ざるラーメン、暑い日、絶好のロケーションだ。
ブクマ増えてました!ありがとうございます!
そして感想もいただきました!スパシーバ!
あー、今日は結構暑いなぁ。
猛暑日程じゃないが、それでもかなり暑い。
しかも天気は曇り。
ジメジメしたこの暑さ、私ダメなんだ。
だが悲しいかな、そんな日にも私の仕事はある。
いやまぁ、仕事がある事は嬉しい事なんだが。
でも営業、外回りなんだ。
ああ、暑い。
こう、じわじわとくる暑さ。
ダメだ、我慢出来ん。
次の依頼先までは時間があるし。
良し、一旦カフェにでも入って涼むとしよう。
・・・まさか入ったカフェに冷房が無い、なんて事はないよな?
いや、取り敢えずカフェ探しだ。
冷房が無かったらキンキンに冷えたジュースでも飲もう。
―――――――――――――――――――――――――
「いらっしゃいませ。カウンター席にどうぞ。」
お、イケオジ。
渋い銀髪、ダンディな佇まい。
成る程、ここ「カフェ エリザグイア」にイケオジの店主あり。
いや、しかし。
凄く涼しい。
良かった、冷房効いてるよ。
取り敢えずカウンター席に座って、と。
こじんまりとした店、しかしその内装、これは。
ヴィクトリアン調か。
この厳かで美しい、でもどこかリラックス出来る品の高い内装。
店内に流れるクラシックの音楽がまた良い雰囲気を作っている。
落ち着く内装にこの涼しさ。
最早此処は天国だ。
・・・が、ここまで品が良いと。
メニューの内容、これが心配になって来る。
もしかして凄く高かったりしないよな?
恐る恐るメニューを開くと、そこには・・・。
あ、良かった。
少し高いけど、その程度。
良かった、本当に良かった。
さて、何を注文するかだが。
・自家製レモネード
お、自家製と来たか。
成る程、自家製。
うん、飲み物はこれで良いだろう。
あとは軽食でも頼もうかな?
今朝何も食べてないし。
どれ、軽食のページは。
・サンドイッチ
・キッシュ
うん、定番所だな。
・グラタン
・ドリア
おお、しっかりした料理もある。
・パンケーキ
あ、スイーツも良いな。
甘さが私に力を与えてくれる。
しかし、どうしたものか。
色々あって嬉しいが、それ故に中々決まらない。
此処で私が選ぶべきメニューは・・・。
「お待たせ致しました。レモネードとストロベリーのジェラートになります。ごゆっくりどうぞ。」
選ばれたのは、ジェラートでした。
・ストロベリーのジェラート
ピンク色に赤い粒、見ただけで上品なジェラートだと分かる。暑い今日にピッタリだ。
・レモネード
自家製のレモネード。瓶にストロー、中には薄切りレモンがお出迎え。涼しげな見た目、良いじゃないか。
では、いただきます。
さ、ジェラート。
コイツから行こう。
・・・しかし、ジェラートとアイスの違いってなんだ?
まぁどうでもいいか。
スプーンで掬って、お。
硬過ぎず柔らか過ぎない、ちょうど良い硬さ。
こういうの大事。
そのまま掬ったスプーンを、口の中へ。
―――あま~い、蕩ける冷たさ、とっても美味しい。ストロベリーの酸味、甘味、思う存分堪能出来る。
このジェラート特有の甘さ。
ストロベリージェラート、素晴らしいじゃないか。
普通のアイスには無い、こう、上品さがある。
これはもう、今日の暑さもあってするする入るぞ。
あー、ストロベリーって凍らせたらこんな味になるのかな?
ストロベリーとジェラート、その良いとこどりしてるこの美味しさ。
くどくない、でもどこか鋭い甘さが私を襲う…。
更に店内のこの涼しさ。
寒い日に温まりながら食べるアイスも美味しいが。
暑い日に涼しい所で食べる冷たい物もまた、良い。
そしてそんなジェラートのお供。
それが冷たいレモネードだ。
一旦スプーンを置いて、このストロー。
これに口を付け、吸う。
―――あ、あー。甘い、甘さが多めの甘酸っぱさ。これが青春の味だろうか。レモンの酸っぱさ、良いアクセント。
美味い。
この甘酸っぱい味、見事に私にマッチした。
私もこんな味のする青春を送りたかった。
基本血と騒動に塗れた青春だったからな。
・・・いや、それは青春と言うのか?
