか、すげぇ量になっちまった。」
いやいや、確かに凄い量だが。
どれもこれも綺麗なシーグラスと貝殻のみ。
これは一気に勝機が、いや、商機が見えてきた。
「ちなみに、皆さんこの後時間は大丈夫でしょうか?」
「おう、大丈夫だ。今日と明日は誰も漁にでねぇ手はずになってる。」
「でしたら、今から皆さん。一度アクセサリーを作ってみましょう。」
「え、俺らがか?」
「ええ。展示品にもなりますし、手先が器用な方は明日指導員として動いてもらうので。物は試しです、一度やってみましょう。漁の網編むよりは簡単なので安心してください。」
そんなに手先が不器用な人はいないだろう。
漁師さんって網を直したりするって聞くし。
とりあえず指導員を4人・・・いや、この広さと在庫。
5人は欲しい所だな。
「だーかーらー・・・ここは王道の白と赤!この連続だろう!」
「いや、お前さんはなんも分かっちゃいねぇ!海のグラスなんだ、青をつなげた方が良いに決まっとる!!」
これは・・・また。
どうしてこうなったんだろう。
とりあえず全員に作ってもらったのは良いんだが。
どれもこれも凄く綺麗なアクセサリーに仕上がってる。
やはり漁師さん、手先器用なんだな・・・。
この腕ならみんな指導員として活躍できるぞ。
しかも作品について言い争いまでしてる。
もはや熟練のアクセサリー職人だ。
「なぁ、魔術師さん!海と言えば青!この落ち着いた青が印象深いと、お前さんも思うだろう!!」
「いや、赤と白のオーソドックスなアクセサリー!青色なんざ海で見えるんだ、ここは情熱さと潔癖さを表す赤と白が良いに決まってるだろう!?」
「いえ、二人とも少し落ち着いて・・・。」
「「あぁ!?おめえさんどっち選ぶんだい!!」
これは困った・・・。
二つとも、凄く良い出来栄えなんだよな。
どちらかを選ぶのは、もう片方に失礼だぞ。
「では・・・意見を言わせていただくと。観光客の方には青。元々ここに住んでいらっしゃる方々には白と赤が良いと思います。」
「「あぁ・・・?ああ、つまり俺の方が良いってことだな!!」」
あー、ダメだ、もはや話聞いてないな。
「おう、どうだ魔術師。ほれ。」
「あ、レオさん・・・うお、これはまた凄いですね。」
いやはや、ほんと凄い。
大きさが同じようなものをそろえた、7色のブレスレット。
これは絶対に売れるぞ・・・!
「はは、パパっと作ったもんだがな。」
「いえいえ、パパっとでこの配色センス・・・中々できるものじゃありませんよ。というか皆さん、手先が器用なんですね。」
「おう、そりゃ網直したり、舟とか消耗品を自分らで修理するからな。この程度なら漁師の間じゃ誰でもできると思うぜ。」
「これは明日、皆さんに指導員をしてもらう必要がありそうです。」
「はっはっは、そりゃあ退屈しなさそうでいいな。」
これで指導員の問題は解決した・・・が。
まだ圧倒的に、展示品が足りないな。
今でも30品くらいはあるが・・・最低でも後5倍は欲しい。
「ですが、まだまだ完成品の数が足りませんね。」
「そこは何とかするさ・・・。そうだ、魔術師さんのアクセサリーはどうなんだい?」
「あ、私ですか?私はこれですね・・・。」
シーグラスを使用した、3色のネックレス。
しかもグラスとグラスをくっつけて加工したものだ。
自慢じゃないが、漁師さんたちにも負けていない出来だぞ。
「・・・驚いた。シーグラスでこんなことができるのかい。」
「まぁ・・・かなり大雑把ではありますが。」
「いやいや、これは凄いぜ、魔術師さん。・・・俺らも負けてられねぇな。ちょいと貸してくれや。」
「え?ええ、どうぞ。」
何に使用するか分からないが、とりあえずネックレスを渡したが。
どうするんだろうか。
「おう!てめぇら!魔術師さんがシーグラスと貝殻でこんなもん作ったぞ!」
「お?・・・すげぇじゃねぇか。」
「・・・ちっ、俺より上手いな。」
「ほぉ、こりゃあ見事なもんだぁ。・・・どれ、真似してみるかね。」
「明日展示する分にゃぁ、まだまだ数が足りねぇ!俺らはどうせ明日終わるまで職無しなんだ、もっとたくさん良い奴作るぞ!漁師の意地、魔術師さんに見せてやろうぜ!」
「「「おう!!」」」
おお、言い争ってた人達も考えてた人達も、一斉にアクセサリーを作り始めた・・・。
というかレオさん、多分漁師さんたちの元締めなのでは?
