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メインは天津飯の塩餡。

また遅れました、すいません。


今回少し少なめです。

・・・あ、朝か。

何だろう、気分がすがすがしい、気持ちの良い朝だ。

でも天気は曇りか。


とりあえず、何はともあれ。

祭りが無事終わってほっとしたよ。


しかしフル装備、結局1度も使わなかった。

いや、使わない方が良いのは良いんだが。


だが準備した分、少しこう、働きたかった面もある。

特に私最近魔術師じゃなくて便利屋だと思われてるからな。

まぁ、それに近い営業をしてるからそう思われるのも仕方ないんだが。


でもそれで儲かってるから、便利屋と思われても良いのかもな。


さて、今日の営業の準備をしようか。

ただ、このどんよりとした曇り空。

途中で雨降ってきそうだな・・・。


昨日、一昨日がこんな天気じゃなくて良かったよ。

折角の祭り、快晴の方が盛り上がるだろうし。


うん、この天気だし。

雨対策もしっかりしておこう。


さ、まずはシャワー、そしてコーヒーだ。


―――――――――――――――――――――――――


「いやぁ、いきなり土砂降りですね。」


「ええ、少し怪しいなとは思ってましたが・・・ここまで一気に降ってくるとは。」


「もしかしたら昨日、一昨日の祭りを快晴にした反動かもしれませんよ。ま、良ければ雨宿りしてってください。」


「ああ、ありがとうございます親父さん。」


今日午前中最後のお客さん。

中心街で古くから営業している寝具屋さんだ。

私の家の枕、実はここで購入したんだ。


しかも首の高さに合わせてくれたりして、毎日熟睡だ。

やっぱり良い寝具を使うと睡眠の質が違う。

・・・まぁ、偶に二日酔いで寝心地が悪いが。


「まぁでも、祭りが快晴だっただけで十分嬉しいですよ。その代わり見回りが大変でしたけど。」


「そういえば魔術師さん主催者でしたもんね。・・・でも、本当に凄い活気でしたね。まるで昔の様で・・・。」


「昔、ですか?」


「ええ、まだまだここができたばかりの頃は、この場所も凄い活気だったんです。今よりも何倍も凄くって・・・。私も祭り、一般客として参加しましたが。あの頃の雰囲気が戻ってきたような気がして凄く楽しかったですよ。」


「そうですか・・・なら、私も頑張った甲斐がありましたよ。ああ、勿論他の方々に手伝ってもらってこその開催でしたが。」


まぁ、主催者はもうやりたくないが。

こういう言葉をもらえるんだったら、まぁ、頑張った甲斐があるよな。


誰かを喜ばせれるのは、一流の才能だ。

・・・なんちゃって。


「またまた、祭りの責任者は魔術師さんだったんでしょう?」


「いえいえ、他の人たちの力を思い切り借りての開催でしたし。特に冒険者ギルドと商人ギルドには凄く手伝ってもらいました。私は名ばかりの責任者でしたよ。」


「それでも、祭り自体。そのきっかけを作ったのは魔術師さんでしょう?そこは誇っても良いと思いますよ、はは。」


「あはは、そうおだてないでくださいよ親父さん。私はまだまだ未熟者です。・・・あ、雨あがりましたね。」


「おや、本当だ。小雨どころかぴたりと止んだね。」


「では、ここいらで私は失礼しますね。出来次第納品に来ます。」


「ああ、お願いするよ。」


「それでは、失礼します。」


世間話をしつつインテリアの受注。

しかしあそこの親父さん、本当に人が良いというか・・・。

私をおだてたって、何も出ないんだが。


まぁ、受注した花瓶の加工、頑張るか。

他意はないけどな、うん。


だが、なんだろう。

雨がピタッと止まって。

何故だか知らないが、無性に今。


―――私、腹が減ってきた。


あー・・・腹減ったな。

朝に食べてた野菜、この前無くなったんだよな。

野菜丸かじりも中々良かったんだが。


うん、ここまで空腹を自覚しちゃ仕方ない。

どのみち午前の営業はこれで終了だったんだ。


昼飯、飲食街へ食いに行こう。


ガツンと昼飯食って、午後の営業も頑張らねば。




という訳で到着、飲食街!

さーて、今日は何を食べようかな・・・。


とりあえず、がっつり系。

これは外せないな。

こう、元気の出る飯を食いたい。


だがここで考え続けるだけじゃ元気が出るところか空腹で倒れてしまう。

早いとこ店を見つけないとな。


さ、歩こうか。



居酒屋。

通し営業の居酒屋か。

でも・・・この後仕事で酒飲めないし、パスだ。


ソバ屋。

ソバ、ソバかぁ。

でももうちょっとこう、ガツガツ行きたい。


食堂。

そうだ、そうだよな。

ガツンと食うには、ガツンとライス。

主食を食わなきゃ、ガツン系とは言えないな。(諸説あります)


丁度良くここに食堂があるんだ。

しかも「中華食堂 ザ・キング」、中華の名前にキングという圧倒的王者感。

見た目は・・・まぁ、少し古いというか、悪いい方をすればぼろっちいが。


しかし見た目に騙されてはいけない。

こういう建物の料理こそ、何らかの深い美味しさがある料理が出てくるんだ。


暖簾も出てるし、営業してるみたいだし。

・・・見た目で少し入るのに躊躇するが。


いや、男は度胸!

