タンメンもハルマキも両方最高だった。
また遅刻しました、申し訳ないです。
そしてブクマがまた増えてました、ありがとうございます・・・!
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うー、寒い。
今日は天気、晴れ時々曇りと言った所か。
だが・・・一気に冷え込んだ。
刺す様な寒さ、息も白いし偶に道が凍ってる。
朝布団の中から中々出られなかったが、この寒さで逆に眠気が吹き飛んだぞ。
あー、さむさむ。
しかしいつもより早く起きたから、約束の時間より早く営業先に着いてしまいそうだ。
いや、早く着いたとしても外に放り出される事は無いか。
取り敢えずさっさと営業先に向かうとしよう。
「ありがとうございます魔術師さん。本当良いタイミングで来て下さいまして助かりました。」
「いえいえ、偶々ですよ。」
早く着いたのは良いが、営業先の暖房が壊れてた。
何か最近、私冷暖房の修理屋みたいになってないか?
仕事と言えば仕事だから、別に良いんだけどさ。
さて、今回来たのはネイルサロン。
何とここの店主、元々ギルドで働いていたのだが。
テンセイシャ達から広まったというネイル、これを広めたいとギルドを辞めてこの店を開いたのだ。
聞くところによるとそのまま行けば出世コースだったらしいんだが。
そんな店主、見た目綺麗系のお姉さんだが、私より若い。
・・・私より若くて店持って、しかも仕事に情熱があるとか、私の上位互換では?
いや、焦るな、私は魔術が使えるんだ、うん。
何というか自分で言ってて悲しくなる。
ちなみにここ、ネイルサロンだけでは無く。
偶に色々なマナー講座も行っているらしい。
近所の奥様方に人気なのだとか。
「しかし一瞬で直しましたね。流石魔術師さん。」
「ああ、いや。これスイッチの部分がガバガバになってただけみたいなので。・・・あ、修理費もいりませんよ。」
「そうですか、重ね重ねありがとうございます・・・そうだ。お礼の代わりに今美味しい紅茶でもご用意します。ダージリンと呼ばれる良い茶葉が入ったんですよ。」
「お、本当ですか。ではご馳走になります。」
ちなみにここの店主とはこの店を立ち上げる時からの知り合いだ。
というかこの店の内装やインテリア、私が担当したからな。
自慢じゃないが、中々良い内装だと自負している。
しかし紅茶か。
私、コーヒーはよく飲むが、紅茶は殆ど飲まないんだよな。
あ、でも今話してたダージリン。
これは聞いた事がある。
最も聞いたことがあるだけだが。
さてさて、どんな味なんだろうか。
「お待たせ致しました。ダージリンティーです。」
おお、これがダージリンの紅茶。
・ダージリンティー
明るい黄金の様な色、そこから爽やかな香りが立ち上っている。へぇ、凄く綺麗な紅茶だな。
あ、でも確か紅茶って飲み方にマナーがあるんじゃ無いか?
「すみません、ありがとうございます。・・・実は私、紅茶のマナーに詳しく無いんですが。」
「あ、別に大丈夫ですよ。お好きな様に飲んで下さい。」
「そうですか、では失礼して。」
カップを持ち、口に近づける。
おお・・・本当に良い香りだ。
まずは一口、いただきます。
―――爽やかな風味に程よい酸味。ああ、麗かな日差し、風吹き抜ける草原が眼に見える様だ。
美味しい。
コーヒーや緑茶の様にホッとするが、それと同時にダージリンの美味しさ、華やかさが思い切り伝わってくる。
成る程、確かにコイツは良い紅茶だ。
「お味はどうですか?」
「ええ、凄く美味しいです。」
紅茶を殆ど飲まない私でも良い紅茶とわかる、それくらい美味しいです。
「ふふっ、良かったです。お代わりもありますので遠慮なく。」
「ありがとうございます。」
寒い日、そしていきなりの暖房修理だったが。
全てがこの紅茶に繋がったと考えれば、むしろ幸先の良いスタートだったな。
―――――――――――――――――――――――――
「・・・では、その様に。」
「頼んだぞ、魔術師さん。」
「ええ、任せて下さい。では失礼しますね。」
そう言って外に出ると・・・寒っ。
しかし今日最後の営業、これにて終了。
そこそこ色々と受注出来た。
しかしながら、気温これ下がってないか?
朝より寒い気がするんだが。
・・・あ、そう言えば家にあるホットポーション飲めば良かったんだ。
何という凡ミス。
あー、朝飲んだ紅茶美味しかったなあ。
しかも熱いから、良い感じに体も温まって・・・いかん。
そんな事を思ってたら。
いきなり。
―――無性にお腹が、空きました。
時間は・・・昼過ぎか。
昼飯には少し遅い時間。
しかしながらこの腹の減り様、夕食迄は耐えられない。
仕方ない、寒いけど行くか、飲食街。
ついでに夜飯も何か適当に買って帰ろう。
あー、しかし、寒いなぁ・・・。
冷え切った体を引きずりながら、どうにか飲食街へ到着。
何だろう、腹も減っててこんなに寒い。
もしかして飢えた魔物が寒い日に凶暴化するのは、こんな理由なんだろうか。
しかしここは飲食街、食べるものには困らない。
いつもなら余裕をもって歩いて探すんだが・・・今日は少し目途をつけてある。
ずばり温かい物、それを食いたい。
こんなに寒いんだ、温かい料理を食えばその美味しさも3割増しだろう。
さ、凍える前に店を探そう。
寒いけど妥協はしたくないんだ。
食堂。
食堂か・・・いや。
今日は寒いしすぐに入りたい所だが。
食堂って気分でもないんだ。
粘る、まだ粘るぞ・・・!
