これは食べた人が笑顔になる、そんなエビマヨだ。
感想&評価ありがとうございます!励みになります!
嬉しい、嬉しい・・・。
「さて、次の依頼先はここ・・・だよな。」
晴れ時々曇り、そんな今日の天気。
温度は過ごしやすく、何となく麗らかな気分になる。
そんな日の営業、今日は此処がラスト。
しかも今日の営業、殆どが何かしらの依頼を受注しているという順調っぷり。
最近はほんと、懐が潤って助かるなぁ。
おかげで美味い飯も色々食えるからありがたい限りだ。
・・・と、そんなことはどうでも良くて。
目的地は・・・うん、ここで間違いない。
ジャズバーの内装についての打ち合わせだったよな、確か。
ま、とりあえず入ってみよう。
「ごめんくださーい。」
―――――――――――――――――――――――――
「いやぁ、ようこそ魔術師さん。今日はよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそご指名いただきありがとうございます。精一杯頑張らさせてもらいますよ。」
「それは頼もしい。是非お願いします。」
さて、やってきたのは・・・ウッド調、それも明るい感じの店内のバー。
そして向かい側にはステージ。
あそこで吟遊詩人が詩を歌ったり、演奏会などをする予定との事。
しかし、雰囲気が凄く明るいな。
こう、お洒落なカフェにいるような気分。
この雰囲気だと・・・もう少し店内を暗めにした方が良いんじゃないだろうか。
じゃないとステージへの注目が散らかってしまう気がする。
「色々考えたんですが、なんかイメージ通りに行かなくて・・・。どうでしょう。」
「そうですね・・・。主な営業は夜ですか?」
「ええ、その予定です。」
これはインテリアだけじゃなく、店内の色から変更した方が良さげだ。
ただ・・・その分お金はかかるが。
とりあえず話をしてみるとしよう。
「でしたら、まず店内のイメージをですね・・・。」
「いやぁ、ありがとうございます、魔術師さん。おかげで方向性が見えてきました。」
「いえいえ。」
「そうですよね、演奏とかがあるならやっぱり特別感というか、ワクワク感が無いと・・・。一度この案をもとにイメージを練り直してみます。その後改めて発注をかけさせてもらいますね。」
「ありがとうございます。」
良し、今日の営業コンプリート。
しかも最後は内装の依頼、これは嬉しい。
この広さの内装なら、結構儲かりそうだ。
あ、もちろん全力で取り組むぞ。
お金をもらっている以上、生半可な仕事はできないからな。
「あ・・・そういえば魔術師さん、楽器の演奏とかはできるんですか?」
「私ですか?いえ、全然・・・。かろうじてリコーダーが吹けるくらいですね。ははは。」
「そうなんですか?結構何というか、ギターとかやってそうなイメージがありましたが・・・。」
それはどんなイメージなんだ?
でもギターか。
かっこよく演奏出来たら、気持ちいいんだろうなぁ。
・・・果たして私にギター、それは似合うのだろうか。
「もしよろしければ、一回ギター演奏してみます?丁度楽器がそこにあるので。」
「え、いやぁ・・・。」
「大丈夫ですよ、絶対似合いますって!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「まぁまぁ!」
何だいきなり。
楽器の事になったらいきなり押しが強くなってる。
これは、断れない雰囲気か・・・?
―――――――――――――――――――――――――
「いやぁ、すいませんでした。つい楽器の事になると熱中してしまって・・・。」
「いえ、大丈夫ですよ、はは・・・。」
ああ、疲れた。
軽く触るだけの予定が、がっつりとした指導に早変わり。
しかも勢いよく指導するから、中々断りにくかったし。
内装の相談、まさかそこでギターの指導が始まるなんて誰が予想できるだろうか。
一通りギターの基本を学んだところで何とか正気を取り戻してくれたが。
指が、指が痛いぞ、ギター。
おまけに、凄く。
―――腹が、減ってきた。
疲れたからか、もともと腹が減っていたのか。
いや、どうでもいい、どちらでもいいな。
とりあえず飯を食わねば。
「では、今日はこれで失礼しますね。」
「ええ、本当にすいませんでした・・・。あ、でももしまたギターが触りたかったら。」
「いえ、大丈夫です。では。」
「あ、はい。」
さて、飲食街へ向かおう。
腹の減りがどんどん大きくなって来た。
到着、飲食街。
さぁ、今日は何を食おうか。
この前は割烹で贅沢したんだよな。
あの時のうに丼、ああ・・・想像しただけで腹が減る。
おっと、いかん。
この前はこの前、今日は今日。
今日食べる料理を探さないと。
早く探さないと、お腹と背中がくっついてしまいそうだ。
という訳で、探索開始だ。
居酒屋。
うーん・・・居酒屋かぁ。
酒飲みたい気分でもないんだよな。
焼肉。
あ、良さそ・・・でも閉まってる。
仕込み中なのか?
