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良し、チンジャオロースへ行ってみよう。

主人公、実はかなり優秀です。

「あー、俺単位落としたかも・・・。」


「私はレポートが・・・。」


そんな声が聞こえるかと思えば。


「テストどうだった?」


「楽勝だった!ノート貸してくれてありがとね!」


「いいっていいって!・・・その代わり、この後。」


「うん、スイーツ食べに行こう!いくつか奢るよ!」


そんな声も聞こえてくる。


用事があって魔道学院に来たんだが・・・今日はどうもテスト明けだったらしい。

生徒たちの一喜一憂が渦を巻いている様だ。


しかし、テストか。

懐かしいな。


魔道学院では主にテストかレポート、これで成績の判定を行う。

まぁ、優しい先生の場合は全部の授業に出席していればOK等もある。

他にも授業毎に感想を書かせて、その枚数が10枚以上なら合格とか。


私が学生の頃は、いろんな授業受けたっけ。

特に楽な授業を色々と選んでいたが・・・難しい授業も受けてたな、そういえば。


ただそこが魔道学院の憎たらしい部分というか、何というか。

楽な授業だけの単位だけじゃ進級、卒業ができない様に仕組まれている。


いくつかは凄く難しい授業を取らなきゃいけないんだよな。

それにそういった授業の場合、成績は最後のテストのみで決まる。

ただ殆どの場合、最後のテストでノートを持ち込めるんだ。


だから授業中、どれだけノートを分かりやすく書けるか。

これが重要だったりする。


中にはノート何て持ち込まず一発勝負、見事にテストに勝利する奴もいるが・・・そんなのは稀。


ま、私はその稀な人なんだが。

フリーの魔術師だが、私結構頭いいんだぞ。


それにそもそも魔術師になるには難しい試験や実技をこなす必要があるからな。

ポーションを作ったり、戦闘力を見るために個人で魔物を討伐したり。

頭が良いだけじゃなく、腕っぷしも必要になってくる。


だから結構な人が魔術師の試験を受けるんだが・・・クリアする人は中々いない。

確かここ2、3年合計で合格者1桁だったような気がする。

それでも応募者は減るどころか、年々増える一方。


魔術師になればポーションの販売から魔物の討伐まで、色々できるからなぁ。


「魔術師さん、お待たせしました!」


「あ、先生。どうもお世話になってます。」


「さ、こちらへどうぞ!」




「しかし、テスト明けは今も昔も変わりませんね。」


「あはは、私の時もこんな感じでした。魔術師さんの時も?」


「似たような感じですね。まぁ今より大人しくはありませんでしたが・・・。」


「そうなんですか?」


「ええ。私のときはテスト明けに必ずどこかでカチコミがありましたから。」


「えぇ・・・。」


単位が取れなかった生徒、その中でも後がなくなった生徒たちは暴動を起こすのが普通だった。

ちなみにだが真面目に受けて単位を取れなかった人、病気等で取れなかった人たちはそんなことをしない。

そういった人の場合救済の課題があるからな。


ではどういったやつがカチコミを仕掛けるのかというと。

授業に出てるだけでノートを書いていなかった奴や、課題を提出していない奴など。

どちらかというと不真面目なやつらがカチコミを仕掛けていた。


まぁ、中には極稀に先生の横暴を止めるためにカチコミを仕掛けた奴もいたが。

お気に入りの生徒にしか単位を上げなかったり、テストで100点取っても何故か単位が取れていなかったり。

そういった七光りや天下りで来た教師も何人もいた。


だが、そういう教師ほど実際の実力がない。

だからこそカチコミは成功し、そういった教師が減っていった。


しかしそういった教師へのカチコミが成功するものだから、不真面目なやつらが俺たちもカチコミができる!と勘違いし、普通の優秀な先生にカチコミ。

軒並み返り討ちにあってたっけ。


「今でもカチコミとかはあるんですか?」


「いえいえ、今は全然ありませんよ!というか私の学生時代でもありませんでしたし・・・。」


「あ、そうなんですか。」


