そしてまたハヤシライス、ローストビーフ。
徹夜で書いたのでおかしい部分多々あるかもしれません。
あー、暑い。
昨日天気は快晴とか言ってたら、今日は猛暑日だよ。
誰だ変なフラグ立てた奴は。
・・・私か。
「アイスクリーム、どうだい!冷えてるよー!」
おお、屋台の兄さん。
暑い中腕まくりして、頭にタオル巻きながら。
アイスクリームを売っている。
冷たいものを売る本人が汗だくってどうなんだろう。
いや、そんなことはどうでもいい。
とっとと今日の依頼先、カジノへ向かうか。
少し早いが大丈夫だろう。
―――――――――――――――――――――――――
「どうもどうも、魔術師さん。お久しぶりでございますな。」
「どうも、オーナー。ご無沙汰してます。」
あー、カジノ涼しい。
暑い中歩いてきたから尚の事。
この涼しさが気持ち良い。
しかしカジノ、本当に久しぶりに来た。
私基本ギャンブルしないからな。
「それで魔術師さん、早速なんですが・・・。」
「ええ、こちらがカタログになります。中でもお勧めなものは付箋を貼っておきましたので。」
「おお、ありがたい。ではでは拝見させていただきます・・・。」
・・・相変わらず、裕福が良いというか、このオーナー。
前あった時よりもこう、少しふくよかになられた?
ふくよかなカジノのオーナー。
その字面だけ見るとこう、あまり良い印象を抱かない人も多いかもしれない。
だがこのカジノ、そしてこのオーナー。
この街への福祉や教会への寄付額が断トツなのだ。
そのおかげでこの街の道路や細かな整備が行き届いてる。
そういう理由もあり、孤児院などでは凄く人気。
見た目怪しいおっさんなのに・・・おっと。
これは失礼。
人は見かけによらないんだ。
「おお、これはどれも魅力的で・・・フフフ。」
「ええ、私もお勧めの椅子、絞るのに苦労しました。」
そんなオーナー、今回の依頼。
それは新しい椅子が欲しいというもの。
しかもその椅子に加工をしてほしいとの事だ。
具体的にはリクライニング機能等だな。
ただ性能はもちろんの事、見た目にもこだわらないといけない。
「あーでも、もう少し価格を出せばこの椅子が買えるのか・・・。」
「あ、そちらの椅子なら加工も可能ですよ。」
というか高いだけあって頑丈で、加工がしやすい。
できればそれを選んでもらえれば・・・。
「あ、この椅子は・・・どうですか?」
「それは申し訳ないんですが、加工に耐え切れないかと・・・。」
「そうですか・・・すいませんな、悩んでしまって。」
「いえいえ、私もこの後何もないので。しっかり選んでいただければ。」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えるとしますか。」
「うーむ、これも良さそうで・・・いやこっちも・・・。」
「・・・。」
「あ、これも良いな・・・。」
「・・・。」
この後、確かに予定はないが。
もう3時間、経ってますよ、オーナー・・・。
「あ、すいませんな魔術師さん。いざ見ると中々決められなくて・・・。」
「いえいえ大丈夫です。・・・ですが、もしよければ今日カタログ置いていきましょうか?私がいるせいで急かすのも申し訳ないですし・・・。」
「そうですか?ではお言葉に甘えさせていただきます。」
「わかりました。明日か明後日にでもお伺いしますね。」
「すいませんな、お時間を取らせてしまって・・・。」
「いえ、大丈夫です。では失礼しますね。」
―――――――――――――――――――――――――
あー、外あっつ。
暑い暑い、猛暑日だな。
冷房が効いてるカジノから出てきたら、尚更この暑さがきつい。
ああ、歩いてるだけで肌を突き刺すこの暑さ。
これに対抗するには、もう。
―――美味い飯、これで元気を出さないと。
暑くても、それこそ寒くても。
どっちにしても腹は減る。
ならこんな時こそ、美味い飯を食わないと。
それで元気を出して、明日につなげるんだ。
さ、汗だくになる前にさっさと向かおう。
毎度の如く飲食街。
最近の私、本当に外食ばっかりだな。
まぁ、それができる程度の稼ぎはあるからいいんだが。
しっかり稼いでしっかり食う、これが社会人には大切。
美味い飯から力強い元気をもらわなきゃ。
