いよいよ本命、ホッケの身を箸で掬おう。
ブクマ100人登録!とか叫んでたら一瞬で99人に。
ワロタ・・・わろた・・・。
そして遅刻、すいません。
今日は快晴、凄く良い天気だ。
気温も高すぎず低すぎず、非常に過ごしやすい。
こんな日は仕事を忘れて、パーッと飲みたいところだが・・・。
残念ながらこんな日も仕事なんだよな。
というか私、基本不定休だし。
そろそろ私も週に2日ほど休みを固めた方が良いんだろうか。
だが個人営業の強みはいつでも仕事ができる、そこだからなぁ。
ギルドとかが休んでる時に営業できる、そのメリットは非常にでかい。
そこから広がっていったお客さんも多いからな。
さて、もうすぐ依頼先・・・と言っていいかどうかわからない、あの画家の爺さんの所だ。
竹筆はしっかり梱包、高級感あふれる木の箱を用意。
その中に大中小の筆をそれぞれ入れておいた。
これを受け入れてくれるかどうか不安ではあるが。
ここら辺では出回っていないし、新しい筆なのは間違いないはず。
さぁ、気合を入れる必要はないかもしれないが。
竹筆を信じて向かうとしましょうか。
―――――――――――――――――――――――――
サッサッサッ・・・。
「・・・あのー。」
「・・・。」
サッサッサッ・・・。
唯々筆の音がするのみ。
聞こえてる・・・よな?
聞こえてないんだったら凄い集中力だが。
聞こえてるのに無視するのは余りよろしくないと思うんだが。
「すいませーん。筆持ってきたんですけどー。」
「・・・。」
お、筆の音が止まった。
「見せてくれるか。」
「ええ、こちらです。どうぞ。」
竹筆3本セット。
その中でも制作者のおばあさんこだわりの3本だ。
さぁ、これを見てどんな表情をする、爺さん・・・!
「・・・。」
分からん。
ポーカーフェイス上手すぎだろう、この爺さん。
感動してるのか落胆してるのか全く分からんぞ。
「ええと・・・それ、竹筆という筆でして。竹でできてるんですが筆の様に使える品でして・・・。」
「そうか。」
そうか、じゃなくて。
結局これは良いのか、それとも悪いのか。
「・・・。」
お、なんだ、筆をもって。
眺めてる・・・眺めてるよ。
じっくり見てる。
これはまさかのOKか?
「・・・。」
いや、筆をおいてため息をついた。
これはOUT・・・?
と思ったら次小サイズの筆を見だした。
あー、なんだこの空気。
やっぱりこの爺さん、苦手だな。
―――――――――――――――――――――――――
「では、失礼します。」
「・・・。」
はぁ、本当に返事しないな、この人。
しかし一応依頼は達成だったし、良かったと思うことにしよう。
報酬もしっかり良い額貰えたし、懐が温まったのは間違いない。
ただ、もう一度この爺さんの相手をしてくれと言われたら・・・それはNOだな。
もう今後この爺さんと関わることは無いだろう。
竹筆を見てたと思ったら、いきなり立ち上がって報酬渡してくるだけだったし。
何だろう、何かの天才って何かが欠如しているんだろうか?
何というか、もやもや感が凄い。
このもやもや感、今回の仕事の事、そしてきっと。
―――腹が、減ってるからだろう。
うん、こんな日は美味い飯を食うに限る。
今の営業で今日の仕事は終わりだし。
酒でも飲んでもやもやを吹き飛ばそうじゃないか。
となれば、とりあえず飲食街へ向かうとしよう。
良い店を己の足で探すんだ。
到着、飲食街。
今日は酒、飲まずにはいられない!