しかしこれでもっと作品ができてくれる。
というか、これかなりの自転車操業だよな。
だって明日売るアクセサリーを今作ってるんだぞ?
しかも作り終えたら展示の用意までしないといけないし。
こりゃ、今日は深夜まで残業になりそうだ。
・・・ま、やる気のある漁師さんに囲まれて、私のやる気も出てきたし。
ここはいっちょ、魔術師の手先の器用さを存分に見せつけるとしますかね。
偶にはこういうのも悪くないな、うん。
でも先輩には絶対何かやり返そう、うん。
「皆さん、お疲れさまでした。これで明日の即売会は大丈夫だと思いますよ。」
本当なら深夜までかかると思ったが。
まさかまさかの夕方くらいにすべて終わってしまった。
展示品の用意、飾りつけ、机や椅子などの運び出し、当日の流れを再確認等いろいろやったんだがな。
というか一番時間のかかる展示品の用意。
漁師さんたちも慣れてきたのか、どんどんと作るスピードが速くなって当初用意したかった150個を一瞬で越えてしまった。
しかも中々にセンスが良い。
私も負けじと色々作ってみた。
特に魔術で加工するために私しか作れなかった、シーグラスの指輪は良い出来だぞ。
あと・・・私が持ってきたインテリア類。
それにシーグラスで加工をしたものも並べてみた。
会場が華やかになるし、売れれば私の利益にもなるしいいことづくめだ。
良し、在庫の確認終了。
シーグラスと貝殻の在庫もまだまだあるし、今日はこれで終わりでもいいだろう。
「おうおう、だだっ広かった空間が・・・何やらお洒落な空間に早変わりだな。確かに、こりゃ成功しそうだぜ。」
「ええ、成功すると思います。展示品が多いのでかなり華やかになりましたね。とりあえず今日はこれで解散しましょう。」
「そうだな、んじゃ魔術師さん。宿屋まで案内するぞ。」
「お願いします。」
何はともあれ今日の仕事は終了だ。
あとは宿屋に戻って休むとしよう。
「結構良い宿屋取ってあるからな、期待していいぜ。」
「そうなんですか?ありがとうございます。」
「おう、オーシャンビューってやつか?海の景色が最高だぜ。俺らも漁師だからな、毎日海をみちゃいるが。ここの海は何度見ても飽きやしねぇ。」
「そうなんですか・・・。」
「ああ、俺らに恵みを与えてくれる、偉大な海だ。観光も漁もこの海がねぇとやっていけねぇからな。・・・と、それはいいんだ。ああ、宿屋の周辺は飯屋や市場の近くなんだ。折角来たんだ、この後楽しんでいってくれよ。」
「ええ、そうしますね。」
漁師さんがお勧めする海の景色。
これはまた・・・どんな部屋か楽しみになってきた。
そして同時に、ものすごく。
―――お腹も、空いてきたぞ。
うん、部屋に荷物を置いたら少しゆっくりして。
その後飯を食いに行こう。
やはりここは水の都。
海鮮系を攻めるしかありますまい。
いやぁ、大変だと思ったが明日も何とかなりそうだし、結果オーライだな。
中編に続く。
(午後10時更新予定)




