じゃ、早速豚汁をいただこうか。 後編
試験的に前後編へ分けてみました。
「お待たせいたしました!豚汁定食です!ライスお代わり無料なので、お気軽にお声かけください!」
「ありがとうございます。」
一生懸命頑張っている姿に、ついついお礼を言いたくなる。
さて、どれどれ・・・えっ。
・豚汁
ラーメン容器の様な大きさできた豚汁。これは・・・確かに豚汁定食というのも頷ける。この大容量豚汁をおかずにライスを食う、何だかワクワクしてきた。
・ライス
豚汁の容器より1回り、いや2回りは小さい容器に入ったライス。これは、1杯じゃ絶対に足りないな。
・ツケモノ
ダイコンとキュウリの2種類。箸休めにも、ライスのお供にもピッタリな名脇役。
この豚汁の大きさ、凄いぞ。
これは食い応えがありそうだ・・・!
では、いただきます。
じゃ、早速豚汁をいただこうか。
この大きな器に・・・ほら。
具がいっぱい入ってる。
豚肉、キャロット、ネギ、ゴボウ、こんにゃく、そしてダイコン。
より取り見取り、大量大漁。
というわけで具材を・・・いや。
その前にまずはスープを飲んでみるか。
器ごと持って、は無理だから。
上品にスプーンで飲んでみるか。
どれどれ。
―――おお、おお!ベーネ、デリシャス、素晴らしい。美味い豚汁、汁が美味い!
この華やかでどこか優しい味噌の味。
飲めば飲むほど元気になる・・・まるで魔法のスープだ。
うん、スープがこの味なら十分ライスのおかずになるな。
豚汁定食、侮りがたし。
どれ、とりあえずもうひと匙。
―――あー・・・良い。美味しい豚汁、ほっとする。
そう、何というか・・・故郷の味。
スープを飲む度脳裏に懐かしい記憶が思い浮かぶ。
何だろう、花畑でキャッキャうふふと遊びながら、羊とともに暮らす牧場的な。
・・・私にそういった過去は一切ないんだが、不思議。
豚の脂も良い感じに溶け込んでて、奥深さも感じるな。
では、ここいらで一つ。
豚汁、その豚を冠するこの肉。
食べてみようじゃないか。
豚汁のスープ、つまり汁を味わったんだ。
なら次は豚を行かないと。
さ、肉を1切れ・・・おや。
1切れなんだが、大きい1切れ。
おかずにもなるこの大きさ、私的に高ポイント。
どれどれ。
―――豚肉、しっかり引き締まってて、でもカスカスじゃなくて。こう、肉の美味しい引き締まり方って感じ。口の中で豚が踊ってるくらいには美味しいぞ、この肉。
うーん、美味い。
美味い汁を纏った美味い肉、こんなのもう最強じゃないか。
最強にして最高なこのコンビ。
豚汁を開発した人、エリクサー作った人よりも偉大かもしれない。
少なくともエリクサーを作れる私よりは偉大だ。
こんな肉、食べちゃあもう。
毎度のごとく、おかずの相棒。
ライス君の出番という訳ですよ。
豚汁から一本釣りした肉、こいつを口に含みまして。
そのまますかさずライスで追いかける、これが定食、ライスの存在意義!
―――あー、美味い。いいな、いいね、この感じ。何て言うか、こう・・・グッと来る感動と美味しさがここにある。
派手でもなく、上品とか、気品がある感じでもない。
豚汁の豚肉、そしてライスというむしろ地味な構成。
なのに・・・どうしてここまで、豚汁とライスが美味しいんだろう。
腹が減ってるから?
まぁ、それもあるだろう。
でもやっぱり、この豚汁の味とホカホカのライス。
このコンビが最強に最高だからこそ、こんなに美味しいんだ。
豚汁の汁と豚、ただでさえ最強な組み合わせに白い宝石たるライスが組んだんだ、そりゃ美味いに決まってる。
おっと、そういや忘れて・・・無いぞ。
うん、野菜達の事を忘れてるなんて、そんな訳はない。
どれ、このゴボウとか美味しそうじゃないか。
あ、キャロットも美味しそうだな。
・・・いや、ここはまずゴボウを食うとしよう。
細長いこいつを、とりあえずパクっと。
―――コリ、いやゴリ、ん、シャキシャキ、か。でもこの素朴な味が、また豚汁と凄く相性がいい。
ゴボウ、美味しいじゃないか。
まともに食うのは久しぶりの様な気がするが。
まさかここまで豚汁と相性がいいなんて思わなかった。
うん・・・うん。
ついついもう1口行っちゃうけど。
これ、さてはライスにも合うな?