ま、そんな事は置いといて。
このレモネード、自家製と言うだけあって凄く美味しい。
甘酸っぱいんだが、見事にストロベリージェラートとは違う味。
レモンを使ってるのにすごくまろやかなんだ。
美味しいジェラートに美味しいレモネード。
これで気合を入れて、この後も頑張ろう。
―――――――――――――――――――――――――
あー、終わった。
今日の営業、終了だ。
だが・・・暑い。
夕方になって涼しくなると思ったんだが。
まだ蒸し暑いぞ。
水餃子とかもこんな感じなんだろうか。
いや、あれは煮込まれてるし別か。
でも暑さとは裏腹に、今日の営業は順調だった。
前のポーションの依頼も追加が来たからな。
あ、酒ポーションも作っとかないと。
しかし、汗が酷い。
こりゃローブも帰ったら洗濯だな。
早くシャワーを浴びたい、が。
―――その前に、飯にしよう。
腹が減ったんだ。
家に帰ってもいいが、この暑さ。
多分帰ったらそのまま引きこもってるだろう。
その前に飯を食わねば。
もうレモネードもジェラートも、すっかり腹から消えている。
暑い日は美味い飯で力を付けないと。
ほら、シャワーを浴びたかった私の体もいつの間にか飯へシフトチェンジ。
良し、飲食街へ向かうとしよう。
という訳でこんにちは、飲食街。
いや、今の時間はこんばんはか。
しかしいつもながら、賑わっていらっしゃる。
暑いのに皆んな元気だなぁ。
もしかすると皆んな美味い飯に元気をもらいに来たとか?
・・・どうでもいいな、早く店を探そう。
ジメジメした暑さに対抗できる店、何処かにあるはずだ。
鍋。
流石に暑いし、きついかな?
スタミナは付きそうだが、パス。
居酒屋。
暑い日の終わり、酒を飲んで〆。
良いじゃ無いか。
だが満席なんだ、無念。
屋台。
今日は暑いし、外で食うのもなあ。
うーん、良い店が無い。
何処かに良い店はないものか。
・・・あ、ラーメン屋。
でもラーメン、尚更汗をかきそうだが。
いやでも、店内が涼しいなら大丈夫か?
うん、ここはギャンブル。
行って見よう、ラーメン屋。
店内に冷房が無かったら・・・地獄だが、熱いラーメンをすすって帰ろう。
此処で暑い中、迷い続けるよりはマシだ。
いざ、入店。
「いらっしゃい!空いてる席にどうぞ!」
あ、涼しい。
良かった、2連勝だ。
冷房ギャンブル、見事に勝利。
そしてラーメンの良い香り。
外が暑くてもラーメンを食いたくなってくる。
しかし「ラーメン コンセントレイト」、不思議な店名だ。
こう、店内は至って普通のラーメン屋だな。
丸椅子のカウンター席とボックス席、客もそこそこ入ってる。
座る場所は・・・カウンターで良いか。
適当に座って、と。
「お冷です!ご注文お決まりになりましたらお声掛け下さい!」
すかさず出てくるお冷。
ありがたい、喉が乾いて仕方なかったんだ。
こういう気遣い大事。
持ってきたのは爽やかスポーツ系男子、バイトでもしてるのかな?
そして例に漏れずイケメン。
ラーメン屋のイケメン、何だかそれだけで人気になりそうな店だ。
しかし、私にとって大事なのは味。
イケメンでも関係ないぞ、私は。
さて、メニューを見てみるか。
・ラーメン
・チャーシューメン
・モヤシラーメン
・餃子
・唐揚げ
・おつまみチャーシュー
・炒飯
うん、メニューもまた普通のラーメン屋。
ここは少し奮発してチャーシューメンでも行こうか?
他には、お、何。
・ざるラーメン
冷たいです!暑い日に是非!
ざるラーメン、だと。
なんだ、涼しそうなメニューじゃないか。
しかも冷たいって書いてあるし。
これは、もう。
決まりだな。
ざるラーメンは確定だ。
後はサイドメニューだが。
唐揚げか餃子、どちらにしよう。
どっちも食べたいんだよな。
肉の唐揚げか、定番の餃子か。
これは難しい問題だ。
悩む、悩むぞ・・・。
「お待たせ致しました!ざるラーメンに唐揚げ、餃子になります!」
迷ったら両方、私は学んだ。
・ざるラーメン
ざるに盛られた黄色い麺。それを付け汁で食べる。つまり…冷たいつけ麺?いやでも具材が無いし、やっぱり違うんだろうか。
・唐揚げ
カラッと揚がった、美味しそうな唐揚げ。ちょっと濃いめの茶色がチャームポイント。
・餃子
しっかり下面がパリパリの、少し小ぶりな餃子。でもパンパンに具材が詰まってるし、美味しそうだ。
では、いただきます。
さ、ざるラーメン。
鮮やかな黄色と茶色い汁。
汁の器を持つと・・・おお、冷たい。
冷たさによって期待が高まってきた。
麺を箸で持って、汁にイン。
また持ち上げで、ズズッとな。
―――う、美味い。よく冷えたざるのラーメン、付け汁に相性抜群。冷えた麺に冷えた汁、なのに私の食欲が燃え滾ってくる。
美味い、実に美味い。
これはもう、間違いなく美味いざるラーメン。
ずるずるどころか、するする私の体に入って来る。
冷たいラーメンに冷たい汁、まさか此処まで相性が良いなんて。
