表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/235

成程、ホイコーロー。

今回は5500字くらいなので1話完結です。

そして食事シーンを色々こう、工夫してみました。

その結果食事シーンが少なめになるというジレンマ。

「いかがです、魔術師さん。」


「ええ、どれもこれも素晴らしい製品ばかりで・・・。」


「何なら全部お買い上げいただいても・・・?」


「あはは、そうしたいんですが、予算が合わなくて。」


さて、本日。

今日は営業・・・ではなく、インテリアや雑貨、家具の仕入れに来ている。

今伺っているのは私が魔術師になったばかりの頃から付き合いのある家具屋さんだ。


しかし私の対応をしてくれているこの爺さん。

私が初めてここにきてから今まで、容姿が全く変わっていない。

この街の7不思議に入るんじゃなかろうか。


ここの家具は非常に高品質ながらデザインも良く、機能性も高いという事でかなり人気。

私の持っているお客さんでもここの家具を欲しがる人が多い。


まぁ、その分値段がかなり高いんだが。

最初は此処の家具を買う気満々のお客さんも値段を聞いたら考え直すくらいには高い。


だが、それでもここの家具はうれるんだ。

特に最近はドレッサーとか、女性向けの物が売れている。


「いやー、しかし・・・これだけ良い物ばかり揃っていると。どれを買おうか悩みますね・・・。」


「どれも自信をもって展示させていただいてる家具ですから。」


流石、どれもこれも良い品ばかりだなぁ。

けど、今日仕入れに来たのは2、3つまでなんだ。

それくらいここの家具は高いんだ・・・。


一応長い付き合いという事で一般の業者よりかなり値段は下げてくれている。

それでも顔なじみの工房の所と比べると軽く5倍以上はするからなぁ。

材料からこだわり、熟練の職人が妥協なく手作りで仕上げた家具だから仕方ないとはいえ・・・。


うーん、悩む。

何にしようかな。


とりあえずドレッサー系を1つは確定だな。

最近の流行り、女性向けの家具。

1つは抑えておきたい。


そしてその次だが・・・椅子や机の無難な選択か。

もしくはインテリア系を2つほど購入するか。


なんなら商品が決まってから仕入れをして売ればいい、そう思う人もいるかもしれないが。

その場合だとここの家具が品切れの場合があるんだよな。

しかもここの家具、妥協を一切しない分納品までかなり時間がかかる。


それに今回仕入れた家具は私が更に魔術で加工する予定だ。

ドレッサーには簡易な加工を、残りは状況を見て。


「迷ってらっしゃいますね、魔術師さん。」


「本当にすいません。長くお時間を取らせてしまって・・・。」


「いえいえ、昔からそうだったじゃないですか、はは。」


「あはは・・・とりあえず、このドレッサーを1つください。残りはもう少し時間を・・・。」


「かしこまりました。でしたら先にドレッサーだけ準備しておきますね。」


ああ、初めてここに来た日が懐かしい。

あの頃はこんな高額な家具を仕入れて、ましてや自分で加工をするってことで顔真っ青だった気がする。

売れなかったらどうしよう、終わりかもしれないって震えながらも購入したっけ。


しかも加工中も緊張しっぱなし。

そりゃ凄く高い家具を自分の手で加工して失敗しました、何てことになったら。

もう・・・想像もしたくない。


というか今もここの家具の加工には細心の注意を払って加工しているからな。


ちなみに私が最初にここで仕入れた家具は加工も無事終了、そして買い取り手もすぐに見つかった。

あの時は本当にほっとしたなぁ。

ちなみにその時のお客さんがこの前伺った質屋さんでもある。


と、それより残りの品をどうしようか。

インテリアで攻めるか・・・家具にするか・・・。

・・・良し、決めた。


家具、それも椅子にしよう。

細かいインテリアとかはこの後顔なじみの工房で仕入れればいいや。


「お決まりになりましたか?」


決まった瞬間声をかけてくる爺さん。


「ええ、あの椅子にします。」


「ありがとうございます。では準備しますね。」


しかし決まった瞬間に声をかけてくるとは。

毎回そうなんだが・・・私、声が表情に出ているんだろうか?


「準備ができるまで少々お待ちください。・・・ああ、お茶でも入れてきましょう。」


「いえいえ、お構いなく。準備できるまで他の家具も見せてもらいます。」


「そうですか。では準備が終わりましたら声を掛けますね。」


「お願いします。」


これだけ素晴らしい家具やインテリアが並んでいると見ているだけで楽しい。

ちょっとしたウインドウショッピングだ。


・・・あ、あの椅子も良いな。

いや本当にいいな、あの椅子。

え、どうしよう。


予算オーバーになるがあれ買ってしまおうか?

