魔王祭最終日、ピザとパスタのセット
設定ふわふわ過ぎて空に飛んでいきそう。
「・・・こんなもんでどうでしょうか。一度動かしてみてください。」
「あー・・・良し、ついた!ありがとうね、魔術師さん。」
「いえいえ、このくらいでよければ。」
魔王祭最終日。
今日は朝すぐの依頼が終わり、その次の依頼がまさかのドタキャン。
まぁ依頼主がケガをしたということだから、しょうがないが。
そこでまた魔王祭をふらついていたら、コンロが動かなくなった屋台が。
まぁそのまま放置しておくのも忍びない、そんなわけで手助け中だ。
「ただこれ、相当長く使ってませんか?回路部分が少しずれてしまっているので・・・。」
「そうねぇ・・・もう10年くらいかしら。」
「うーん。もし今後もこのコンロ使っていくなら一度修理に出した方が良いでしょうね。しばらくは大丈夫かもしれませんが。次またいつ使えなくなるか分かりませんし。」
「そうなの・・・?ちなみに修理ってなるとどれくらいかかるのかしら?」
「本来なら軽いメンテでいいんですが。10年メンテなしとなると一度分解しなきゃいけないでしょうね。すぐできるところなら・・・大体3日くらいで終わると思いますよ。」
1度修理するならこれは分解が必要だろう。
回路だけじゃなく、中の魔石の魔道効率、部品がガタついていないか等も調べる必要がある。
「お金もかかりそう?」
「それは・・・中の状態を見ないと何とも。ただ今判明している回路のずれ程度、これならそんなにお金はかからないでしょう。ただ回路がずれて壊れてしまうと高額になります。そこも踏まえて早めに修理に出した方が良いですね。」
「そう・・・。一度考えてみるわね。」
「ええ、是非そうしてください。あああと、串焼き1本注文でお願いします。」
「あらあらいいわ。修理してくれたんだもの。サービスするわよ。」
「そうですか?ではお願いします。」
ちょうど小腹が減ったところだ。
1本串焼きをもらえるのなら甘えておこう。
・・・うん、美味い。
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さて、本日最後の依頼が終わった。
もうすっかり夕方、夕飯どきだ。
いかん、そんなこと考えていたら急激に腹が減ってきた。
なんだかんだで今日は屋台の串焼き1本しかまともに食べていない。
ああ、ほんとに腹が、背とくっつきそうだ。
これは、早急に、店を探さないと。
何を食べたいか・・・いや、そんなことを考える暇もないな。
飲食街に向かってただただ歩こう。
途中で店を見つけたら・・・乗り込んでしまえ。
もはやなりふり構わない。
とかいってたら、すぐに店を見つけてしまった。
しかしなんだか、ここ、こじんまりとしてて、それでいてお洒落・・・。
おひとりさまでも大丈夫なんだろうか・・・?
・・・いやそんなことを言っている場合じゃない、私はお腹が減っている。
ここだ、ここにしよう、ここしかないんだ。
「ピザ・パスタの店 レオーナ」いざ、入店・・・!
「いらっしゃいませ。奥へどうぞ。」
お、中々こじんまりとしてるが、居心地は良さそう。
それでいて装飾品がお洒落だ。
それに・・・ああ、いい匂いがする。
メニュー、おお、いろいろあるな。
ピザだけで何種類も。
しかも甘いピザもあるのか。
パスタは・・・なるほど、ペペロンチーノとかカルボナーラ、定番どころをしっかり抑えてる。
うーん。
今回はお腹が減ってるんだ。
ピザとパスタ、1つずつ頼んでしまおう。
「すいません、注文をお願いします。」
「お待たせいたしました。お先にピザ・カプリチョーザです。」
おお、来た来た。
・カプリチョーザ
何でも本日の気まぐれピザとの事。このふんわりとしてる外側、まさにピザって感じ。具材もチーズ、サラミ、キノコ、のド定番。と思いきやトウガラシの輪切りが入ってる。でもこれもいい。
うん、アツアツだ。
手で持った時に伝わるこの熱。
まさに焼きたてのピザだと主張している。
さて、1切れ・・・おっとチーズ君、落ちないでくれ。
気を取り直して、1口。
―――アツアツうまうま。美味い。
具材、生地、ソース、全てが合わさってこそのこのピザ、それを実感する。
この生地のもちっとした感じもまたたまらん。
しかしトウガラシ、君が入ることでこうなるのか。
この意外なおいしさ、とてつもなくお勧めだな。
ちょっとしたピリピリ感、好き。
しかも食べるたび、場所によって触感が変わる。
生地のもちっとした感じは一定なのに、具材の厚さや種類、それぞれが新しい感触、そして味を生み出している。
トウガラシのあるところ、ないところ、それぞれ辛さが変わるがどっちも美味い。
というか食べるほどにピザの原点、このピザ生地のおいしさがすごく際立ってくる。
甘い感じ?食べ応えのある感じ、凄い。
大きさ、食べ応え、そしてその美味さ。
なるほど、店にピザと書くだけの味がある。
納得の美味さ、という奴だな。
お、あの皿、こっちに来る奴じゃないか?