そうなのか・・・平和になったなぁ。


「でも、先生がここの生徒だった時横暴な先生とかいませんでした?そういう先生の弱みとか握って脅迫したりは・・・。」


「ありませんよぅ・・・。一体どんな学生生活を送ってたんですか・・・?」


―――――――――――――――――――――――――


ふぅ、今日の仕事も無事終了。

しかし魔道学院でカチコミが起きない、どころか。

今は暴動すらないらしい。


こう・・・軽くジェネレーションギャップを感じた。


とりあえずそんな他愛のない話をしながら学院へ酒ポーションを納品。

何でも先生の間で飲みたい人がいるとかなんとか。

結構お偉い先生に頼まれたらしい。


ただ、流石お偉い先生というか。

酒ポーションを5つ納品したが、相手の払ってきた金が通常の5倍だった。

高名な画家しかり、偉い人や凄い人ってのは金遣いが凄いよな。


でもおかげで良い臨時収入になった。

あとは、そうだな。


―――美味い飯でも食えれば、完璧だな。


なんだかんだで腹が減ったんだ。

ここいらで美味い飯を食っておかないと。


有難いことに酒ポーションで懐は潤った。

少し高めのランチでも大丈夫。


とりあえずは・・・飲食街へ向かうとしようか。




到着、飲食街。

さぁ飯だ、飯を食おう。


歩いてるうちに空腹になって、今や私は飢えた魔獣。

時間は夕方に近いが・・・今食べれば夜までもつだろう。


となれば何を食べるかだが。

・・・相変わらず、歩いてる時には決まらなかったんだよな。


結局いつも通り、歩いて店を探さなければ。

でもそれで当たりの店ばかり引いてるし、別に良いか。


良し、こっちは腹が減ってるんだ。

とっとと歩いてどこかの店に入って、美味い飯を食うとしよう。



居酒屋。

この前手羽先と酒だったし、今日はいいかな。

あー、あの手羽先の味を思い出して腹が減ってきた。

今日は行かないがまた今度あの手羽先、買いに行こう。


焼肉。

焼肉かぁ。

でも今日は気分じゃない・・・というかそもそもやってないじゃないか。

仕込み中の札出てるし。


食堂。

居酒屋、焼肉がダメとなれば。

やはりこういう、食堂に行きつく。

うん、普通に定食とか食べたい気分だから丁度良い。


「食堂 万丈」、か。

何だか名前にも味のある感じで良いじゃないの。


良し、今日はこの店で決定。




「いらっしゃいませ。御一人様ですか?」


おお、裕福そうな女将さん。

でもこういうタイプの人がいる店、多分これは当たりだろう。


「ええ。」


「かしこまりました。こちらのカウンターへどうぞ。」


そう言って案内されたのは厨房の前のカウンター。

良いね、特等席だ。

自分の料理が調理される光景を見ながら飯を待てるのは素晴らしい。


「どうぞ、お冷です。ご注文が決まりましたらおよびください。」


「ありがとうございます。」


食堂なのに、何というか。

女将さんが優しそうな雰囲気。

いや、いつも言ってる食堂の女将さんが優しくないってわけじゃなくて。


こう、良い雰囲気って言えばいいんだろうか。

普通の食堂だとほら、こうガツガツしてるじゃん?


いやそういう雰囲気も嫌いじゃないんだが・・・まぁとにかく。

この店、食堂の様で食堂じゃない、でも食堂の良い雰囲気があって素晴らしい。


さて、とりあえずメニューを決めちゃおうか。

店の雰囲気よりまずは飯を決めないと。


さて、何を食おうか。

メニューを開いて・・・。


・日替わり定食


・とんかつ定食


・ハンバーグ定食


おお、来た来た来ました、定食の文字の群れ。

いいね、文字が魚群となって目の前を通り過ぎる。


・肉野菜定食


・ムースーロー定食


・生姜焼き定食


・唐揚げ定食


・オーク肉定食


通り過ぎるが・・・何だこの定食の数。

まだ他にもあるぞ。


定食が魚群なのは嬉しいが、ここまで大漁だと少し困る。

どれが私の求める魚か、こんなに多いと探すのが大変だ。


落ち着け、落ち着くんだ私。

この大量の定食の文字に流されるんじゃない。

この中から私がいま求めるメニューを読み解け・・・!