自分用にしたいが、いやでも・・・。


―――――――――――――――――――――――――


「・・・では、失礼します。」


ふぅ、今日の仕入れ終わり。

あの後顔なじみの工房を回って、ついでに食器とかも仕入れてきた。

最近緑茶が流行ってるらしいし・・・不思議だね。


ちなみに最初の店、高級家具の工房で最後に見つけたあの椅子は結局買わなかった。

まだ家にある椅子使えるし。

こいつが壊れたら高い椅子に買い替えるとしよう。


それまでは普通の椅子で十分だ。


しかし、今回は仕入れだけだから早く仕事が終わると思ったんだが。

もう昼じゃないか。

いや、いつもの営業よりは早く終わってはいる、か。


とりあえず今日仕入れた商品を家に持って帰って、倉庫にしまっとかないと。

それに加工できるものはしちゃわないとな。


良し、それじゃ早速。


―――あ、やっぱ飯食いに行こう。


何だかひと段落したら腹が減ってきた。

今日朝出るの早かったからなぁ。

あの工房、早くいかないと人でいっぱいになるんだよな。


うん、もう空腹。

家具じゃ腹は膨れない。


そうと決まれば行き先は1つ。

いざ、飲食街へ・・・!




到着、飲食街。

今日は何を食おうかね。


結局いつものように決まってない昼食。

ただ・・・そうだな。

高い家具かったし、今回は安くて量があって美味いものが良い。


となると焼肉屋レストランは無し。

食堂やラーメン、ウドン屋を探すべきか。


あーでも、どっちかっていうとライス食いたい気分になってきた。

いや、ラーメンも悪くない気分・・・。


ダメだ、空腹で考えがまとまらなくなってきた。

もう見つけた良さそうな店へ突撃。

これしかないだろう。



レストラン。

第一飯屋候補、発見!

しかし並んでる、パス。

はい次だ次!


焼肉。

・・・この前行ったばかりだし。

いや、腹が減ってるし今日もここで・・・いや・・・。

パス、パスだパス。


次へ行こう!


食堂。

お、並んでもないししっかり営業中。

しかも街の食堂ときた。

これはもう・・・ここしかないでしょ・・・?


店の外からちらっと中を伺ってみると、うん。

席も空いてるし普通に営業してる。

暖簾も出てるし、間違いなしだ。


「アレン食堂」、ここに決定だ。




「いらっしゃいませ!御一人様ですか?」


おや、お手伝いだろうか。

小学生の給仕さんだ。

勿論しっかり可愛い。


しかし最近飲食街、子供の給仕も増えてきた。

家のお手伝い、偉いね。


「ええ。大丈夫ですか?」


「あ、えっと・・・大丈夫だと思います!あ、大丈夫です!」


うん、大丈夫なのは分かったが。

席は・・・?


「ええっと、でしたら席はどこに座れば・・・。」


そうするとハッとしたような顔になる給仕さん。


「お好きなお席にどうぞ!」


「わかりました。」


そう、そうだ。

その一言が聞きたかった。


というわけで席は・・・あそこだ。

壁側のカウンター席。

一人客はなるべく端席、これなんの意味もない私のポリシー。


「どうぞ、お水とメニューです!」


「ありがとうございます。」


こう、いかにも街の食堂って感じの店内。

外側から見ても食堂、中から見ても食堂。

王道中の王道を行く食堂だ。


さて、そんな食堂のメニューはいかがなものだろうか。

どれどれ・・・。


・ロースカツ定食


・レバニラ定食


おお、空腹の私にいきなりのダブルパンチ。

レバニラもロースカツも大好物だぞ。


どれ、他には・・・。


・ホイコーロー定食


・日替わり定食


・炒飯


・ラーメン


そうか、日替わりもあるのか。

そうだなぁ・・・今日は定食にしよう。


ラーメンや炒飯も気にはなるが、今日の私は白いライスとおかずで行きたい。


となればこの定食メニューから何を選ぶかだが・・・。

ああ、腹が減った。

ここはもう、びしっと決めよう。


ど・れ・に・し・よ・う・か・な・・・。




「お待たせいたしました!ホイコーロー定食です!」


来た、待ってましたのホイコーロー。

ホイコーローがどういう意味か分からんが、とにかく待ってた。


・ホイコーロー

ホイコーロー、つまり豚肉とキャベッジとピーマン・・・あと長ネギか。そいつらの炒め物。こう、ホイコーロー=豚肉ってイメージはあるんだが、他の野菜は想像つかなかったな。


・ライス

ホイコーローの鮮やかな茶色、その横に純白なライス。これは映える、腹減り人からのいいね間違いなしだ。


・味噌汁

最近あちこちで見かける味噌汁。白い味噌に具材は・・・ホウレンソウとアブラアゲ。そう、この優しい香りがたまらない。


では、いただきます。



さぁ、待ってましたのホイコーロー、こいつを食わなきゃ始まらない!

鮮やかな茶色いタレを纏った豚肉と野菜たち。

これはもう・・・間違いないでしょ。


さ、箸を手に取って。

肉と野菜をいただこう!


―――うん、うん!良い、美味いぞこいつ!ガツンと濃い味、これは間違いなくライスのおかず!


これはいけない。

すかさずもう片方のライスで追いかけて・・・。


―――あー、美味い。パンチの効いたホイコーローを、ライスでガツガツ食べる幸せ!