ピザが残り一切れになったこのタイミング、でも胃はまだまだいける。
ナイスタイミング。
「お待たせいたしました。こちらレオーナパスタになります。」
おお、来た来た。
・レオーナパスタ
これも本日の気まぐれ。その時の在庫によって変わるとの事。今回のこのパスタはペペロンチーノに見える。具材はベーコン、ホウレンソウ、マッシュルーム、そして・・・ハマグリ、の様な小さい貝。楽しみだ。
さてさて、早速いただきます。
まずはこの貝と一緒に食べるべきだろう。
何気に貝の殻をすべて取ってくれてるこの気遣い、うれしいです。
―――美味い。殻にこもらず主張する貝の味、そしてちょっとピリッとした味付けのパスタ、異常なくらい合う。
まるでここにいるぞ!と叫ばんばかりの貝の味。
それに呼応し、手助けをしているこのパスタ。
手助けと言っても貝に味が負けている訳でなく、むしろ一緒に高みへ行ってる感じ。
うーん、塩加減、絶妙。
ペペロンチーノの様だがペペロンチーノでない、でも少しペペロンチーノの様な、そんな感じの味。
スパイスか、はたまた調味料か、何かがこのパスタには、ある。
いや、調味料とかスパイスとか、今は関係ない。
ただこれを食い、その味を噛み締め、胃袋で幸福を感じるのみ。
ベーコン、ホウレンソウ、マッシュルームの定番トリオもいい仕事してる。
小さいながらごろっとしてるベーコン、しっかり味のついているホウレンソウとマッシュルーム。
このトリオがこのパスタをしっかりと支えている。
パスタの歯ごたえもいい感じ。
しっかり歯に感触が残るというか、そんな感じの麺、大好きです。
ピザ、そしてパスタ。
様々な具材とソース、そして主食が奏でる音色。
まさに無限のハーモニーと言ってもいい、そんな可能性をこの料理から感じる。
まるで・・・そう、魔道具だ。
1つ1つのパーツ、部品、それぞれが意味を持って初めて1つの何かができる。
これはピザ、そしてパスタでも同じことだったのか。
私は今、料理と魔道具の新しい関係性を見つけてしまった。
ピザのジューシー感。
パスタのハーモニー。
この店、また来たい、そう思えるだけの実力。
店の看板に、偽りなし。
―――ごちそうさまでした。
「ありがとうございました。」
ふぅ、美味かった。
ピザもパスタも、専門の店で食ったことがなかった。
今まではギルドとかで適当に食べることはあったが。
しかし流石専門店、その味、全然違う。
あの味、そして今思ってるこの感じ、きっとまたこの店に来たくなる、そんな感じだ。
しかも日替わりやお勧めのメニューがあるのもうれしい。
パスタやピザを普段食べていない自分にとっては何のピザが、パスタが美味いかなんてわからないからな。
ああでも・・・次来たら甘いピザ、は冒険しすぎだろうか?
まぁいい、いずれ来たらその時考えればいいんだ。
今日は舌も腹も満足、それでいい。
さ、家に帰りましょうかね。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。大体の魔道具は修理可能。万能型魔術師。
「ピザ・パスタの店レオーナ」・レオーナは店主の奥さんの名前。パスタもピザも店主が作ってる。お洒落な内装は奥さんの趣味。