驚きの新発見、暑い日のざるラーメン、最高。
この麺、冷たいのにしっかりコシがあって美味い。
きっとしっかり茹でた後、サッと冷やしてるんだろうな。
じゃないとこんなに冷たいのにコシ、もちっとした感触はでない。
きっとこの店、この中細の縮れ麺を熟知している。
そしてその縮れ、そこにこの冷たいスープがガッツリ絡んで。
啜る度に涼しい美味しさを私に提供してくれる。
このスープも絶品じゃないか。
冷たいのにこう、何処となくコクがあるというか。
ラーメンのスープをただ冷やしただけじゃこの味にはならないだろう。
しっかりラーメンのスープの味はありつつ、冷たい麺にマッチする様に作られている。
ざるラーメンならではのスープの美味しさ、作るのに手間かかってるんだろうな。
見事に私の期待を超えたざるラーメン。
冷たい麺に冷たいスープ、それだけなのにそれだけじゃ無いこの美味しさ。
普通のさに見えるラーメン屋で普通じゃ無いラーメンに出会ってしまった。
イケメンのいるラーメン屋、今度から私の評価ポイントに入れて置こう。
あー、食べるほどに涼しく美味しいざるラーメン。
なのに食欲は暑くなる。
冷やし中華とはまた違うこの美味しさ、暑い日ならではだな。
そんなざるラーメンを食べながら。
此処で食べるは・・・この唐揚げ。
うん、いつ見ても良い茶色。
しかしカリッと揚がった、箸から伝わるこの感触。
コイツがただ茶色いだけじゃないと教えてくれる。
さあ、遠慮はいらない。
唐揚げ、コイツに齧りつこう。
―――カラッとジューシー、唐揚げの文字を突き抜ける美味しさ。美味い料理は人を元気にする、ならこの唐揚げは人を笑顔にしてくれる。
うむ、美味い。
ラーメン屋の唐揚げ、これにハズレはないのかもしれない。
この茶色の塊の中に、色とりどりの美味さがぎっしり詰まってるんだ。
これを美味い唐揚げと言わずして、何と言おうか。
この下味もベストな味付け。
こう、唐揚げの美味しさをしっかり表現してくれている。
そして齧り付いて咀嚼すると。
ぷりっぷりの鶏肉。
ジューシーさ、肉汁、その両方を兼ね備えてる。
大ぶりでも小ぶりでもない、中ぶり。
そんな大きさの唐揚げだからこそ、この食感を楽しめるのかもしれない。
下味がしっかり効いてる、カラッと揚がった唐揚げ。
もう、字面からして美味しさがにじみ出てるよ。
こいつをサイドで食えるラーメン屋、何て嬉しい発見なんだ。
そしてサイドといえば、もう1つ。
そう、餃子も忘れてはいけない。
この餃子は小ぶりだが・・・うん。
パンパンに中のタネが詰まってる。
これは食べるのが楽しみになってきた。
餃子のタレを・・・ええい、かけちゃえ。
パッパッパ、とな。
後は食うだけ、いざ!
―――カリッとした食感、そこからタネが爆発してきた。ほとばしる美味しさ、美味い餃子の証。
パンパンに詰まったタネ、これが口の中で爆発した。
その引き金はカリッとした餃子の焼き加減。
これだよこれ、餃子はこうでないと。
皮はぺらっとしてて、こうモチモチ感はない。
でもその分凄く餃子のタネ、こいつをダイレクトに味わえる。
しかも薄いとは言っても下の焼き面。
これが凄くカリッカリ。
最初に食べた時のこの楽しさ。
そこから広がる餃子のタネ。
ラーメン屋の唐揚げならぬラーメン屋の餃子。
やはり両方選んだ私に死角はなかった。
涼しい店で食べるざるラーメン、唐揚げ、餃子。
これはもう、ガツガツ行かなきゃ失礼ってもんだ。
ざるラーメンをズズっと啜り。
唐揚げに齧り付いて。
餃子をパクっと、はじけるタネ。
私、暑い日のラーメン屋で思う存分楽しんじゃってるよ。
しかも美味しいんだ、こいつら。
しかし冷やし中華ならぬざるラーメン。
本当にこれは新しい発見だった。
今度暑い日、冷やし中華とざるラーメンの食べ比べも面白いかもしれない。
・・・いや、私の胃袋じゃ容量が足りないか。
食欲は食べたいと叫んでいるのに、私の胃袋の容量が足りないこの悲しさ。
うん、今はこれでいい。
ざるラーメン、唐揚げ、餃子。
今はこれを楽しもう。
ざるラーメン、暑い日、絶好のロケーションだ。
「ありがとうございました!」
おお、元気の良い掛け声。
こう、食べた私もまた来たくなるような、嬉しくなるような。
外、まだ暑いが・・・それでも少し和らいだような気がする。
気温が下がったのもあるんだろうが、美味い飯で元気が出たんだろう。
あとは外の喫煙所で、軽く一服・・・。
ふぅ、思わずため息が漏れるこの余韻。
さて、家に帰るか。
暑いしとっとと帰って、シャワーを浴びよう。
そしてポーションの制作しちゃおうか。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。家で酒ポーションを飲みながら酒ポーションを作り、途中でダウン。ぐっすり。
「ラーメン コンセントレイト」の給仕(男)・イケメン、店主の息子。将来の夢は歌劇団の主役。さわやかな笑顔が持ち味。