「お待たせいたしました。チンジャオロース定食になります。」


来た、私が大量の魚群から釣り上げた至高の1匹。

チンジャオロース定食。


・チンジャオロース

ピーマンと豚肉、そしてタケノコ。この3種類のみのシンプルな構成だ。だがこの3角形、美味そうで隙が見当たらないぞ。そしてしっかり盛られたその量、食べ応えもありそうだ。


・ライス

定食と名乗るにはライスが必須。大盛にしてもらった。


・サラダ

シンプルな生野菜サラダ。あると無いとじゃ結構違う。


・味噌汁

トウフとネギの入ったお味噌汁。優しい香りがたまらない。


では、いただきます。



良し、チンジャオロースへ行ってみよう。

久しぶりに食べるチンジャオロースに食欲が大騒ぎしている。


というか、このチンジャオロース。

凄くシンプルで良さそうだよな。

ピーマン、豚肉、タケノコの3種類。


最近だと色んなバリエーションが出てるみたいだし。

ここで基本に忠実なチンジャオロースを食べるのも悪くない。


という訳で、箸で掴んで。

早速口の中へ放り込もう。


―――ああ、これこれ。この味だよ。ピーマン、豚肉、タケノコがチンジャオロースとして口の中を走り回ってる。


美味いの言葉が思わず口からつぶやきが漏れてしまう、そんなチンジャオロース。

これは良い、凄く美味しい。


細切りの豚肉、こいつ細切りなのにしっかり美味しい。

チンジャオロースの味付けもしっかり合ってる。


こう、なんだろう。

細いのに弾力があるというか、良い肉を使ってるんだろうか。

程よく歯を刺激してくれるから、ずっと噛んでいたくなる。


味も沁みてて、良い肉だ・・・。


次にチンジャオロースを語るうえで外せない、豚肉ともう1つの主役。

そう、ピーマン。

こいつ、炒められてるのに凄くシャキシャキなんだ。


そして感じる苦みがまた・・・大人の味というか。

そうそう、チンジャオロースってこの苦みがあってこそだよなって、そう思い出させてくれるピーマン。

子供は少し苦く感じるだろうが、大人はこの苦みが好きなんだよ。


そんな中、2つに負けていないと主張してくるタケノコ君。

タケノコも豚肉と同じく細切り、しかしその食感は全く持って損なわれず。

タケノコ特有の歯ごたえが凄く楽しい。


ジューシーな豚肉、シャキシャキのピーマン、そしてタケノコ。

そしてそれを纏める第4の主役、裏ボスのチンジャオロースのタレ。


3種の異なる、それでいて主張の激しい具材。

それを見事にチンジャオロースに陥れるこのタレよ。

しっかり炒められて、しっかりタレが絡んだこのチンジャオロース。


美味い以外に言い様が無いじゃないか。


そんな事を考えながら、また1口


―――うん、美味しい。これは良いおかず、チンジャオロース定食にふさわしいチンジャオロースだ。


何度食べてもしっかりまとまっているこのチンジャオロース。

となれば、ここいらで私がとるべき行動は。


ライス、一緒に行くしかないでしょ。


という訳で再度チンジャオロースを箸で掴んで。

ライスの上にいったんバウンド。

こうすることでこのチンジャオロース、その美味いタレがライスに染み込む。


そしてそのまま口へ入れて、タレとライスで追いかければ。


―――ああ、チンジャオロースとライスが口の中で手を取り合った。そしてそのまま・・・暴れだす様な美味しさ。


素晴らしい、素晴らしい定食だ。

ありがとうチンジャオロース定食。

君のおかげで今私、最高に幸せ。


ただ美味いチンジャオロースとライスを食べただけなのに、それだけじゃ表せないようなこの多幸感。


タケノコが、ピーマンが、そして豚肉が。

ライスとそれぞれ手を取り合ってる。

影の主役のボス、タレですらライスに染みこみ、取り込まれていく。


これはもう、もりもり食えるぞ。


今日の私が求めていた飯、それはまさしくチンジャオロースの定食だったんだ。


チンジャオロースをバウンドさせて食べ、その後ライス。

これを何度か繰り返す。


すると、タレがライスにどんどん染みていって。

白いライスがチンジャオ色に染められていく・・・!


一旦、このタレライスだけで食べてみようかな。

具材を少しライスの上で転がして・・・。


そのままライスだけで、いただきます。


―――お、おお。チンジャオロースならぬチンジャオライス。これはこれでしっかり美味しい。


タレが良い具合にライスと絡まってる。

豚肉、ピーマン、タケノコじゃ飽き足らず、ライスまでしっかり支配していくとは。

さっきまではライスに取り込まれていたと思ったが、それは違う。


タレがライスを支配しに行っていたんだ。

チンジャオロースのタレ、おそるべし・・・!