試してみるか。
―――美味いスープを纏った素朴なゴボウ、これまたライスに合うじゃない。豚汁の具材としても、ライスのおかずとしても活躍できるバイプレーヤー、ゴボウ。
美味しい、行けるぞこれ。
肉に負けてない、いやむしろ純血のエルフとかはこっちの方が好きそう。
確か純血のエルフ、肉も食えるけど野菜の方が好きとか言ってたし。
この前飲み屋で仲良くなった純血のエルフが言ってたんだ、間違いない。
しかしあのエルフ、パカパカとニホンシュ飲んでたな。
これはコメでできてるから美味い!とか言いながら軽く一升瓶あけてたぞ。
美味いからといって一升瓶空けるのはまた違うと思います。
まぁ、私もそれに付き合ったんだが。
調子に乗って乾杯しまくったな。
そして翌日無事二日酔いでした。
・・・いかんいかん。
今私は豚汁とライスを食べているんだ。
こいつらに集中しないと、豚汁とライスに失礼というもの。
ここは一旦ツケモノへ避難してみるか。
まずはこのダイコンのツケモノ。
白い見た目のダイコンと白いライス。
驚きの白さのコンビ、試してみよう。
―――サク、ポリ、はぐっ・・・あ、美味しい。ツケモノとライス、この組み合わせも最強。
今私が最強と認めた。
異論は認める・・・けど認めたくない。
ポリポリとしたダイコン、そしてそのしょっぱい味をライスがしっかり受け止めてる。
結構濃いめの味付けだけど、こういうツケモノも美味しいじゃないか。
多分今まで食べたツケモノの中でも、一番濃い味。
でもそれが良い。
これは箸休めというか・・・ライスと一緒に食うために存在してるな。
となればキュウリはいかがなものか。
驚きの白さのダイコン、ならばこちらは鮮やかな緑のキュウリ。
これもライスと合わせて食べずにはいられない。
さ、食べよう。
―――ポリポリ、ポリポリ、美味しいキュウリのツケモノ。ダイコンと同じく濃いめだけどまた違った美味しさがある。
そして一緒に食べるライスの美味い事よ。
うーん、堪らん。
・・・あ、ライスが無くなりかけてる。
ま、焦ることは無いか。
ここはライスのお代わり自由なんだし。
それに豚汁もまだまだ大容量。
ライスの2杯目、いや3杯目にも真正面から対抗できる。
どれ、とりあえず豚汁のキャロットをば。
―――あ、柔らかくて甘い。豚汁のスープに甘いキャロットが良く合ってるじゃないの。
肉だけじゃなく野菜もしっかり美味しい豚汁。
仄かなキャロットの甘みがまた、豚汁によく合うんだ・・・。
そしてこんにゃく。
あ、豚汁だと細切りなんだ。
とりあえず箸で取って、つるっと。
―――ほぉ、これは不思議な味と食感じゃないか。豚汁の味が淡白なこんにゃくにしっかり合ってる。
これはこれで、不思議な感じで凄く美味しい。
こんにゃくっておでんだけじゃなくて豚汁でも美味いのか。
いや、恐らく煮込み料理全般に合うんだろうな。
おっと、豚汁食うのも良いが。
いい加減ライスのお代わりを頼んどかないとな。
「すいません、ライスお代わりお願いしますね。」
「はい!ありがとうございます!」
美味い飯に相変わらず天真爛漫なこの笑顔。
この店当たりも当たり、大当たり。
可愛い給仕に美味い飯、これは何度でも来たくなる食堂だ。
「ありがとうございましたっ!またお越しください!」
「ごちそうさまでした。」
満腹満腹大満足。
あの豚汁、凄かったなぁ。
ライス3杯を真正面から受け止める大容量。
具も盛りだくさんだったし。
出てくるスピードも速かったしな。
美味い、早い、そして安い。
がっつり食ってやる気も出てきた。
とりあえず、煙草を一本吸いまして、と。
ふぅ。
うん、葉巻も良かったがやはり私はこの煙草が一番だな。
この程よい感じが好きなんだ。
あー、でも葉巻。
特別な時に吸うと、きっとこう、気持ち良さそう。
どうしよう、1本買っておこうかな。
・・・いや、辞めておこう。
葉巻はもっと私がビッグになってからだ。
さ、帰るか。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。後日、ひそかに葉巻を購入している姿が目撃された。
「食事処 アンザ」の給仕(女の子)・家のお手伝いを頑張る店主自慢の1人娘。お手伝いで貯めたお小遣いを父と母のプレゼントへあてる、天使の様な子。かわいい。