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中でも絶対にガツン系のメニュー、ガーリック炒飯。

ちょっと無理やりだった感がある回です。

新しい朝が来た。

希望の朝かどうかは知らないが・・・まぁ、新しい朝なんだ。


しかし、残念ながら新しい筆の事については何も進んでいない。

色々調べたり、知り合いに当たっては見たんだが・・・。

そのどれもがオーソドックスな筆だったり、高機能な筆でしかなかった。


新しい筆・・・新しい筆とはいったい・・・。


と、まぁ早速新しい筆には行き詰ったので。

今日は普通の営業だ。

確か・・・農家さんだったな。


前に行った事のある農家さんから手紙が届いたんだ。

何でも新しい農具を加工してほしいとの事だった。


そんな訳で・・・とりあえず起きて。

シャワーを浴びて、コーヒー飲んで出発だ。


あー、新しい筆・・・筆とはいったい・・・。




「やぁ、魔術師さん。」


「どうも、いつもお世話になってます。」


さて、やってきたのは老夫婦が営む農園。

おお・・・色んな作物が実をつけている。


「ほほ。魔術師さんの加工した道具のおかげでね。凄く作業が楽になったのよ。ありがとうねぇ。」


「いえいえ、それが仕事ですので。でもそう言っていただけると嬉しいです。」


「そうじゃそうじゃ、後で野菜包んでやるからな、持っていくと良い。」


「いえ、そんな・・・。悪いですよ。」


「良いから良いから。持っていくと良い。」


「そうですか・・・ありがとうございます。」


参ったな、野菜貰えるのはありがたいんだが。

私料理できないぞ。


「あ、早速加工の方やっちゃいますね。」


「お、そうか。こっちに来てくれ。・・・少し量が多いんだが、大丈夫か?」


「ああ、これくらいでしたら全然問題ありません。料金も前と同じで大丈夫です。」


「そうか、じゃあ頼むぞ。」


「ええ。パパっとやっちゃいます。」


―――――――――――――――――――――――――


ふぅ、これで終わりだ。

結構量あったけど・・・うん、時間は前とほとんど変わってない。

これは私が成長した証なのかもしれないな。


「魔術師さん、調子はどうだい。」


「ああ、今終わったところです。後は動作確認だけですね。」


「お、そうかい。なら一服どうだ。ばあさんがお茶を入れてくれたんだ。」


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」




「いやぁ、すまんな魔術師さん。あの量大変だったろう。」


「いえ、大丈夫です。これでも一端の魔術師ですので。」


「そうかそうか。ははは。」


「お茶、どうぞ。」


「あ、すいません、いただきます。」


お茶をズズっとな。

・・・うん、相変わらずここのお茶は美味い。

仕入れが不定期なのが残念なくらいだ。


「魔術師さんは、最近忙しいのかい?」


「まぁ・・・ぼちぼちといった所でしょうか。」


「そうなのかい。いや、最近色んなところで魔術師さんの名前を聞くからなぁ。今度の祭りも魔術師さんが主催するんだろう?」


「あれは・・・いろいろありまして。まぁ最近は良い感じに忙しいといった所でしょうか。難しい依頼とかもありますが。」


というか祭りの話、もうここまで広まっているとは。

・・・まぁ、もうすぐ開催だしな。

それも当たり前か。


「難しい依頼ねぇ。魔術師さんで難しいってんなら、わしらじゃ絶対無理かもしれんな。はは。」


「いえ、その内容が筆に関するものでして・・・見当が全くつかなくて。」


「筆ねぇ。私たちが子供の頃は、竹筆を良く使ったわねぇ。」


竹筆だと?

なんだそれ、聞いたことない。


「それは一体どんなものです?」


「その名の通り、竹でできた筆だ。わしやばあさんがまだ小さかったときはそれを使って字を書いたり、絵をかいたりしてたんだ。」


「竹なのに文字が書けるんですか?」


それは面白い。

これ、新しい筆のお題にピッタリなんじゃないか?

話を聞く限りこの周辺でしか使ってなかったみたいだし。


「ああ、意外に墨を吸うんでな。この辺りでは一般的だったんだが・・・もう作ってるところが無いんじゃないか?」


しかしそう上手くはいかない、か。


「いえ、私のお友達が作っていますよ。欲しいんだったら場所教えましょうか?」


上手くいった。

おばあさん、ありがとう。


「是非お願いします。」


―――――――――――――――――――――――――


あの後場所を聞いて、世間話をした後。

何と爺さんが大量に野菜をくれた。


この大量の野菜・・・しばらく朝ごはんは生野菜になりそうだな。

トマトとかならそのまま丸かじりでいいだろう。

キャベッジ達は・・・千切りでいいか。


他にも嬉しい事にメロンなどの果物もあるんだよな。

こいつらは晩酌のお供だ。


さて、とりあえず今日の営業は終わった。

後は家で加工をするだけだが、その前に。


―――腹が減ったし、飯を食いに行こう。


良い仕事をして今後につながる良い話も聞けた。

となれば後は美味い飯、こいつを食わなきゃ始まらない。


さ、パパっと飲食街へ向かいますか。




パパっと来たぞ、飲食街。

今日私が求める料理は・・・何だ?


