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美味しい、美味しいぞサンマ。

サンマにはダイコンおろしと醤油、鉄板ですよね。

「どうも、こんにちはー!」


「おお、魔術師さんか。ちょい待ちぃや。」


「あ、急がなくても大丈夫ですよ。」


「おーい、ばあさんや、お茶!」


「はいはい。」


さて、天気も良い今日この頃。

・・・いや、天気なんてコロコロ変わるか。


しかしまぁ、今日は本当に快晴だ。

しかも暑すぎず、程よい気温。

過ごしやすい良い天気だ。


そんな中、今日来た訪問先。

なんと農家さん(74話)の口コミで依頼が来た、また別の農家さん。

私、最近本当に色々なお客さん増えてきたな・・・。


まぁ、それは置いといて。

今日の依頼先の依頼、それは。


「どうぞ、魔術師さん。お茶です。」


「あ、どうもありがとうございます。」


「いやいや、すまんなぁ、わざわざこんなところまで来てもらって。」


「いえ、全然大丈夫ですよ。」


確かに少し遠かったが、まぁこのくらいなんてことない。

むしろ運動不足がちな私にとっては丁度いいだろう。

一応言っておくが、私は太ってない標準体型だぞ。


下腹もたるみもない、むしろすっきりしてる。

いや本当に。


「それで、農具ができたんか?」


「ええ、ばっちりです。」


「そうか、ありがとなぁ。あっこの農家の農具使ったら、もう本当に楽でなぁ。」


「ありがとうございます。私もそういって頂いて嬉しいです。早速ですが、こちらですね。」


「おお、これか!どれどれ。」


「一応一から作ってみました。木の部分もなるべく軽量化させましたが・・・。」


「お、おお!持ちやすいし、何より軽い!」


「そうですか、良かったです。」


良かった。

しっかり作ったつもりだが、やはり実際にそう言ってもらえると安心する。

こういう言葉がもらえると、制作者冥利に尽きるってもんだ。


「しかし、本当にこの値段でいいんか?」


「ええ、もちろん。利益もしっかりいただいてるので大丈夫ですよ。」


「そうか、悪いなぁ。・・・そうだ、ちょっと待っとれ。」


そう言って引っ込んでいく親父さん。


「すいませんねぇ、主人がはしゃいでしまって。でもこの農具、本当にありがたいですよ。」


「いえいえ、これが私の仕事ですし。」


「それでもですよ。私達農家だと、中々ギルドも動いてくれなくて・・・。」


「あー、それはありますね。」


そう、ギルド、特に魔術師ギルドの場合。

個人の客の場合、余程大口じゃないと動かないことが多い。

といってもこれは見下してるのではない。


魔術師ギルドが忙しすぎるのだ。

薬師ギルドで請け負い得ない一部のポーションや、討伐依頼。

果ては街の整備など、その仕事は多岐にわたる。


まぁ、それを補うために私たちフリーの魔術師がいるんだが。

とはいっても実はフリーの魔術師、そんなに数が多くない。


しかも中には似非の魔術師もいる。

・・・そういった輩、かなしいことに一定のタイミングで現れるんだ。


と、そんな話は置いといて。


「まぁ、仕方ないのは分かってるんですけどねぇ。」


「はは、その分何かあったら私に教えてください。色々と手を尽くさせてもらいますよ。」


「ありがとう、色々頼りにさせてもらいますね。」


「ええ、是非。」


「おーい、魔術師!こっちきてくれ!」


「あ、はい、なんでしょうか?」


「ほれ、これやるわ。うちで採れたメロン。もってけ。」


「いやいや、そんな!悪いですよ!」


「いいからもってけ。他の農家にもこの農具を教えてやらなきゃあかん。そしたら忙しくなるかもしれんしな。」


「そうですか・・・分かりました、ありがとうございます。」


うわぁ、凄い立派なメロン。

これ、高いだろうなぁ。


―――――――――――――――――――――――――


ふぅ、中心街に戻ってきた。

しかし結構良い運動になった。


というか、この立派なメロン、どうしようか。

家に持って帰って食うのは食うが。

こんな立派なメロン、中々見れないぞ。


普通に買うといくらくらいするんだ・・・?


と、いかん。


メロンの事を考えてたら、なぜか。


―――凄く、腹が減ってきた。


何故だ、どうして腹が減ってきた。

朝ごはんを抜いてるからか?


とりあえず、何かしら食べないと。

そんな時の為の飲食街。


さ、とっとと向かおう。




さて、飲食街にやって来た訳だが。

何を食うかは全然決まってない。


・・・まぁ、いつもの事か。

此処に来る迄に決まってた事なんて1、2回くらいしかないんじゃないか?