つまり私は社会人として正しい、そう思っておこう。
と、そんな事はどうでもいいんだ。
私の食う飯、それを見つけないと。
この突き刺す様な暑さがまた、私の体力を奪っていく・・・。
だが、今日は何を食べようか。
昨日魚食べたし、メロンも食べた。
あのサンマとメロン、美味しかったなあ・・・。
いかんいかん、また考えが変な方向に。
ここはあれだ。
結局の所歩いて探す、いつも通りで行こう。
早く見つけないと、汗だくと空腹で倒れそうだ。
カフェ。
うーむ、軽食って気分でもないんだよな。
パス。
居酒屋。
ランチ・・・やってないな。
レストラン。
レストラン、か。
・・・ありだな。
最近なんだかんだで行って無かったし。
しかもなんと言ってもここ、すぐ入れそうだ。
すぐに座れて注文できる、これ私の中で重要事項。
どんな料理があるかは知らないが・・・まぁ、お洒落で少なめな料理だったら数を食えば良い。
「レストラン フクロウの止まり木」、ここに決定だ。
「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」
お、最近ぶっきらぼうな大将ばかりだったから、美人な給仕はドキッと来る。
やはり美人に接客された方が、男としては少し嬉しいという物。
そして冷房が良く効いてる。
小さい食堂とかだと効いてないこともあるからな。
この涼しさがあるだけで、この店を選んでよかったと思う。
「はい。」
「かしこまりました!お席までご案内します!」
さて、恐らくこの店の看板娘。
そんな給仕に案内されたのは。
「此方をお使いください♪」
何と、まさかの4人席。
広いスペースはありがたい。
窮屈な思いをしながら飯を食べなくてすむ。
しかもこの椅子。
かなり良い革を使ってるじゃないか。
机も気品がある。
1人で使えることも相まって、これはちょっとした贅沢気分だ。
そんな席が並ぶこの店。
となれば、メニューも贅沢なのかな?
今の私ならコース料理とかも全然いけるぞ。
どれどれ・・・。
・ローストビーフ
・ローストポーク
・ローストチキン
ほう、ロースト三兄弟が揃い踏み。
成る程、味に中々自信があると見た。
主食系は何があるかな?
・ペスカトーレ
・ペペロンチーノ
・アラビアータ
成る程、パスタ系か。
他には・・・。
・ハヤシライス
・カレーライス
・ミートドリア
成る程成る程。
さて、全てが魅力的に見えるが。
この中から今日の私が食べたい物、それを選ばなければ。
どれにしようかな・・・。
「お待たせ致しました!ローストビーフとハヤシライスになります!ローストビーフには此方のソースをお好みでどうぞ!」
来たか、選ばれし精鋭達よ。
・ハヤシライス
ハッシュドビーフから漂うとてつもない芳香。この香りだけで分かる、こいつとんでもなく美味いぞ。具材は牛肉のみ、このシンプルさが潔い。
・ローストビーフ
ロースト三兄弟、その中から選ばれたのはやはり王道、牛肉。この綺麗なピンク色、見た目で美味しさを訴えてくる。
では、いただきます。
さ、このハヤシライス。
香りがもう堪らんのだ。
この香りを嗅ぐだけで猛暑日の暑さも忘れるようだ。
そして嬉しい、この肉の大きさよ。
結構大ぶりなカット、これがまた嬉しい。
では早速。
スプーンで掬って、いざ・・・。
―――あ、美味い、美味いぞハヤシライス。上品なのに、どこかわんぱくというか、元気な美味しさが私に力を与えてくれる!
美味い、これは美味い。
ハヤシライス、久しぶりに食べたが美味いなぁ。
カレーとは違う、辛さの全くないルー。
そこにこう、色々な旨味が凝縮されている。
この様々な旨味、私の言葉では表現できないのが残念だ。
そんな中、私でもわかる事。
それは美味い、上品、そして。
元気が出る、この3つだ。
まずこの美味しさ。
こいつはもう、言わずもがな。
人並みな言葉で申し訳ないが、こう、コクとキレが両立してだな・・・。
・・・そう、いろんな具材。
いろんな具材が溶け込んで、美味しい!
これだこれ、これで良いんだよ、きっと。
そしてこのハヤシライス、その上品な香りよ。
空腹を刺激しつつ、それでいてどこかほう、とため息をついてしまうこの香り。
今の私、もしかして凄く上品な食事をしてるんじゃないか?