薄すぎず厚すぎない豚肉。

タレを纏って非常に攻撃的な味と肉の旨味、ライスに抜群。


そして今肉と一緒に食べたキャベッジ&ピーマン。

くたくたじゃなくてむしろシャキシャキよりなんだが・・・それが良い。

このくらいシャキシャキしてる方が濃い味に凄く合う。


たまらん、腹が減った私に差し出されたこの定食。

これはもう・・・がっついて食べてしまうというもの。


再びホイコーローを箸でつまみ、口へ。

その後すかさず追いかけライス!


―――おっと、肉がなくて野菜&ライスだが。それでも美味い、ホイコーローライス!


成程、ホイコーロー。

てっきり豚肉が入って景色を見て、私の眼は曇っていたらしい。

これはメインが豚肉なのではない。


豚肉も野菜も、全てがメインなのだ・・・!


でもこういう私を裏切る感じなら、いつでもオッケー。

美味い野菜に美味い肉、とても充実したホイコーロー。


そんなことを思いながらホイコーロー、ライス、ホイコーロー、ライス。

余程今日の私は腹が減っていたらしい。

延々と美味いおかずと白いライス、このループが止まらない。



だが、一気に味わいきってしまうのももったいない。

ここはいったん味噌汁へ避難だ。


でも・・・ホウレンソウが入ってる味噌汁って珍しいよな。

なんだかんだで私結構いろんな店の味噌汁を飲んでいるが、食べたことない様な気がする。


どれ、まずはスープから。


―――くぅー、優しい。優しく私の腹を満たしてくれる。腹減り人のポーションは味噌汁だった。


この深い味噌の味。

それでいて優しくてスッと入って・・・こんな優しい味しちゃ、私この味噌汁のファンになっちゃうよ。


ほっとする温かさからのほっとするこの味。

優しさの波状攻撃。

これにはたまらずもう一口。


―――堪らん、この優しい美味しさ。大人の魅力というんだろうか、妖艶ささえ感じるぞ。


おっと、スープも良いが。

味噌汁はその具材も魅力の1つ。

スープだけで分かった気になってる私、まだまだ半人前だな。


どれ、ホウレンソウをいただいてみるか。


―――うわ、苦くなくて柔らかい。これ本当に野菜?ホイコーローの野菜とは全く違う、こう、食べる人を立たせてくれる様な味。


味噌汁の味にばっちり、もはやおかずにさえなりそうなホウレンソウ。

柔らかくて臭みがない、いくらでも食えそうな感じがする・・・。


これは堪らん、アブラアゲも行くしかない。


―――おお、味噌汁をしっかり吸ったアブラアゲよ。君はどうしてそんなに美味しいんだい?


ホウレンソウに続いてアブラアゲまでさえも。

しっかり美味しい、つまりこの味噌汁は最強、QED・・・。


最強で優しいって・・・どこかの物語の主人公みたいだな。



いやでも、この物語、ひいては今の食卓の主人公。

それはホイコーローのはず。

勇者ホイコーローが聖女ライスを率いてる、間違いなくそのはずなんだ。


そう思いまた、ホイコーローを一口。


―――ほら、この力強さ。華奢な勇者じゃない、野太い腕を持った歴戦の勇者が、口の中で大暴れ。


そしてそれをライスで追えば。


―――大暴れした勇者が聖女に鎮められていく・・・。その余波が、美味しさとなって私へ襲い掛かるんだ。


ほら、この物語はホイコーローが勇者だった。

・・・勇者を一瞬で鎮める聖女が裏ボスの様な気もしないでもないが。


いや、とにかくメインはホイコーロー。

そしてその立場を主張するこの味。


味噌汁を飲んだことでまたこのパンチのある、強烈な味を楽しむことができた。

そう考えると味噌汁は賢者だろうか・・・?


何といってもホイコーロー、肉も美味いが野菜も美味い。

そしてタレも美味いんだ。


それらが全部ライスに合うから、もう、もう・・・!


「すいません。」


「はい!」


「ライスお代わりお願いします。」


「かしこまりましたっ!」


ライス1杯じゃ当然、物足りないぞ・・・!




「ありがとうございました!」


あー、美味かった。

ライスを3杯胃袋に沈めて、やっと私の食欲が満たされた。


強烈な美味さのホイコーロー、それを優しく洗い流す味噌汁。

あんなのもう、延々とライスを食い続けるしかないじゃないか。


そんなことを考えながら、煙草へ火をつける私。

・・・ふぅ。

この煙が飯を食った後の私を落ち着けてくれる。


さて、家に帰ったら早速加工の用意をしないと。

ドレッサー、加工が終わればすぐ売れるぞ。


そうすればまたでかい取引になって私の懐も温まる。


良し、とっとと帰ろう。


願わくば、次も美味い店に会えるように。

主人公(男)・魔術師。ドレッサーは無事加工が成功、売り出したところすぐに売れてご満悦。


「アレン食堂」の給仕(女性)・現実で言う小学4年生。かわいい。この店の店主の孫で、偶々手伝いに来ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