いつも私の食欲は、空腹を主張するだけで、何を食いたいかは教えてくれない。

しかし、そうだな。

目標が無いのもなんだかだし、うん、決めた。


今日は魚、魚料理にしよう。


では早速歩いて店を探すとするか。


居酒屋。

美味い魚ならぬ肴か。

・・・酒には走らないぞ、パスだ。


カフェ。

お、大穴か?

いや、無いな。

というかそもそも混んでる、パス。


焼肉。

あー、いかん、いかんですよ。

この香り、魚と決めた私の心をゆさぶってくる。

いや、我慢だ、パス!


ああ、焼肉の香りでごっそりとHPを削られた。

どこか早く店を見つけないと。

飢えたグールにでもなってしまいそうだ。


無いか、何処かに店は・・・!

お、あの食堂、良さそうじゃないか?


並んでも無いし、暖簾もでてる。

うん、あそこにしよう。


「飯処 フェイオス」、ここに決定!




「いらっしゃい。」


「1人ですが。」


「好きなカウンター席にどうぞ。」


厨房の大将、少しぶっきらぼう。

でもそこがまた良い味出してる。


それにしても・・・思ったより小さい店だ。

カウンターが一列、テーブル席は2つのみ。

こういう店をアットホームな店と呼ぶんだろうか?


四角い木の椅子、そこに座って、と。

おお、厨房が少し見える。

作る工程を見ながら注文を待てる。


カウンターならではだな。


さて、そんな食堂で私が頼む料理を探さないと。

メニューは・・・これか。


・生姜焼き定食


・トンカツ定食


カツ丼食ったし、ここはスルーだ。


・カレーライス


・ラーメン


・ハヤシライス


お、食堂のハヤシライス。

これ気になる、が・・・。


今日は魚料理、そう決めたんだ。


・自家製プリン


おっと、デザートまで来てしまった。

魚料理、何かないのか?


「すいません。」


「はいよ。なんだい。」


「魚の定食って何かありませんか?」


「あー・・・。それならサンマなんてどうだい。ほら、そこの壁の。」


おっと、そういや壁の短冊メニュー。

コイツを確認してなかったな。


「あ、じゃあそれ下さい。」


「はいよ。スープが追加料金でクラムチャウダーになるが。」


「お願いします。」


「はいよ。ちょっと待ってな。」


追加料金でスープ変更。

しかもクラムチャウダーか。


メインのサンマにクラムチャウダー。

なんとも不思議な組み合わせになった。


しかし魚と魚の料理の組み合わせでもある。

何にせよ食堂のクラムチャウダー、楽しみだ。


お、ピンとした魚。

恐らくあれが私のサンマだろう。


それを捌いて・・・おお、手際が凄く良い。

熟練の職人技といった所か?


うーむ、見てるだけで腹が減って来た。




「はいお待ちどうさん。サンマの開き定食だ。」


おお、やっと来たか。

魚の焼ける良い香り、それを前に我慢が出来なくなってた所だ。


・サンマの開き

頭から尻尾まで、ビシッとしたサンマだ。身も良く焼けて美味しそうじゃないか。香ばしい香り、あー堪らん。薬味はダイコンおろしで頂こう。


・ライス

美味い魚には白いライス。これはこの世の理…のはず。


・クラムチャウダー

汁物選べるってなったら、やはり変わり種を選んでしまうのが男の性。サンマとはまた違った香り、良い。


・小鉢のツケモノ

これはダイコンか。白い角切りのツケモノ、妙にそそるじゃないの。


では、いただきます。



さあ、まずはこのメインディッシュ。

サンマの開き、コイツを食おうじゃないか。


骨をこう、上手く引っ張って・・・。

良し、ベロンととれた。


あとはこのダイコンおろし。

コイツを乗せて、ショウユをかけて、いただきます!


―――あ、美味い。パリパリの皮、ほぐれる魚の身。ダイコンおろしとショウユもバッチリじゃないか。大量のサンマが、ダイコンおろしとショウユの海を回遊している。


美味しい、美味しいぞサンマ。


魚料理の決断、焼肉の誘いを断った甲斐があった。

パリパリの皮、ここからは香ばしさが溢れ出て。

そしてサンマの身、コイツがしっかりジューシー。


肉でも魚でも、美味い料理は大体ジューシー。

ジューシー、便利な言葉。


いやでも、本当にジューシーなんだぞ。

薄い様でその美味しさは分厚い、良いサンマなんだ。


そしてそんなサンマ、そこに絡むダイコンおろしとショウユ。

コイツらのさっぱりした味、それでいて奥深い味わいがサンマにピッタリ寄り添ってる。

この味、私の大好きな味だ。


こんなサンマ、それをおかずに。

ライスを食べれる、この幸福。

これはもう、試してみるしか無い。


―――美味い魚に美味いライス。この言葉を地でいく幸福感。そうだ、魚料理はライスがないと!