焼肉。
温かい・・・というよりは焼いた肉か。
それも悪くないが、いやでも。
焼肉を食う天気ではないな。
気分もどちらかというと焼肉じゃない。
しかし、寒い。
このままでは飢えと寒さ、一番つらいその両方で倒れてしまいそうだ。
これは、もう妥協するしかないか・・・?
おや、あれは。
「ラーメン・タンメン 一番麺」、か。
ラーメンにタンメン、良いじゃないか。
そういえば前に、寒い中タンメン食ったっけ。
・・・ああ、いかん。
そんなことを思い出してたら、無性にタンメンが食いたくなってきた。
うん、温かいし、ここだ、ここにしよう。
「いらっしゃいませ!お好きなカウンター席にどうぞ!」
ニッコリ笑顔の給仕さん。
美人さんだな。
カウンター席、じゃあ角の2つ手前くらいに座ってみるか。
・・・というかテーブル席が2つくらい。
残りはすべてカウンターだ。
しかも厨房が奥にあるんじゃなくて、カウンターの中。
凄い昔ながらというか、歴戦の風格を感じる。
こんな近くで調理の様子を見れる店、中々ないぞ。
赤いカウンターテーブルに四角い背もたれ無しの椅子。
うん、こいつも昔ながらの雰囲気出てるな。
料理は・・・おじいさんとおばあさんの二人か。
という事は給仕は娘さんかな?
・・・いや、それにしては給仕が若すぎる。
お孫さんかな、まぁいいや。
とりあえず温かい店内で温かい料理を食べないと。
メインはタンメン、これに決定だが・・・。
サイドをどうするか、だ。
最近餃子ばかりだし、ここいらで1つ別のサイドを挟んでおきたい所。
さーて、何にしようかな・・・。
唐揚げ、も何というか、うーん・・・。
「お待たせいたしました!タンメン大盛とハルマキになります!」
おお、湯気が立っててホカホカのタンメン、美味しそうなハルマキ。
・タンメン 大盛
麺と野菜の大盛が可能との事だったので、遠慮なく大盛を選択。湯気から凄く美味しそうな、腹の減る香りが立ち上っている。野菜はモヤシとハクサイ、少し覗くキャロットの構成。食い応えがありそうだ・・・!
・ハルマキ
パリパリしたサイドメニュー。餃子、唐揚げに続く第3の選択肢だ。目の前で揚げられたハルマキ、嬉しい2本でのご登場だ。
では、いただきます。
さぁ、タンメンだタンメンだ。
こんな寒い日にこの温かいタンメン。
良い香り、ボリュームも良し、味も香りからして美味しいと分かる。
ならまずこいつを食わないと。
ホカホカの湯気が野菜からも立ち上っているが・・・ここはまず、麺。
麺とスープを味わわないと。
野菜を少し避けて、麺を引っ張り出して、と。
―――はふっ、ずるっ・・・ああ、これは、美味しい。温かくて優しい、それでいて美味しいタンメン。
麺も、麺に絡まるスープも。
もう両方とも美味しい。
互いが互いに引き立て合って、とんでもないタンメンに進化してる。
特に麺、これが太麺なのが凄く嬉しい。
細麺も好きだが、この優しくも強烈な味は太麺で食いたい味。
コシが強くてもちもちした太麺が、野菜とスープのうま味をしっかり受け止めて。
それを身にまとい口の中で主張する力強い美味しさ。
対してスープ、こいつは少ししょっぱめ、でも凄くシンプル。
見た目がもう凄くシンプルなスープなのに、その味はとんでもなく美味しい。
しかもそんなスープに野菜の出汁が溶け込んで・・・堪らん!
普通のラーメンや豚骨ラーメン、ああいったものも良いけど。
こういうシンプルなスープも凄く良いじゃないか。
素朴、それでいて素敵なタンメンのスープ。
寒い中、これに出会えたことに唯々感謝するしかない。
麺もスープもアツアツで、食べるほどに凍えていた食欲が解されていく・・・!
