肉まんピザまんカレーまん。 前編
後編は9日0時投稿予定です。
「どうも、こんにちは。」
「おや、坊や。こんな所に来るとは珍しいねぇ。なんだい、免許の返納にでも来たのかい。」
坊や、か。
グランマから見たらまだまだ私も小童なんだろうか。
「いやいやグランマ、冗談キツイよ。ほら、私が魔術師の免許取った時の担当。あの爺さんに挨拶に来たのさ。」
「ありゃ、まあ珍しい。大体の奴は免許取ったら更新以外に此処に寄らないんだがねぇ。借金でもしたのかい。」
「何でそうなるんだ・・・。挨拶だよ挨拶。最近此処来てなかったからね。手土産に酒もあるんだ。」
「おやおや、殊勝な事で。ちょっと待ってな。今呼んでくるよ。」
そう言って奥に引っ込むグランマ。
やれやれ、これだからここは来づらいんだ。
今日来たのは魔術師のギルド、それも免許の更新や取得に携わってるギルドだ。
魔術師のギルドにはいくつかあるが、免許を取るにはここに来るしか無い。
この都市唯一の免許取得、或いは更新のギルド。
この都市の魔術師は免許を取る際必ず此処に来るんだが・・・グランマが受付してるの、相変わらずだな。
あの婆さん私が免許取った時から現役なんだが、何故だろう。
私が免許取った時と全く容姿が変わってないぞ。
久しぶりに来たから少しは変わってるかと思ったんだが、全然そんな事ない。
多分この都市の七不思議に入るんじゃ無いだろうか。
「待たせたね、坊や。そこの二番で待ってな。今来るとさ。」
「分かったよ、グランマ。じゃあ待ってるね。」
「ケッケッケ・・・。」
相変わらず不気味な笑い方するなぁ。
因みにグランマ、本名は知らない。
確か私が此処で免許取る時くらそう呼ばれてた筈。
だから私もそれに習ってグランマと呼んでる。
噂によればここのギルドマスターとかなんとか・・・。
ま、仮にギルドマスターだとしてもグランマと呼ぶんだろうが。
取り敢えず二番の応接間で待つとしますか。
爺さん、元気かなぁ・・・。
「おうおう、待たせたな坊主。」
「どうも、久しぶりです爺さん。その節はお世話になりました。」
「何だぁ、かしこまって。気色悪い。昔の生意気な頃が懐かしいぜ。」
「いやいや、こっちも一端の魔術師ですから。しっかり敬語は使わせてもらいますよ。」
なんだ、爺さん。
昔の様に凄く元気だ。
いや、寧ろ昔より元気なんじゃないか?
昔も筋肉質だったが・・・今はより筋肉質じゃないか。
こう、引き締まった感じがする。
「おいおい、どうしたんだ坊主。免許取った時にゃああんなに人殺しそうな目してたってのに。人良さそうな面してんな?」
「色々あったんですよ、色々・・・。」
本当、色々とな。
祭りと言い、フェアリー喫茶と言い。
「あ、これどうぞ。ニホンシュです。爺さん確か酒飲みでしたよね?」
「お、こりゃあ良い物じゃねぇか。・・・何だ、あそこまで生意気だった坊主がこんな良い物持ってくるたあ。明日は槍でも降んのか?」
「いやいや、いつの話してるんですか。」
全く、相変わらずだな。
私を担当した時からのこの減らず口というか、貫禄のある感じというか・・・。
何も変わっていない。
「でも、安心しましたよ。まだまだお元気そうで。」
「そりゃおめぇ。まだまだ若いもんには負けられんからなぁ。」
「いやいや、若いもんって・・・。もうずいぶん御歳でしょう?」
見た目は全くそう見えないが。
「おっと、まさか体の心配されるたぁ心外だ。若々しく見せるためにも、明日から免許取りに来る奴にはもっと厳しくしねぇとな・・・。」
あっ。
すまない、まだ見ぬ魔術師たち。
もしかしたら君たちが免許を取る日が遠のいたかもしれない。
「いやいや、手加減してあげてください。」
「はは、ま、とりあえずお前さんも元気そうで何よりだよ。どうだ、最近は?何やら祭りたらなんたら、色々手広くやってるんだって?」
「まぁ、そうですね。一部魔術師関係ない事もやってますが。」
「そうかいそうかい・・・お前さんなら心配はないと思っちゃいたがな。どうだ、今からでも魔術師のギルド、どっか入らないか?口利きはしてやるぜ。」