という訳である程度店を絞って探そうか。
夕方にはまだ少し早いこの時間でも、飲食街ならいい店がきっと見つかるはず。
パパっと探してグビッと行こうじゃないか。
さぁ、歩こう。
腹が限界になる前に店を見つけるんだ。
食堂。
エールを飲みながらボリュームのある飯を食う・・・それも悪くない。
いや、でもエール以外にもいろいろ飲みたい所。
今日はパスだな。
レストラン。
お洒落なワインと料理で乾杯・・・そんな気分でもない。
パス。
屋台。
あ、屋台も良いけど・・・どっちかっていうと、今は居酒屋の気分。
という訳で居酒屋だ、居酒屋を探せ。
この時間からやっていて美味しそうな料理を出す居酒屋。
きっとそんな店もどこかにはあるはずだ。
どこだ・・・どこにある。
五感を研ぎ澄ませ、落ち着いて探すんだ・・・!
「いらっしゃいませ!御一人様ですか?」
「はい。」
「かしこまりました!只今お席にご案内しますね!」
あの後通し営業をしている店を見つけ、入店。
その名は「酒処 せんしゅう」。
ふんわりとしたその名前に惹かれて、ふらふらっと入ってしまった。
そんな店で、元気よくお出迎えしてくれたのは身長の小さい男の子。
金髪で目がくりっとしてて、凄く素直そうな子だ。
これを人はショタと呼ぶんだろうか?
そんな子に案内されて、カウンターに着席。
木でできたカウンター席、良い感じじゃないか。
というかこの店がこう、はかとなく人の家のような雰囲気というか。
どこかほんわかとした雰囲気、落ち着くこの感じ。
カウンターだけじゃなく、他のテーブルや椅子も、果てはこの店まで木でできている。
そしてまた、それらの年季の入りようが凄い。
きっとここで長く営業し続けたんであろう、歴史の勲章が傷や汚れとして色々なところに刻み込まれている。
「どうぞ!こちらメニューです!」
「ありがとう。」
お礼を言うと嬉しそうに下がっていく男の子の給仕。
きっとその層の人には効果抜群間違いなしのエンジェルスマイル。
私の今日の疲れも少しだけ癒された。
と思ったら、また戻ってきたぞ。
「あ、あの、お飲み物は何にしましょうか・・・?」
恥ずかしそうに上目遣い。
これも特定の層には効果抜群だろう。
「ではエールをお願いします。」
「かしこまりました!」
そう言うと恥ずかしそうな顔から一転。
再びエンジェルスマイルに戻り、厨房の方へ。
さ、エンジェルスマイル2回も堪能したし。
この店のメニューを見てみるとしよう。
腹も減ったし喉も乾いたからな。
さぁて、どんなメニューが並んでいるのか。
~スピードメニュー~
・ポテトサラダ
・エダマメ
・トマトの酢漬け
うん、いたって普通のメニュー。
でもこういうメニューから、やはり1品行っておきたい所。
「お待たせいたしました!エールとお通しになります!」
おや、お通しがあったのか、ここ。
・エール
金色シュワシュワ炭酸飲料。1人酒飲み宴会のトップバッターはコイツじゃないと。
・お通し タイのあら煮
小鉢に上手そうな魚の身がふんわりと。これをお通しで出しちゃうのか、この店。絶対美味いぞこれ。
丁度いい、残りのメニューはこれをつまみながら決めるとするか。
では、いただきます。
さ、まずはエールをグビっと行かないと。
今日も1日お疲れさまでした、乾杯!
―――ごくっと、喉を通り過ぎるたびに爽快感。こいつはもう、ごくごく行っちゃう。
ゴクッゴクッ・・・ぷはぁ。
我ながら今の飲みっぷり、凄く良かったんじゃないか?
思い切り飲んだ後の爽快感、エールはやっぱりこうでなくちゃ。
しかし、エールって本当に、何故最初に飲んじゃうんだろうか。
この爽快感が理由か?