麺料理は最近食ったしな。

やはりライス、主食をライスに置いた飯を食いたい。


となれば定食、丼か。

うーん・・・。


とりあえず歩いて店を探すか。

ここで悩んでいても仕方ないし、どうせきっと決まらない。


さーて、どんな店にしようかなっと。



レストラン。

あ、準備中か。

仕方ない、パスだ。


居酒屋。

居酒屋かぁ。

今は酒飲みたい気分じゃないし・・・うん、パス。


ラーメン屋。

前に食ったからな、ラーメン。

美味しいのは知ってるんだが、今日はパスだ。


こうなってくるとやはり候補としては。

食堂、なんだろうなぁ。

定食も丼も網羅してるだろうし。


うん、そうだな。

今日は食堂に入ろう。

どこか適当な食堂見つけて、そこで美味い料理を食おう。




「いらっしゃいませ!御一人様ですか?」


「ええ。」


結局あの後少し彷徨ってから見つけたこの店。

「飯処 ソウエイエン」、外見はいたって普通だった。


そして給仕が勿論可愛い。

13、4歳くらいだろうか。

恐らくここの店主の家族なんだろう。


お手伝い、えらいぞ。


「ではこちらのお席にどうぞ!」


案内されたのはすぐ近くのカウンター。

お冷は・・・テーブルの上に置いてあるタイプか。


明るい木目調のカウンター席、活発な感じのするこの雰囲気。

うん、普通に良い食堂だな、ここは。


・・・おっと、まだ飯を食っていないのに決めつけるのは早計だったか?

でも私が入った店、ありがたい事に今まで全部当たりなんだよな。


きっとここも当たりの店、そんな感じがするぞ。

その為にもさっさとメニューを決めないとな。


さて、メニューは・・・。


・野菜炒め定食


・ミックスフライ定食


・コロッケ定食


コロッケ定食、そんなのもあるのか。


・カツ丼


・親子丼


そしてここは丼ゾーン。

うん、いたって普通の食堂だが。


他には・・・お。


・炒飯


・レタス炒飯


・ガーリック炒飯


炒飯、炒飯か。

良いじゃないか、炒飯。

ライス物の王道、丼と並ぶその存在。


中でも絶対にガツン系のメニュー、ガーリック炒飯。

これは・・・決まりだな。


ただ炒飯だけってのも何だかだし・・・ほかに何か1品頼むか。

何にしようか、やっぱり餃子か?

炒飯には餃子という鉄板で行くか、それとも・・・。




「お待たせいたしました!ガーリック炒飯の大盛と水餃子です!ごゆっくりどうぞ!」


来たか・・・うん?

一見普通の炒飯っぽい・・・いや。

近づくとガーリックの香りが凄い。


・ガーリック炒飯大盛

一見何の変哲もない炒飯、しかし漂う香りがガーリック。これは・・・何とも楽しみな炒飯じゃないか。


・水餃子

炒飯には餃子、その餃子を敢えて水餃子にしてみた。1皿で水餃子とそのスープ、副菜と汁物をカバーできる素晴らしい作戦だろう?


では、いただきます。



さぁ、意を決して行ってみようか、この炒飯。

ガーリックの香りが漂ってて、美味そうだ。


さて、スプーンを入れて・・・うお。

漂う、漂うぞガーリック。

湯気とともに凄い香りだ。


この後人に会う予定はないし、良し。

行くぞ、ガーリック・・・!


―――美味い、凄く美味くてガーリック!この炒飯、確かにガーリック炒飯だ。ガツンと来る香りと美味さに、私の食欲がぶん殴られた・・・!


これは美味い。

そして、本当にガーリック。

とんでもなく、強烈な美味さだ。


ガーリックの文字が思い切り飛び出るくらい、ガーリックな炒飯だ。


この炒飯、凄く美味しくはあるが。

これを食べた後は・・・ほかの人には会えんな。

この後何の予定もなくて良かった、私。


しかし、本当に凄いガーリックだ。

口、鼻、全ての穴からガーリックが侵入してくる。

一見普通なのに、いったいどこにガーリックが隠れているんだろうか?


とりあえず2口目。


―――うん・・・うん!ガツンと来るこの美味さ、これは良い炒飯だ・・・!


2口目、からの3口目。

何だろう、食べる速度が加速していく。

これは・・・ガーリックの力?