「あはは・・・でも、私には個人の営業が似合ってますので。それに個人じゃないとできないことも色々ありますから。」
「何でぇ、紹介するギルド入りゃ副マスターには一発で昇格だが・・・。いや、場所によっちゃギルマス取れるぜ。」
「いえいえ、私には今の営業スタイルが似合ってます。」
「そうかいそうかい。・・・あ、今日この後予定あんのかい。」
「この後ですか?特に予定はありませんが・・・。」
今日は此処によってからそのまま帰る予定だし。
営業も何も入ってないからな。
「そうか、じゃあコイツ飲んじまおう。ちょっとまってな、グラス取ってくる。」
「え、今ここでですか?爺さんこの後予定は・・・。」
「ねぇよ、んなもん。魔術師の免許取る奴も最近は少なくなってきたからな。折角なんだ、飲もうぜ。」
「は、はぁ。」
相変わらず・・・破天荒というか。
元気な爺さんだ。
ま、元気な様子見れたしこのまま酒もいいか。
この後の予定特にないし、偶にはギルドで酒飲んでも罰は当たらんだろう。
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うぅ・・・ヒック。
昼前から飲みすぎてしまった。
あの爺さん、酒にも強いとか化け物か・・・?
しかも飲めば飲むほどすぐ注いでくるし。
私も目上の人から注がれた酒を飲まないわけにはいかない。
注がれる度に私も注いでいたのに・・・顔赤くすらならなかったぞ、爺さん。
しかもついでに持ってきた肴の豆。
あの豆がまた美味いんだ。
パリパリしてるのに程よい塩味で、酒をどんどん飲ませてくる。
あのコンボは卑怯すぎる。
あ”ー・・・ふらつく。
これはもう、とりあえず。
―――軽く何か、食って帰ろう。
丁度すきっ腹になりかけのときに酒を飲んだのもいけなかった。
こうなったら何か胃に入れて帰らないとな。
このまま帰ったら間違いなく寝てしまう。
そして夜目が覚めた時、空腹にもだえるのが目に見えてるからな。
ただ・・・軽く済ませようかな。
思い切り食う気分でもないし。
あ、でも、ここまで飲んだなら・・・ついでに酒飲んでも良いかも。
とりあえず飲食街へ向かうかぁ。
あ、ちなみに残りの酒は目の前で爺さんが一気しました。
危険なので真似しないようにしましょう。
・・・残り、3分の1はあったんだが。
あれを一気出来るあたり、まだまだあの爺さんは現役だ。
到着、飲食街。
少し慣れたのか、さっきよりふらつきは少ない。
でも頭は少し重いままだ。
ここは1つ、するっと、でもがっしり食えるものが良いが。
いつものことながら肝心の内容が決まってないんだ。
まぁ、酒に酔った頭で答えが出るはずもないし。
とりあえずうろついて店を探すとしようかな。
軽く、でもがっしりと食える物を求めて思う存分彷徨おう・・・。
食堂。
がっつり系は間違いなくここなんだが。
今の気分とは少し違う気がする。
焼肉。
あー、良い香り。
でも酔ってる今思い切り楽しめそうにはないな。
今回はパス。
居酒屋。
すでに出来上がってるからなぁ。
これ以上出来上がっちゃやばい気がする。
うーん、どうしよう。
レストランで一品食べて出るのもなんか違うし。
こう、しっかり食べたいけど手早くするっと食べたい、矛盾するこの気持ち。
今私に酒が入ってるから食欲が我儘なのかもしれない。
どうしようか、もう持ち帰りにしようか?
でも私の食欲は今ここで何か食べたいと叫んでるし。
うーむ・・・おや。
屋台がある。
なに、「肉まん 凶吉」・・・凶か吉かどっちなんだ。
だが、肉まんね。
良いんじゃないか、肉まん。
今の私にするっと入りそう。
でも肉という文字もあって、食べ応えがありそうだ。
前肉まん食べた時も確か屋台だったっけ。
あれも美味しかったなぁ・・・いかん。
もう完全に肉まんを食う気でいる私。
うん、気分はすっかり肉まん腹。
ここは1つ、肉まんを腹に入れて帰ろうじゃないか。
幸い座るスペースもあるし、食って帰るとしよう。
酔いどれに肉まん、いざ入店だ。
後編も是非読んでください!