無念。
レストラン。
ここはコース料理のみか・・・敷居が高いな。
パスだ。
さぁ、こうなるとやはり目的地としては。
食堂、ここに収束するんだろう。
屋台でもいいが・・・いや。
今日は食堂だな、うん。
適当な食堂を探してそこで飯にしよう、とか言ってたら。
「中華食堂 ミカイン」、中々良さそうな店があったじゃないか。
すぐに座れそうだし、うん。
中華で食堂、食欲にガンガン訴えかけてくる。
ここだな、決定。
「いらっしゃいませ!そちらのお席にどうぞ!」
お、美人な給仕・・・チャイナドレス、だと?
何というか、中々攻めてる店だな。
普通の町中華でチャイナドレス、そんなの中々見ることができないぞ。
見た目麗しい給仕、しかし、私は見た目には惑わされない。
重要なのは料理の味、私は料理を食いに来たんだ。
とりあえず案内された、4人掛けの席に座って・・・。
お、机が二つくっついてる、この席。
こういうの何というか、いかにも町の中華屋さんっぽいな。
給仕の服装が攻めてるだけで、やはり普通の町中華なのかもしれない。
さて、メニューを見てみるか・・・。
お、なんだ、ランチメニューがある。
どれどれ。
・日替わり定食
・ホイコーロー定食
・天津飯セット
・お好みセット
おお、色々あるな。
色々あるが・・・こう、ピンとこない。
今の私は何が食いたいんだろう。
・エビチリ定食
・エビマヨ定食
お、エビマヨ。
エビマヨ、か。
何だか、この文字にグッと惹かれた。
うん、この惹かれた直感。
これに従ってみるとしよう。
今日はエビマヨ定食、これで元気をつけようじゃないか。
「すいません。」
「はーい!」
「お待たせいたしました!エビマヨ定食です!」
お、これはまた。
美味しそうなエビマヨじゃないの。
・エビマヨ
トロっとしたオレンジ色の様なソース。マヨネーズらしさがどこにもないな。でも見た目だけで分かる、こいつ絶対に美味しい。シュリンプが大きめなのもまた嬉しいポイント。
・ライス
エビマヨ、それを迎え撃つ白い大地。定食にはライス、これ基本也。
・中華スープ
街の中華といえば、やはり中華スープは外せない。その良い香りと存在、食卓を少し豪華にしてくれる。
・サラダ
千切りキャベッジにゴマのドレッシング。食卓のオアシスの様な1品。
では、いただきます。
さぁ、エビマヨだエビマヨ。
注文した後から少しワクワクしていたんだ。
餡がたっぷりかかったコイツ、これを箸でつまみまして。
そのままお口の中へ、いざ。
―――美味い、美味いぞエビマヨ。餡がたっぷりかかってるのに、サクサクプリプリのこの食感。マヨの感じも凄く濃厚。
うーん、美味い!
これは食べた人が笑顔になる、そんなエビマヨだ。
見た目オレンジなのに、マヨの感じが凄い。
サクサクプリプリのエビマヨ。
噛んだ瞬間、思わず私がエビぞりそうなこの美味しさ。
何が凄いって、もう、全部凄い。
まず口の中に入れるでしょう?
そしてエビマヨを噛む。
この噛む際に、まずエビマヨのマヨがもう美味しい。
しっかりとマヨの味、それを私に伝えてくれる。
そんなマヨの味、それを堪能しながらエビを噛むと。
エビマヨの衣。
こいつがもう、凄いサクサクなんだ。
エビマヨやエビチリって基本、餡を纏ってるじゃないか。
だから衣がふやけたり、しっとりしてると思ってたんだが。
そんな思い込みの中に、これよ。
本当にサクサクしてる衣のエビマヨ、その美味しさたるや。
ふやけたりしっとりしてるのも勿論美味しいんだが。
サクサクしてるとこんなに美味しいのか。
このサクサク感、これに感動したところで。
本命、エビマヨのエビ。
そのプリプリな身が、美味しさとなって、私の口を駆け巡る。
まるでこう、噛んだ瞬間にシュリンプの大群が口の中を駆け回る様な。
サクサクからのプリプリ、その食感に唯々感動。
もはや今、私の口の中は。
サクサクの砂浜、マヨの海。
そこにシュリンプの大群。
これはもう、ライス。
こいつを掻き込まなきゃ、そう食欲がささやいてくる・・・!
エビマヨをライスの上にバウンド。
そのまま口へ放り込んだら。
思い切り追いかけ飯でフィニッシュだ!