・・・と、まだ感謝は早いか。
タンメン、その麺とスープは味わったが。
まだ野菜を味わっていない。
カウンター越しに見た、あの調理法。
そこでは野菜を炒めながら、その途中にこのタンメンのスープを入れ、更に炒める。
つまりこの美味しいスープが調味料として炒められた野菜。
そんなの・・・美味しいに決まってるじゃないか。
という訳で、モヤシやハクサイ、キャロットを箸で掴んで。
まずはそのまま、食う。
―――あふっ、あつっ・・・でも、美味い、予想通り絶品の野菜。野菜炒めじゃない、タンメンの野菜として最高の出来だ。
これは良い、凄く良い味してる。
シャキシャキ感、でも硬くはなく。
野菜の表面にスープがしっかり絡んで凄く美味い。
私、この野菜があればライス3杯はいける。
そのくらい強烈で、ずっと食いたくなる優しい野菜たち。
しかもアツアツ出来立て、体の芯からあったまる。
これは野菜も大盛にして正解だったな。
そしてそんな野菜、次は、そう。
スプーンにスープを入れて、スープと野菜、一緒に食べる。
―――うっはぁ・・・美味しい。素朴なスープに野菜の食感。このスープ麺だけじゃない、野菜にも抜群に合うじゃないか。
いやぁ・・・身に沁みる美味しさ。
いや、もはや私の血液になるかのような、そんな美味しさがここにある。
麺とスープも美味くて、野菜が上手くて、野菜とスープも美味い。
これはもはや鉄壁。
素朴なのに付け入る隙が無い、完璧な布陣のタンメンだ。
店名の一番麺、その名に全く偽りなし。
看板メニューのタンメン、とんでもなく美味しいです。
こりゃ寒さで3割増しとかじゃない、素で10割美味しい店だ。
となれば、俄然ハルマキにも期待してしまう私。
タンメンのあの味、そこそこの店に出せるもんじゃない。
ならきっとこのハルマキも美味しいのは当たり前だろう。
こんがりきつね色、ぱりぱりに揚がったハルマキ。
さぁ、齧り付いてみようじゃないか。
―――美味い、ハルマキ。凄く美味しいです。パリッとした皮、具沢山な中身、見た目にそぐわずボリューミー。
綺麗に巻かれたハルマキの中には、圧倒的な充実感が巻かれていた。
パリパリの食感、具沢山の中身、そして味。
そのどれもがもう・・・最高。
このハルマキをタンメンのサイドとして食べてしまう、この背徳感。
だってこのハルマキもライスのおかず、そして酒のつまみ、どれにでも合う。
そこを敢えてタンメンと一緒に食ってしまう、これ以上の背徳感があるだろうか。
・・・いや、よく考えたら餃子とか唐揚げもそうだよな。
でも私の中でこう、ハルマキは特別感が凄いんだ。
そこら辺の店じゃ出せないであろう、この味。
噛むほどにパリパリ、そこから滲みでる旨味。
これは・・・出汁の味か?
うーん、美味すぎて良く分からない。
とりあえず、もう1口。
さっきは外側だから折りたたまれたハルマキの耳の部分が多かったが。
次は具沢山な真ん中へ、思い切り齧り付く・・・!
―――おお、凄い、ハルマキの具が爆発してきた。さっき感じた出汁か何かの旨味が口の中で奔流している。
最初も美味けりゃ、次も美味しい。
食べるほどに楽しくて美味しいこのハルマキ。
これは熟練の技、思い切り使われてるな。
そんじょそこらの料理人が2、3年練習したってこの味は出せないだろう。
そのままパクっと3口目。
―――あ、耳の方ばかりだった。でもこれはこれでぱりぱりしてて美味しいから良し!
良し、ハルマキを1本食い終わったところで。
またタンメンに戻りますか。
ズズっと麺を啜れば・・・ああ。
温かくて、幸せで。
それでいて、美味しくて。
幸福な食卓とは、正にこういう事を言うんじゃないか?
好きなものを絶好の機会に、好きなように食えるこの幸せよ・・・。
そんな美味しいタンメンの側使えは、美味しいハルマキ。
一気に1本食ったら、何だか残りの1本が凄く惜しく見えてきた。
このハルマキをいつ食うか、これは重要だぞ。
そう思いながらもタンメンを食べる手が止まらない私。
だってこれ、美味しいんだもの。
しかもこんな寒い日にこんな美味しいタンメン、手が止まる訳がない。
いや、きっとこのタンメン、暑い日でも美味しいだろうな。
ただ、今回は寒い日に温かい料理が組み合わさってるだけで。
美味い料理はいつ食っても美味いんだ。
いやあ、すっごく美味しい。
寒空の下、良い店に出会えたな、私。
「ありがとうございました!」
あー、美味しかった。
外は寒いが・・・タンメンパワーか、さっきより少しマシな気がする。
タンメンもハルマキも両方最高だった。
この調子なら・・・そうだな。
夜飯買う前に煙草で一服できるだろう。
火をつけて、吸って、吐く。
この行為だけなのに、この行為を止められない私がいる。
特に美味い飯を食った後には。
さて、吸い終わったら夕飯の買い出しだな。
美味い昼飯食えたし、夜飯はパパっと選んじゃおう。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。その後夕飯の買い出しで凄く迷い、寒さに震えながら帰宅。
「ラーメン・タンメン 一番星」の給仕(女性)・店主夫婦のお孫さん。将来はこの店を継ごうと、日々料理の練習をしている。美人。