そんな上品さと美味しさ、こいつらが。
食べる私に、活力を、新たな元気を与えてくれる。
改めて思う、ルーとライス、素晴らしく相性抜群だ。
食べれば食べるほど美味しくて、また次の一口が欲しくなる。
そしてそんな次の一口。
ここでこの大きい牛肉、行ってみよう。
―――肉、上品な肉。ハッシュドビーフ、その底力が今ここに。これとライスを一緒に食える喜び、言葉では表せない。
牛肉、味がとっても染みてて。
これと一緒にライスを食べたら、もうね、凄い。
おかずであり主食、ハヤシライスのハヤシとライス。
こいつらがもう、牛肉と一緒に食べて初めて融合したというか。
ハヤシ単体とライスでも美味しいけど、この具材が入ったら真の美味しさになったというか。
あー、どういえばいいんだろう、この感じ。
誰か私の言葉を代弁してくれ。
そのくらい美味しいんだ、このハヤシライスは。
上品なのにガツガツいけるハヤシライス。
これを涼しいレストランで食べれる、この絶好のロケーション。
今度から私、猛暑日にはハヤシライス食べようかな・・・。
と、ハヤシライスばかりに夢中になってた。
忘れてないぞ、ローストビーフ。
ハヤシライスの牛とはまた別、その分厚さと色で私を魅了する肉。
こいつには確か・・・このソースか。
ええい、全部行っちゃえ。
ハヤシライスがこれだけ美味しいんだ、この肉にソース、まず間違いないだろう。
良し良し、ソースも滴る良い肉になった。
さ、いただこう。
―――おっほ、流石は自信作。肉、柔らかく、旨味、凝縮。そんな肉にこのソース、この美味しさをどう語ろうか。
いや、本当に自信作なのかどうかは知らないが。
でもロースト三兄弟、その一番上にいるんだから自信作なんだろう。
だってそう思うほど。
これ美味しい。
しっとりとして食べやすい。
噛めば噛むほど肉の旨味が染み出てくる。
極めつけはソースとの相性抜群。
こんなローストビーフ、どこにもケチをつける要素が見当たらない。
そこまでの美味しさがこの肉1枚1枚に込められている。
更に言えばこのあっさりとした風味。
この風味のおかげであら不思議、1枚、また1枚と口の中へ消えていく。
手が、脳が。
勝手にローストビーフを求めだす。
もはやこの肉とソースに洗脳されたといっても過言ではない。
皆の物、牛肉を称えよ・・・。
っと、何考えているんだ私。
暑さにいよいよやられたか?
ならば尚更このローストビーフ、こいつでスタミナをつけなければ。
そういう訳でもう1枚。
次はこのローストビーフ。
その後ろにある葉野菜で巻いていただこう。
―――あ、なんだろうこれ、新しい美味しさを見つけた。あっさりソースが野菜にピッタリ、肉にもピッタリ。
美味しい、美味しいぞ。
肉単体でも美味いのに、野菜と組んでも美味いときた。
これはもう、全方位死角なしのローストビーフ。
野菜のあっさりした感じ、そこに肉の美味さがばっちりフィット。
更にそれをソースでコーディネートしたこの美味しさ。
肉とライスならぬ肉と野菜、その真理を垣間見た気分だ・・・。
いやはや、これは。
私の食欲、そこに火が灯り始めた。
美味いハヤシライスに美味いローストビーフ。
こいつらが私の食欲を燃やし続ける。
冷房でしっかり涼んだ私の体。
しかしその内面は今、熱く燃え滾っている。
ハヤシライス、ローストビーフ。
そしてまたハヤシライス、ローストビーフ。
この繰り返し、たったそれだけで心は熱く、体は冷静になっていく。
そしてその心の熱、こいつが猛暑にも負けない新しいパワーとなって、私を突き動かしてくれるんだ・・・!
さぁ、食え、食うんだ私。
暑さを乗り切れ、美食を味わえ。
ガツガツ食らい、明日につなげろ。
上品なハヤシライスへがっつき、ローストビーフを狼の様に貪り食うんだ。
食え、食うんだ、食い進めろ。
美味い料理に、パワーをもらえ・・・!
「ありがとうございましたー!またのお越しをー!」
あー、やっぱり外は暑い。
でも何だろう、少しすっきりした気分。
飲食街に来る前よりも、今の私の体。
明らかに元気がある。
やはりこれが美味い飯のパワーという奴か。
暑いときも寒い時も、とりあえず美味い飯を食う。
これが大事なんだな。
さて、とりあえず一服・・・と思ったが。
流石にこの炎天下だ。
大人しく家に帰って涼むとしよう。
あー、シャワー浴びてエールでも飲もうかな。
きっと美味しいだろうなぁ。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。風呂上がりのエールが止められない20代。
カジノのオーナー(男)・結局椅子が決まったのは3日後だった。