何となく、とりあえずエールで。
そうなっちゃうのが不思議だよなぁ・・・。
と、エールで1人宴会の火蓋を切ったら。
いよいよこの美味そうなあら煮、コイツの出番だ。
箸でつつくと・・・ほら。
思った通り、コイツ凄く柔らかい。
ふわっと解れる魚の身、それだけで凄く美味しそう。
そんな魚の身を箸でつまみまして。
早速食べてみようじゃないか。
―――うーむ、美味い。この一口だけで分かる、この店は大当たりだ。美味い酒に美味い魚、それだけで幸せになる私がいる。
これは素晴らしいお通し。
この店の歴史、料理の腕が思い切り詰まった一品だ。
この料理を本当にお通しとして出してしまって良いのだろうか。
肴をつつきながら飲むエール。
うん、控えめに言って最高だ。
更に煮込みの加減も素晴らしいが、その味もまた最高。
解れる魚の身から、優しい煮込みの味がスルッと溶け出してくる。
魚の骨、その隙間の身なんて、もう絶品・・・!
他のメニューを決めなければいけないのに、ついついこの魚を食べることに夢中になる私がいる。
エールを飲みながら美味い魚、今日仕事を頑張った甲斐があった・・・。
「お待たせ致しました!ショウチュウ<芋ノ花>のロック、ホッケの開き、鳥せせりの串焼きになります!
お、来たか。
魚もとい肴をつつきながら選んだメニュー。
どれも美味そうじゃないか。
ショウチュウ<芋ノ花>のロック
透き通った氷に透き通った液体。ガラスのグラスによく映える。氷が大きく、そしてしっかり透き通ってるのは個人的にポイントが高い。
ホッケの開き
あら煮が美味しかった、ならば魚のメニューにハズレはないだろうと思い選択したが・・・美味そうだ。これも当たりだろう。
鳥せせりの串焼き
色々あった鶏肉の串焼き、そのせせりをチョイス。しっかり焼かれたコイツは塩でいただこう。
さ、残り少ないエールを飲み干して。
ショウチュウ片手にいただきます。
先ずは・・・串焼きから行こうか。
この美味しそうなせせりは熱い内に食べないとな。
さぁ、串から思い切りガブッと。
―――美味い鶏肉、正に肉だ。こういうのをガブッと行くの、何だか少年に戻ったような気がする。
凄く美味しい串焼き。
塩の味もばっちりせせりに合っている。
淡白なのに、肉を食ってるって感じが凄いこのせせり。
プリッとしたこの感触が、もうたまらないんだ・・・!
せせり、それも串焼きでここまでうまく出せる店。
飲食街でも中々そんな店ないんじゃないか?
せせり、鳥の首の部分。
その美味さに私も首ったけ、なんちゃって・・・。
この美味しさを堪能したら、すかさずショウチュウですよ。
芋ノ花、初めて飲む銘柄だが、果たして。
こう、一気に飲むんじゃなく、少しずつ口に入れる感じで・・・。
―――トロっとした甘み、それでいて切れ味も鋭く。これは良い酒、美味いじゃないか。
ロックの冷たさもこの美味しさを後押ししている。
多分これ、お湯割りとかにしたら甘さがもっと華やかになるんじゃないか?
