食い損なったステーキ、今こそステーキ丼で・・・!
ブクマ増えて、評価も増えてました。
嬉しい、感激、スパシーバ。
ありがとうございます!
住宅街、いつ来ても静かだなぁ。
まぁ朝の時間だし、そりゃ静かか。
夜になるとまた違う顔があるのかもしれないが。
「あー、もう絶対授業遅刻じゃん!」
「そんなこと言っても、そっちが寝坊するのが悪いんでしょ!!」
「もっと早く起こしてよ、もー!!」
おや、学院の生徒かな。
寮じゃなくてここに住んでるとは珍しい。
いや、確か私の代にもいたな、住宅街に住んでるやつ。
学院から少し遠いのが難点だが、門限が無いのが嬉しいんだよな。
特にバイトとか、深夜までやってしっかり稼げるのが嬉しかった。
他にも酒飲んで朝までバカ騒ぎする時とかは、皆でそいつの家に集まったり。
15から酒飲めるだけあって、15になった途端あちこちでパーティーが始まってた。
その結果、急性アルコール中毒であちこちから15歳が学院の保健室に集まるという。
・・・そういや元気ちゃんやクールちゃん、根性ちゃんたちは何歳なんだろうか。
まぁいいか。
とっとと依頼先に向かうとしよう。
さて、ここか。
今回の依頼、それはギャラリーを探してほしいという内容。
私の持っている顧客、その中でも自分で版画を作成している顧客からの依頼だ。
そこで今回はギャラリーの下見に来た訳だが・・・。
中々、こう、風情あるギャラリーだな。
古民家風といえばいいんだろうか?
とりあえず入ってみるとしよう。
「どうも、こんにちは。」
「はいはい、あら、どなたかしら。」
「今日ここの見学を予約した魔術師です。」
「ああ、魔術師さんね!どうぞお入りください!」
~魔術師、見学中~
「・・・とまぁ、こんな感じですねぇ。どうかしら?」
「ええ、とても良いかと思います。これならクライアントも満足するでしょう。」
「そう?なら良かったわぁ。」
今回のこのギャラリー、ここは当たりだな。
古民家風だが、完全に古民家という訳でもなく。
内装がところどころお洒落だ。
しかも隅々まで掃除が行き届いてるのか、凄く綺麗。
しっかり建物が管理されている、それを見ることができた。
今回の版画の件も、この建物の内装とならばっちり合うだろう。
「ちなみにここのギャラリーはいつ頃から使えますか?」
「それはもう、予約していただければすぐにでも使えますよ。」
それはそれは・・・。
「そうですか。ではまた、次はクライアントと一緒に来ますね。今日はありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。」
―――――――――――――――――――――――――
いやぁ、良い感じのギャラリーだった。
住宅街に近いからいろいろな人も見に来やすいし、内装はお洒落だし。
外観とのミスマッチ感がまた良いんだ。
というかあれ、ワークショップとかにも使えそうだな。
色々体験してもらって、商品を売る・・・。
うん、今度他のお客さんにも提案してみようか。
雑貨屋の先輩に提案してみても良いかも。
アクセサリーのワークショップ、若い女性に大人気だろう。
良し、とりあえず、あとは。
―――飯でも食いに行こう。
朝に軽くスイーツを入れただけで、他には何も食べてない。
ギャラリーを見ただけでは腹も膨れないしな。
さぁ、飲食街へ向かうとしよう。
という訳で、飲食街。
今日は何を食べようか。
昨日焼肉だったから・・・何でもいいや。
とりあえず美味いものを食べれれば何でもいい。
私の食欲もほら、何でもいいって言ってるし。
そんな訳で、いつも通り。
歩いて店を探すとしますか。
レストラン。
お、いいね、レストラン。
あー・・・並んでるな、パス。
焼肉。
昨日食べたからな、パスだ。
食堂。
お、ここの食堂。
何というか、外装が新しい。
最近できたんだろうか?
席も・・・空いてるな、良し。
すぐ座れそうだし、ここに決定!
「食事処 アスガラ」、いざ乗り込め!