と、そんな感じでライスとチンジャオロースを食べ進めて・・・ふと思う。

あ、そういやサラダがあったな、と。


すまないサラダ君、忘れてしまっていた。


とりあえず机の上のドレッシングは・・・ゴマ。

こいつをかけて。


では、いざ。


―――お、このゴマドレッシング、凄く濃厚じゃないか。生野菜にしっかり絡んで離さない。


さっぱりしてて、そして美味しい。

生野菜にドレッシングをかけただけなんだが、その軽さがまた良いんだ。


チンジャオロースのピーマンとはまた違った、活の良いこのシャキシャキ感。

炒められていない、まだ若い野菜のシャキシャキが凄く楽しい。


そしてそこに濃厚なゴマのドレッシング。

これがまたしっかり合ってる。


というか少しトロっとさえしてないか、このドレッシング。

こいつ相当濃厚だぞ。


もしかして店の手作りなんだろうか。

市販だったら私も買って家に置いておきたい・・・。


それにこのドレッシング、濃厚なのに野菜を塗りつぶさない味してる。

こう、ゴマの風味と甘さ、そして濃厚な味があるんだが。

それでも野菜のそのまま、素材の味を引き出してもいる。


何だろう、サラダを食べるごとにこのドレッシングに惹かれていく。

凄い、不思議、そして美味い。


シャキシャキサラダに胡麻ドレッシング。

チンジャオロースとライスに負けない好相性。


これは良いサラダだ・・・。



そんな感じでむしゃむしゃとサラダを食べる私。

しかしサラダが大量にあるわけではなく、あっという間にサラダ売り切れ。


いやでも、この胡麻のドレッシングとの相性が凄いからさ・・・。

これは仕方のない事なんだ。


それにまだ、私には味噌汁が残っている。


味噌汁、豆腐とネギのみなんだが。

どこか・・・こう、そそるんだよなぁ。


香りも良いし、早速飲んでみようか。

どれどれ・・・。


―――あー・・・染みる。チンジャオロースのタレがライスに染みるなら、この味噌汁は私に染みる、そんな美味しさ。


良いねぇ、このしみじみとした美味しさ。

こう、優しさが液体になってよそわれたかのような、そんな味噌汁。


トウフとネギも、どれ・・・。


―――うん、味が染みてて、しっかり美味しい。


じっくりと温まる、チンジャオロースとライスを食べる私にとってのオアシス。

これは良い味噌汁だ。


こういう味噌汁がある店はきっとどんな料理も美味しいんだろう。

私も今食べてるチンジャオロース、凄く美味しいし。


これ、お代わりしたい味だな・・・。


っと、いかんいかん。

このままではまた味噌汁が無くなってしまう。


ここいらで一度メインディッシュ、チンジャオロース&ライスに戻るとしよう。



改めてチンジャオロースとライスを食べる私。


―――あ、サラダと味噌汁でさっぱりしてて、改めて美味しいぞ。


半分ぐらい食べ進んでいたが、もう半分も新鮮な気持ちで食べ進めれそうだ。

・・・いや、それにしてはライスを多く消費しすぎてる。

これはライスのお代わりをせねばなるまい。


とりあえず残りのライスをチンジャオロースと一緒に掻き込んで・・・。

良し、空っぽだ。


「すいません、ライスのお代わりをお願いします。」


「かしこまりました。あ、ライスとお味噌汁はお代わり無料ですので。」


何と。

それは良い事を聞いてしまった。


ならば味噌汁もズズっと行って・・・。


「はい、ライス・・・あら。」


「すいません、味噌汁もお代わりお願いします。」


「ええ、わかりました。」


良し、これで準備万端。

残りのチンジャオロースをライス、そして味噌汁で攻め立てよう。


第2ラウンド、今開演だ・・・!




「ありがとうございました。」


ふぅ、美味しかった。

そして大満足の大満腹だ。


あの味噌汁とチンジャオロース。

それを前にしちゃライスが足りぬ。

だが胃袋の容量は決まっている・・・にも関わらず、3杯目を頼んだのが私です。


しかしこんだけしっかり食えば夜腹が減ることは無いだろう。

ま、万が一減ってもまだどら焼きが残ってるし。


とりあえず煙草を取り出しまして。

火をつけたら、一服。


・・・ふぅー。

良い余韻だ。


さて、煙草を吸い終わったら家に帰るか。

加工依頼いくつかこなしておかないと。


願わくば、次も美味い店に会えるように。

主人公(男)・魔術師。実はカチコミを率いたこともある。教師3人とのカチコミは今でも密かに語り継がれている。


魔道学院の教師(女性)・自分の受け持つクラスがカチコミしても一切勝ち目がないくらいには強い。特技は魔法の早撃ち。

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