食うほどに体がガーリックに支配されるような気がして。

そしてその支配に食欲が完全に降伏している。

美味い、強烈な美味さを誇るこの炒飯。


そしてこの炒飯。

少しピリ辛なんだな。

でもそのピリ辛さ、こいつがまたガーリックに凄く合う。


こんな炒飯があるなんて、私知らなかった。

基本的な炒飯で満足していた今までの私は何だったんだろうか。


気分はもう、絶好調。

ガーリック臭?それがどうした。

そういわんばかりにガツガツ掻っ込む。


だって、臭いを差し引いてでもこの炒飯、美味しいんだもの。

食べ勧めるほどにその強烈な美味しさに魅了されていく私・・・。


―――ああ、美味い、美味い、美味い!ガーリック炒飯、最高だ!


しかもこの炒飯。

ガーリックが抜けてても絶対に美味い。


しっかりパラパラ、ライスが良く炒められてて。

ネギと卵のシンプルな具材。


これだけで美味しいのに。

具材にはガーリックがしっかり絡まって。

そしてピリ辛の素、輪切りのトウガラシ。


美味しくて強烈でピリ辛。

ガーリックの力だろうか、食べ勧めるほどにテンションが上がってくるぞ!


普通の料理屋じゃ絶対にこのガーリックの量は出ない。

今度から、強烈な炒飯が食いたいときは此処にこよう。


人に会えなくなる禁断の炒飯、しかし食べる人を魅了する魔性の炒飯。

ガーリック炒飯、素晴らしい・・・。



と、炒飯が美味しいのは良い事だが。

ここで一旦水餃子だ。


辛さがどんどん蓄積して、ガーリックと融合した口の中。

何というか、凄いことになっている。


これは水餃子で鎮圧せねば・・・。


そんな訳で、スープから。

どれどれ・・・。


―――優しい旨味にあふれたスープ。辛さとガーリックに打ちのめされた私の口に、これは凄く嬉しい美味しさ。


美味い、するっと入ってくるこのスープ。

ズズっと美味くて、凄く優しい。


この優しいスープ、やはり水餃子を頼んだ価値があった。

美味い、しみじみ美味いこの味。

強烈な炒飯を食っているからこそ、尚の事このスープが美味しく感じる。


いやこの味、この美味しさ。

これ病気の時とかに飲んでも良さそうだ。

弱ってる体にこの美味しいスープ、何だか想像しただけで・・・。


さて、スープを味わったら、次。


この水餃子本体を頂かないと。


スープがここまで美味しいんだ、となれば本体も凄く美味しいはず。

さ、スプーンで掬いまして。

いただきます。


―――おっほ、はふ、美味い!スープの予想通り、本体も凄く美味しいじゃないか。優しい味がしっかり染みてるぞ。


ちょっぴりアツアツだった。

でも凄く美味しいぞ、水餃子。

焼き餃子とはまた違ったこの魅力、じっくりと美味しい。


皮が凄いモチモチ。

しかもスープを纏ってるからか、焼き餃子とはちょっと違う感じ。

皮にコシがあるといえばいいんだろうか?


そして中の種、こいつも凄く美味しいんだ。

噛めば噛むほどジュワっとあふれる旨味のスープ。


スープの優しい味、それよりちょっと力強い、そんなスープがあふれ出るんだ。


この水餃子。

見事に副菜とスープ、その両立をしてくれた。

口の中のガーリックとピリ辛が完全に鳴りを潜めたぞ。



そんな訳で、再びガーリック炒飯だ。

ガツガツ行こう、ガツガツと・・・あ。


―――また、改めて美味しい。


ガーリックとピリ辛が水餃子で0に戻ったからか、強烈な美味しさがまた私を襲う。

これは良い、素晴らしいマッチポンプじゃないか。


強烈なガーリック炒飯を食べることで水餃子の優しさが染みて。

その優しさに癒された後、改めての強烈なパンチ。

それがまた、たまらなく美味しい。


この永久機関、一度食えば止まらない、歯車は回り続ける。

こんな美味い料理を、それを出す店を発見してしまう私が恐ろしいくらいだ。


スパートをかけ、ガツガツ掻き込む私。


美味い炒飯。

美味い水餃子。

そこにあるのは確かな幸せ。


強烈な炒飯と優しさにあふれた水餃子、確かに、確かに。

思い切り、堪能しました。


―――ごちそうさまでした。




「ありがとうございました!」


お会計まであの可愛らしい給仕さん。

思わず微笑んでしまった。


しかし、大満足で満腹だ。

この幸せな気持ちは、美味い料理をたらふく食ったときにしか味わえない。


そしてそんな幸せに浸りながら吸う、この1本。

この煙草の一服が、また素晴らしいんだ。


・・・ふぅ。

だが、ガーリックが煙草を邪魔してくる。

まぁそれでも煙草、美味しいんだが。


というかこれ、本当に今日はこの後人と会えないな。

うん、とっとと家に帰るとしよう。


願わくば、次も美味い店に会えるように。

主人公(男)・魔術師。翌日、朝ごはんの代わりにトマトを丸かじり。甘くておいしかったとの事。


ガーリック炒飯・その名の通り、というかそれ以上にガーリックを使ったメニュー。実は店の密かな看板メニューでもある。

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