いざ入店、後は野となれ山となれ!




「いらっしゃいませ!御一人?」


「はい。」


「そ、適当な所座って頂戴!」


これはまた、元気なおばあさんがお出迎え。

こう、飲食街だと美男美女が多いから、人当たりの良さそうなおばあさんだとどこか安心感がある。


・・・いや、待て、あの写真。

昔の写真でこの店の前で撮った写真・・・店主と給仕のおばあさんだろうか。

うわ、凄く綺麗じゃないの。


くっ、今はおばあさんでも昔はすごく綺麗。

やはり飲食街には美男美女しかいないのか・・・?


と、そんなことはどうでもいい。

適当な席に座ればって言ってたし。


うーん・・・店内は1列になったカウンター席とテーブル席がいくつか。

ここでテーブル席に座るのは、何か違う気がする。


良し、カウンターの端にでも座るか。

端っこ、なんかこう安心するんだよな。


それにカウンター席といえば特権がある。

そう、厨房の様子を眺めながら料理を待てる、カウンターだけの特権。


自分が食べる料理を作る工程、見てると食欲とワクワク感が増してくる。

そう思う人、私以外にもきっといるはず。


だが、料理の工程を見るためにはまず自分が何か注文をせねば。


とりあえずメニューを開いて・・・おや。

さっきの写真の横。

そこにある文字、間違いない。


「天津飯 塩餡あります。」


天津飯、正に今、天啓を得たり。

良いじゃないか天津飯。


なんだかんだで過去に食べたの、激辛の天津飯だった。

しかも敢えての塩餡。

これは・・・行くっきゃないでしょう。


メインは天津飯の塩餡。

ついでに大盛にしちゃおう。


あとは、サイドメニューだが・・・やはりここは餃子だな。


「すいません。」


「はい!」




「はいお待たせ!天津飯塩餡大盛、中華スープ、餃子1人前ね!餃子のタレそこにあるけど、酢と胡椒で食べても美味しいよ!」


何と、酢胡椒餃子か。

ならば今回はそうやって食べさせていただこう。


・天津飯

大盛、その名に違わぬビッグサイズ。餡は白く透明、たっぷりかかってる。いやぁ、これは美味しそうじゃないか。


・餃子

オーソドックスな餃子。あ、でも他の店に比べると結構大きいか?焼き面がかなりこんがり焼いてあって、腹が減る色してる。


では、いただきます。



さ、まずは待ってましたの天津飯!

塩餡にビビッと来たんだ、最初はやっぱりこいつを食わなきゃ。


塩餡の天津飯、上には気持ち程度のカニカマ。

でも、それでいいしそれが良い。


さぁ、早速スプーンを入れて。


餡、卵、ライス。

三位一体の美味しさを味わおう。


―――ふわっふわの卵、どっしりとした餡、そして全てを受け止めるライス。カニカマも良い感じに味を引き立てて、美味!


美味い、良いじゃないか塩餡の天津飯。

するっと来るのにどっしり感、塩の万能さを垣間見る美味しさだ。


そして卵がもう・・・ふわふわなんだよ。

スプーンで掬う時にするっと入ってきて。

口の中でふわとろ食感。


しかもその卵と塩餡の相性が・・・もう、ね?