安っぽいかも知れないが。

魚料理とライス、たったそれだけで。

今の私は幸せに包まれている。


いや、美味い料理を食って幸せになる。

そこに安いも高いも、貴賤もない。


人の三代欲求、食欲。

それを満たす、立派な幸福だ。

ああ、パリパリ感とこの美味しさ、最高。



良し、メインディッシュの魚は堪能した。

次は汁物、クラムチャウダーに行ってみよう。


海の美味しさを溶けこませたこの料理、期待も凄く大きいぞ。

さあ、最初にスープ、いただきます。


―――じんわり温かな海の味。海という言葉、それを煮込んだらこんな味になるんじゃないか?


それも職人がじっくりコトコト、煮込んだ海のスープ。

見た目シチュー感があるのに、実際は凝縮された海の美味しさ。

それがこのクラムチャウダー、ここにある。


ほら、具材のキャロットやキノコ。

コイツらを食べても。


―――あー、温まる。海の旨味、陸の野菜にじんわりと染み込んで。口の中、ゆらゆらと野菜が海を漂っているぞ。


野菜ですらもう、バカンス気分。

真夏のサンビーチ、そこで浮き輪に乗りながら漂う私と野菜たち。


微笑ましい光景、それが脳裏に浮かんでくる様だ。


そしてクラムチャウダー、忘れてはいけない、この貝の身。

こいつからこの美味しさが出ているんだろう。


しかし、きっと。

美味さを出し尽くした、そんな事は無く。

・・・いや、食べれば分かるか。


スープと一緒に、頂こう。


―――穏やかな海、その海底。静かに眠る様なこの美味しさ。しみじみ美味い、その言葉がこれ以上似合う美味しさ、他には中々無いぞ。


やはり出涸らしではなかった。

旨味を出して尚、その中には美味しさがある。

流石は貝、旨味をギュッと閉じ込めている。


クラムチャウダー、見事に私の期待を超えて行った。



さて、此処で少し小休憩。

その為のツケモノ。


ダイコンのツケモノ、何というか妙にそそるんだよな。


さ、箸でつまんで、食べてみよう。


―――ぽりぽり食感、食べるほどに楽しくなる。そして噛めば噛むほどツケモノの美味しさが溢れ出て。私の、こういうの大好きだ。


まぁ、美味い料理は全部大好きなんだが。

いや、でもこのツケモノ、見事な仕上がりだぞ。


こう、熟練というか、歴史というか。

それがこの小さい長方形にギュっと固まっている。

そしてこのぽりぽり食感が、また楽しいんだ。


あっさりとした味わいなのに、何処か深い味。

私、このツケモノがあれば余裕で酒が飲めるぞ。

うん、美味い。


次はライスと一緒に食べてみるか。


―――ぽりぽり食感、ライスと見事にマッチング。ツケモノの奥深い味が、私の食欲を加速させる。


うん、改めて思った。

このツケモノ、良いツケモノ。

ぽりぽり美味しい、美味いツケモノだ。



やはり、今日。

何度でも思う、魚料理を選んで良かったと。

でないとこんなに美味い定食には出会えなかった。


美味いサンマ、美味いクラムチャウダー。

そして美味いツケモノ、隙の無い完璧な布陣。


いつの間にか私はライスを片手に、三角の布陣に囲まれた様だ。

さあ、この後何処から攻める?


魚の美味さ、それを思い切り押し出す攻めのサンマ。

じんわり美味しい、守りのクラムチャウダー。

小柄ながらも侮れない、素早さのツケモノ。


どうする、ただこのままがむしゃらに突っ込んでもライスが無くなるのがオチ。

お代わりもあるが、私の胃袋は無限ではない。


どうする、どうすれば全て上手く、ならぬ全て美味く収まるか。

さあ、此処からが正念場だぞ、私!



「ありがとうございました。お気をつけて。」


あー、食った食った。

結局はお代わり、しかも2杯もしてしまった。


でもこう、満足感は勿論の事。

胃袋がもたれるというか、重い感覚はない。

これも魚の力なんだろうか?


ま、何はともあれ。

まずは煙草で一服、と。


ふぅ・・・。

美味い魚の後の煙草、別格だな。


さて、家に帰ろう。

いや、どうせなら酒でも飲もうか。

あのツケモノ、絶対酒に合う。


・・・あ、そういえばメロンあるじゃん。

メロン切って、すこし贅沢な晩酌と行こう。


願わくば、次も美味い店に会えるように。

主人公(男)・魔術師。立派なメロンに酒が進む。酒が進んで・・・二日酔い。


農家の夫婦・色々な果物を作っている。後日軽い農具を布教する親父さんの姿が。

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