「いらっしゃいませ!お好きなお席にどうぞ!」
元気のいい掛け声。
外装が新しいが、内装も中々新しいじゃないか。
明るくて解放感を感じる良い食堂だ。
さて、ではお好きな席・・・カウンターで良いや。
ここに座らせてもらおう。
お、目の前厨房じゃないか。
振るわれる鉄鍋、フライパン。
料理の光景、どことなく見ていて楽しい・・・あ。
あれはもしや、ステーキ?
もしかしてこの店、ステーキがあるのか?
メニュー、メニューはどこだ。
あった、メニュー。
どれどれ・・・。
・ステーキ丼
当店1番人気!
ステーキ丼。
ステーキ、前に食い損なった、肉の料理。
しかも一番人気ときた。
ああ、もう、この時点で。
―――私にとって、この店は当たりの店だ。
そう確信できる。
もう、注文するものは決まったのかもしれない。
心がこんなにもざわついて、そして叫んでいる。
食い損なったステーキ、今こそステーキ丼で・・・!
決定、決定だ!
いざ、注文!
「お待たせいたしました!ステーキ丼大盛、セットのサラダと味噌汁です!ステーキ丼はお好みでこちらの調味料をおかけください!ごゆっくり!」
来た来た、ステーキと丼。
・ステーキ丼
肉厚な牛のステーキ、少し赤みを残したミディアムレア。この分厚さ、盛り付け、何となく品を感じる1品。
・サラダ
生野菜のサラダ。シャキシャキ感と瑞々しさ、食卓のオアシス。何と嬉しい生ハム付き。
・味噌汁
セットの汁物、ステーキ丼の味噌汁。優しい香りはいつでも私を癒してくれる。
では、いただきます。
さぁ、ステーキ丼。
カウンターの目の前、厨房で作られていく光景、たっぷり見せてもらった。
だからこそ、食べる前から分かる。
こいつ、絶対に美味しい。
分厚い肉が、綺麗な赤色を残し、ライスの上に陣取るこの風貌。
肉料理、焼肉と対をなす王のごとき料理を、丼にしてしまったこの料理。
上からはステーキソースがかかっていて、華やかささえ感じられる。
さぁ、一口。
―――ああ、正解だ、大正解だ。この味、ステーキ丼、これを頼んだ私。よくやったとほめてやりたい。美味い、美味すぎる!
分厚い肉をガブリと行けば。
そこから肉の旨味が、ジューシーさが思い切り飛び出してくる。
そしてライス。
コイツにはステーキソース、これがしっかり絡まってて。
ハフハフ行くたび爽やかな美味しさ。
そんな2つの味。
肉のステーキ、ソースのライス。
こいつらが融合すれば、ほら。
―――もう、無敵の美味さ。肉料理の王、ステーキを今、私は丼で食べている。
ああもう、食べる手が止められないじゃないか・・・!
ハフハフ、ガツガツ!
擬音にするとこんなところか?
いや、もしかしたら音になっているかもしれない。
だってこいつ、こんなに美味しいんだぞ・・・!
噛めば噛むほど新しい美味さが染み出て、充実感を思い切り感じる。
これは素晴らしいステーキ丼だ。
あ、そういや。
調味料、こいつらを忘れていた。
どれどれ。
ポン酢に、ワサビ醤油、それに・・・ガーリックソースか。
うわ、これは気になるラインナップ。
だが残念ながら、ガーリックソース。
こいつはお預けだな。
この後の仕事、ガーリックの匂いを漂わせながらは遠慮したい。
となれば、ポン酢とワサビ醤油。
こいつらを試してみよう。
まずはポン酢だ。
こいつにステーキの肉をつけて。
そして食べれば・・・!
―――肉の王様の、さわやかな一面。スポーツで汗を流す好青年、それが垣間見える様な、そんな美味しさ。
凄い、凄いぞ。
ポン酢、こいつに付けるだけでステーキ肉が大変身。
爽やかな酸味、そいつに後押しされてステーキ肉が爽やかな好青年へ大変身だ。
錬金術もびっくり、いや顔真っ青なレベルの大変貌。
これは凄い、凄いぞポン酢。
ならばワサビ醤油、こいつもどんな具合か気になるじゃないか。
ポン酢が爽やかさ、ならばワサビ醤油は・・・?