いや、ロックだからこそ。
今私はこの鋭い切れ味を味わえているのかもしれない。
とろける甘みの先には鋭い刃、うかつに触ると火傷しそうな、そんな酒。
でもそんな酒、私嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
芋のショウチュウ、クセのあるこの感じもまた私好み。
もし今度、寒い日にこの酒に出会ったならば。
次はお湯割りでいただきたい。
また飲みたくなる、これは美味い酒だ。
そんな酒で口の中を流したら。
お次はいよいよ本命、ホッケの開き。
この大きいホッケ、その見た目がもうインパクト抜群。
これはもはや箸でつつくんじゃない、身を思い切り掬って食べるような大きさだ。
まずは真ん中の骨、ここをぐっと引っ張って・・・。
そしてその骨についている薄い身、これをいただく。
―――ああ、美味しい。このパリッとした食感、魚のうま味。大きさに違わぬ大きい美味しさ。
うん、これは間違いなく美味しいホッケ。
これを酒の肴につまめる私、きっと今この瞬間、誰よりも幸福なんじゃないだろうか。
おっと、骨を噛んでしまったが・・・。
ええい、そのまま食べてしまえ。
ある程度骨についた身を食べ終わったら。
いよいよ本命、ホッケの身を箸で掬おう。
おお、身が魚の汁で輝いている。
この光景、ホッケの開きでしか見られない、正に絶景だ。
さぁ、箸で掬ったらこいつをそのまま口の中へ・・・。
―――美味い、あら煮を食べて知っていたが、やはりこの店魚が美味い。焼いても煮ても美味しい魚、素晴らしいじゃないか。
ホッケ、素晴らしい魚。
ほんのり塩味がまた素晴らしいんだ。
こう、食べ勧めるほどにもう1口欲しくなっていくというか。
美味い魚を思い切り堪能してる気がする。
しかも魚の身、こいつが凄くほくほくなんだ。
それでいてほぐれて、火加減抜群。
何というか、酒も良いがライスも欲しくなってくる。
こんな美味い魚を食べちゃあ。
美味い酒も進んでしまう・・・。
―――ああ、肴を食った後のこの酒よ。口の中、華やかな香りが際立ってくる。
美味い酒に美味い魚。
これを堪能できるこの幸せ。
今から仕事の人、すいません。
私は今、酒と肴で乾杯してます。
しかし、こうなってくるとガツンとしたものが欲しくなってくる。
こう、主食系が。
何かないかな・・・。
「お待たせいたしました!焼きおにぎりです!」
給仕君、いつもありがとう。
その嬉しそうな表情、見てるこっちまでほんわかしてくるぞ。
・焼きおにぎり
香ばしく焼かれたライスの塊。表面が茶色く焦げているのがまたそそるんだ。香ばしいショウユの香り、たまらない!
さぁ、思い切り齧り付こうじゃないか。
こいつは箸で行くよりも、手で持った方が良いな。
さ、掴んで・・・熱っ。
さすが焼きたて、アツアツだ。
でもその熱さ、嫌いじゃないぞ。
こう、端の方を上手く持って・・・良し。
ライスの塊に思い切り齧り付け!
―――パリっと、香ばしい音が口に広がる。中はアツアツもっちり、外はパリッと。ショウユの加減がマーベラス。
これは美味しい、美味しいぞ。
焼きおにぎり、その名の通り焼いたおにぎり。
なのに何故ここまで美味しくなるのかは分からない。
ショウユを塗ってライスを焼く。
しかしきっと、その工程に店主のこだわりが詰まってるんだろう。
じゃないとここまで美味しくはならないはずだ。
しかも嬉しい事に、焼きおにぎりは2つセット。
それも結構大きいサイズ。
思い切り齧り付いて美味いと思う。
それと同時に、まだまだ齧り付けることに感謝の念が湧いてくる。
でも・・・これ食っても、まだ何か入りそうだな。
そうだな、これを食ったら更におにぎり追加しちゃおう。
酒も・・・頼んじゃうか。
芋のショウチュウでライスを食べる、それもまた良いだろう。
今この場は1人宴会、誰に何をとがめられることもなし。
さ、焼きおにぎり食べきったらまたホッケとせせりだ。
「ありがとうございました!」
あー、食った食った。
美味い飯を食った後のこの満腹感と満足感。
これぞ美味い飯を食った後の醍醐味よ。
さて、そんな満足感に包まれながら。
ここで煙草を一服・・・。
吸って、吐いて・・・。
ふぅ、良い余韻だ。
特に酒を飲んだ後だからか、煙草が余計美味しい気がする。
さ、家に帰るか。
家に帰って・・・改めて晩酌も良いかもな。
つまみでも買って帰ろう。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。家に帰って晩酌開始。二日酔い。南無。
ショウチュウ<芋の花>・最近開発されたショウチュウ。お湯割りで飲むのが一番人気。寒い日には良く出るお酒。