抜群としか言えないほどの美味しさなんだ。


それを思い切り受け止めるはライス。

そう、ライスのおかずに卵と塩餡が乗っかってるような。

でも丼とは少し違うんだよな。


あー、カニカマのちょくちょく出てくるカニの風味。

これも良い仕事してる。

確かカニカマ、これもテンセイシャが作ったんだったか。


本当に、テンセイシャ達は色々美味しいものを作るなぁ。

カニカマが無くても確かにこの天津飯は完成しているが。

でもこいつが無いと、きっとちょっぴり寂しいな。


そんなことを思いながら、再びスプーンで1匙だ。


―――くぅー・・・!透けて見える様な塩餡なのに、その味は間違いなく本物。見た目とは裏腹の強烈で優しい味がたまらない。


天津飯、前は激辛、今回は塩味。

普通の天津飯をまだ食べていないが、こんな美味しさを堪能しちゃうと。

私、今後天津飯は塩餡しか食べないかも・・・。


・・・あ、卵。

良く味わったらネギの食感もする。

隠し味の引き立て役、ネギ。


うむ、良い仕事ぶりだぞ、ネギ君。


さぁ、更に3口目行ってみよう。


―――ああ、食べれば食べるほど天津飯という黄金の山が、私の口の中に乱立していく。そこには塩餡の滝が流れ、ライスの山、卵の雲が浮いているんだ・・・。


今日私が求めていたがっつり系。

それをしっかり実現させてくれた天津飯。

この店、グッジョブ、天津飯、デリシャス。



と、いかんいかん。

天津飯は確かに美味いが、一気に食い切るもんでもない。

そもそもそうしない様にサイドメニューの餃子や中華スープがあるんだ。


そうだな、ここは落ち着くためにも中華スープ。

こいつで口の中をリフレッシュだ。


・・・しかし、きっとこのスープも美味しいんだろうな。

天津飯があそこまで美味しいんだ。

スープも美味しいに決まってる。


どれ、いただこうか・・・。


―――お、シンプルな美味しさのスープだ。こう、ザ・中華スープ。普通に美味しい、しみじみしんみり。


うん、良いスープじゃないか。

口の中をリフレッシュさせてくれると同時に、どこか優しい気持ちにしてくれる。

口直しに最適なスープだな。


この飲んだ時の味はもちろんだけど、中華スープの何とも言えないこの香り。

これ、私結構好きなんだよな・・・。


嗅げば「あ、中華スープだ!」てなるけど、それ以外の表現の仕方がないような、そんな香り。

これがまた私の食欲を増進させてくる。


・・・何だ、口直しに、食欲を落ち着けるためにスープを飲んだというのに。

食欲を増進させるんじゃ意味ないじゃないか。


まぁ、美味ければ何でもいいか。

それにスープを飲むことでこう、少し落ち着きが取り戻せた。



となれば、次は餃子だな。

このまま天津飯に戻っても良いが、ここいらで餃子を1つ味わっておきたい。

だってこの餃子、絶対に美味しいぞ。


もう焼き面がぱりぱりのパリッパリ。

そんな餃子を今回は・・・酢胡椒で。


酢を入れて、胡椒を入れて。

後は餃子をつけて、いただきます。


―――あー、なるほどなるほど。美味しい、とても美味しい餃子です。焼き面パリパリ、そして何より種がジューシーすぎる!


皮は薄め、でもそれが良い。

今まで食べてた餃子はモチモチした皮が美味かったが、この薄い感じも凄く美味しいじゃないか。

何より焼き面のパリパリ加減、こいつがダイレクトに食感として伝わってくる。


そんなパリパリ、これを味わった次に来るのは。

ジューシー、圧倒的な肉感というか餃子感。

それが溢れんばかりに出てくる、この餃子の種。


凄くパンパンに詰まってるわけでもないのに、何故か噛むたび美味しさがあふれ出てくる。

見た目とは裏腹に、これは相当なガツン系餃子だぞ・・・!


それをサポートするのは、この酢と胡椒。

こいつらがさっぱりと、それでいてどこか香ばしく餃子を仕上げている。


パリッとした皮からのあふれ出る旨味と酢と胡椒のコンビネーション。

ボクシングでいうと右フックから間髪入れず左でストレートを食らった気分だ。


私の食欲はこの凶暴な美味しさの猛攻に耐え切ることができない・・・!


1つ食べただけじゃ収まらないこの美味しさ。

これは、ええい。

もう1個も行くしかない。


―――うん、美味しい。餃子って、まるで人の幸せを包んだような味がする。


そして、餃子には確実に店の歴史と手腕が詰まっている。

それを1口で頬張れる私は、間違いなく幸せ者だ。



ああ、美味い天津飯に美味い餃子、そしてそれを引き立てる中華スープ。

良いね、これは凄く良い昼飯じゃないか。


今私は、思い切り昼食を満喫している気がする。


大盛の天津飯に食らいつき、思ったように餃子を食べて。

中華スープで一息入れる、正に完成された昼食。


がっつり系を食べたいという希望も叶い、しかもそれがべらぼうに美味しいときた。

やはり歩いて店を探す、これは大正解なんだ。

今まさに、私はこの店と、この料理との出会いに感謝している。


後は感謝をしながら、唯、飯を食い進めるのみ。

ガツガツ食って、もりもり元気をつけるんだ。


美味い中華屋には、人を元気にする何かが潜んでいる・・・。




「ありがとうございました!」


うーん、満足満腹。

美味しい中華料理、思い切り堪能しました。


しかし、今思うと餃子を食べた後に営業・・・大丈夫、じゃないな。

仕方ない、後で消臭剤飲んどかないと。

あれ不味いから嫌なんだよなぁ。


ま、でも仕方ない。

ついでに煙草も吸うし、その消臭目的もあるし。


さ、煙草で一服一服・・・。


・・・ふぅー。

美味い中華を食った後の煙草。

何だかいつもより少し、力強い気がしてきた。


さて、煙草を吸い終わったら消臭剤を飲んで。

また営業へ向かうとしますか。


美味い飯にしっかり元気をもらったし、残りもしっかり頑張るとしよう。


願わくば、次も美味い店に会えるように。


主人公(男)・魔術師。消臭剤を美味しくしようと頑張っているが、いまだ成果は出ない。


「中華食堂 ザ・キング」・古びた外見とは裏腹に、出てくる料理の美味しさは本物。店主と奥さんの2人で経営している。

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