―――渋い壮年、辛味、しょっぱさ。これはいぶし銀の美味さ。
がっしりとした体格の、壮年の王。
戦を前に、渋い面構えに覚悟を見せる、歴戦の王。
爽やかさのポン酢とは一転、いぶし銀の美味しさが、ここにある。
ポン酢も美味しかったが・・・私的にはこのワサビ醤油の方が好きかも。
この渋い美味さ。
これは中々体験できるものではない。
だが、一通り食べてみたし。
ここはサラダでも行こうか。
とりあえずサラダ、これが出来るのと出来ないのでは大きな差がある。
口直しとして色んなところで活躍するからな。
しかもここのサラダ、生ハムがある。
これは食い応えも確保された、究極のサラダと言っていいのでは?
まぁ、とりあえず一口行こうか。
―――生ハムサラダ、これはいい。生ハムが野菜をしっかりまとめる、まとめ役になっている。
うん、美味しい。
生ハムが乗っただけの、それ以外はいたって普通のサラダ。
それだけなのに、それだけのサラダに、サラダとして大切なものがいっぱい詰まっている。
野菜のシャキシャキ感。
これが肉で疲れた顎を癒してくれるかのようだ。
そこに入るは、薄いけど確かな存在感を放つ生ハム。
この生ハム、自家製なんだろうか?
かなり味がしっかりしてて美味しい。
コイツと酒があれば立派な晩酌ができるぞ。
そして野菜と一緒に生ハムを食えば。
―――うん、まとめ役の生ハム、野菜にばっちり。いつ食べても飽きない箸休めサラダだ。
あっさりさっぱり、良い感じだ。
そして味噌汁。
もちろん忘れていなかったぞ、うん。
具は・・・ネギとトウフのみ、シンプルな味噌汁だ。
サラダが口直し、ならばこの味噌汁が箸休めといったところか。
では、一口・・・。
―――ああ、ほっとする良い香りの後に、優しい味噌の味が沁み込んでくる。
ステーキ丼という王。
側使えとして存在する、この味噌汁。
正に箸休め、凄く良い味してるじゃないか。
こう、凄くほっとする味噌汁なんだが。
その中に確かに美味しさが存在する。
飲むだけでこう、どこか懐かしい気分になるというか。
どうしてこうも、美味い飯屋の美味い汁物は。
私を懐かしい気分にさせるんだろうか。
しかも凄く美味しいから、また、たまらないんだ。
箸休めに飲んだのにいつの間にか全部飲みそうになってしまう。
ああ、味噌汁で良い感じに落ち着いた。
そして今、ステーキ丼を改めて前にして。
食欲が燃え上がる、私がいる。
ステーキ丼よ、覚悟は良いか。
さぁ、食べ進めるぞ!
まずはステーキソースのライス、そしてステーキのシンプルな組み合わせ。
肉の美味さがガツンと来る、肉とライスの無敵の美味さ。
どこかの配管工が星を取ったような、そんな気になってくる。
そこで次はポン酢、こいつに行けば。
いきなり爽やかな、まるでテニスをしている王子様の様な、そんな美味しさ。
ワサビ醤油は言わずもがな、美味しいんだが。
いぶし銀の美味しさ、戦争を前に憂う、壮年の王の後ろ姿が見えてくる。
素晴らしい、素晴らしいぞステーキ丼。
変幻自在、私の食べ方それぞれに、確かな美味しさで応えてくれる。
そしてそのステーキ丼の側使え。
生ハムサラダと味噌汁、こいつらもしっかりとした美味しい働き。
これはもう。
ガツガツ食べ進めても、仕方ない!
ありがとう、こんなに美味しくて、ありがとう!
「ありがとうございましたー!」
美味かった。
焼肉を食べ、その次の日にステーキ丼を満喫する。
正に肉料理の2大王者、それを堪能してしまった。
もしやこれもチーちゃんとやらの天啓なのかもしれない。
チーちゃん、グッジョブ。
さて、あとはとりあえず。
煙草に火をつけて、一服してと。
ふぅ。
ああ、そうだ。
ギャラリーの事をクライアントに報告しに行かなきゃ。
うん、1本吸い終わってから向かうとしよう。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。焼肉の次にステーキを食べれてご満悦。まだ見ぬチーちゃんに大感謝。
「食事処 アスガラ」・最近リニューアルオープンした店。内装、外装共に給仕が提案した。ステーキ丼は1日70食限定。