―――あー、これこれ。マヨからのサクプリシュリンプ、ライスに合わないはずがない。
うーむ、食べる箸が止まらない。
大人も子供も夢中になれる、そんな魅力がここにある。
マヨの甘いだけじゃない、不思議で美味しいこの味。
ライスに抜群に合う。
もしかしてこのマヨ餡、ライスの上にかければそれだけで御馳走なんじゃないか?
いや、シュリンプもいてこそのエビマヨか。
エビだけでもマヨだけでもない。
その両方がそろってこそ、この美味しさなんだろう。
ああ、ライスが進む進む。
エビマヨもライスも両方食いたい、それを実現できるこの幸せ。
至福の時間、中華食堂、ここにあり。
と、夢中になるのも良いが。
野菜もしっかり食べないとな。
サラダ、一気に食べちゃうか。
このシンプルなサラダ。
キャベッジとドレッシングのみ。
でも、それが良い。
変に奇をてらっていなくて、実に私好みだ。
さ、いただこう。
―――うん、予想通りのこの味。シャキシャキ感のキャベッジと甘酸っぱいゴマドレッシング。普通に美味しい。
こう、甘酸っぱいけどさっぱりさせてくれる、嬉しいサラダ。
無いなら無いで良いんだが、あると嬉しい、そんなサラダだ。
正に町中華、その定食のサラダ。
シンプルな美味しさ、これが良いんだ、これが。
良い感じに箸休めになって、マヨ一色だった口の中がさっぱりしていく。
シャキシャキ楽しい、さっぱりサラダ。
やっぱり定食にサラダがあると、少し幸せだな。
こいつ・・・もう、一気に食っちゃうか。
合間合間につまんで食う量でもないし。
シャキシャキサラダ、掻き込んで・・・。
シャク、シャク、パリ・・・。
うん、美味しかった。
サラダを食べ終えた後、このままエビマヨに戻りたい・・・所だが。
その前にやはり、中華スープを味わっておかないと。
折角のスープ、冷めるまで放置は勿体ないだろう。
これまたサラダと同じように、凄く普通の中華スープ。
刻んだ少量のネギが少し浮かんでいる以外、具材はなく。
表面に少し浮いている脂が輝いている。
うん、器のまま行っちゃおう。
いただきます。
―――あ、美味しい。凄くほっとする中華スープ。この食堂の腕前が、このスープに表れている。
シンプル、それでいて深いスープ。
飲めばしみじみ、ほっこりする様なこの美味しさ。
スープが美味い店は、何を食っても美味いんだよな。
通りでエビマヨがあそこまで美味しいわけだ。
もしかしてここの中華麺、このスープをそのまま使っているんだろうか。
・・・いかん、凄く気になってくる。
だが悲しいかな、私の腹はそんなに容量が無いんだ。
食欲よ、すまない。
いやぁ、それにしても。
シャキシャキサラダが口の中をさっぱりさせる。
ならばこのスープは、口の中を洗い流す、そんな感じだな。
この美味しさ、この余韻。
飲めば飲むほど、食欲が沸いてくるんだ・・・。
スープ美味し。
そのおかげで。
食欲に、火が付いた。
ここらへんでまたエビマヨライス、こいつに戻ろう。
―――ああ、エビマヨ、本当に良いエビマヨ。
サクサクプリプリのこの食感、ライスが進んで止まらない。
マヨの濃厚な味もまた凄く美味しくて。
良かった、本当にこの店に出会えて、良かった。
美味すぎる。
エビマヨに惹かれた、ただそれだけで頼んだのに。
ここまでの美味しさを体験できるなんて思っていなかった。
エビマヨ、この料理を開発した人に感謝しなければ。
ありがとう、本当にありがとう。
そしてそんなエビマヨを食べつつ。
合間合間にスープを挟む。
―――ふぅ、落ち着く・・・なのに食欲は熱く。不思議な感覚。
口の中が落ち着くのに、むしろもっと食べたくなる不思議なスープ。
美味いスープには人を空腹にさせる効果があるのかもしれない。
今日の昼食、大成功だな。
良い店、美味い料理、大正解。
さぁ、ガンガン食べるとしよう。
「ありがとうございました!」
あー、満腹。
ライス、お代わりしちゃったよ。
でもあのエビマヨの美味しさの前じゃ、ライス1杯で満足するのは至難の業。
結局落ち着くのに、ライスを3杯も召喚してしまった。
うー・・・少し苦しい。
食べすぎだな、これ。
とりあえず、煙草で一服・・・。
ふぅ。
落ち着く、良い余韻だ。
さて、家に帰るとするか。
内装のインテリア、在庫の確認をしないと。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。翌日、ギターの後遺症か指が筋肉痛に。
「中華食堂 ミカイン」の給仕(女性)・可愛い服が大好き。チャイナドレスは集客のために考案したらしい。実際に給仕目当てで来る男性客もちらほら。綺麗。