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ブラックボアのカツ定食

ラーメンが食べたい。

本日、天気、快晴也。

・・・どうせなら土砂降りが良かった。


いよいよ始まった魔王祭。

魔王というのは魔術の王、偉大に発展した魔術の始祖でもある王へのお祭りということでどこもかしこもにぎわっている。


まぁ私は仕事なんですけどね!!!!

しかも学院の授業の立ち合い!!!!


不幸中の幸いとしては、最初の2日間は座学に変わったという点だろうか。


「あ、腹パンの人だ。」

「魔王祭で少し申し訳ないけど、前の事故の対処凄かったよね。」

「でも腹パンの人、依頼を受けてくれるとか暇なんかね・・・?」


幸いでも何でもなかった、不幸でしかない。

何だ腹パンの人って。

私は君たちの教師に嵌められたんだぞ、と声を大にして言いたいがそうもいかないのがつらいところだ。


一応、補習の内容としては初級魔法の連結、私の役目は質問をしてきた生徒へのサポートだが・・・。

まぁ質問する生徒なんていないわな。

こんな状態だもん。

さらに言えばこの生徒たちに初級魔法の連結ができるとは思えん。


連結、簡単に言えば魔法と魔法をくっつけることだ。

例えばウィンドとファイア、これは突風と炎を起こす魔法。

だがこの連結を使うと2通り、ウィンドファイアとファイアウィンドの2種類ができる。


ウィンドファイアの場合風が先に来ているので風の吹いたところがいきなり燃える。

ファイアウィンドの場合炎が先に来ているので炎の風、所謂熱風が相手を襲う。

こんな感じだ。


しかしこの技術、あくまで初級魔法の応用。

初級魔法を完璧に理解、把握しないと事故る。

私が昔学生だった頃起きた事故で、「ウィファイアンド」といった連結をし自分の周りに吹いたそよ風が爆発、そのまま風に乗って空に飛んでいき、臨死体験をしていたやつがいる。


懐かしい・・・あいつ元気かな?


おっといかん、一応依頼なんだ、一応・・・。


「連結・・・。こんなの使うの?」

「中級魔法でいいよね、これ。」

「俺、腹パン極めるんだ・・・。」


・・・だめだこりゃ。


「ンン”、君たち、少し静かにするように・・・。」


「あっ、すいません。」

「あんたの声大きいからだよ、も~。」


静かにするように注意したのに、声が大きいんですがそれは。

あー。

誰か、私をこのぬるま湯の様な地獄から解放してくれ。





「ありがとうございました!まずは1日目、お疲れ様ですねっ!」


「ああ、いえ、どうも・・・。」


「えへへ、久しぶりに静かな状態で授業ができました!」


「えっ。」


「えっ?」


「ああいや、なんでも・・・はは・・・。」


あれで静か・・・?

普段どんだけやばいんだ・・・。


「私、初級魔法専門で教えてるんですけど、みんな興味を持ってくれなくて・・・。」


「あ、そうなんですか?」


知らなかった、そんなの・・・。


「はい、なので今日は皆静かに聞いてくれてうれしかったです!」


聞いて・・・いたか・・・?

これは、立ち合いとして伝えるべきだろうか。

しかし・・・。


「ああ、いや、そんな悩まなくて大丈夫ですよ!」


おっと、顔に出ていた。


「聞いてくれれば多少なりとも頭には残ります。少しでも残った知識、それを次回に活かしてくれれば、私はそれで・・・。」


聖女か何かか、この人。

こんな優しい魔術の教師、見たことがない。

だが・・・。


「・・・それでも、理解しようとしなければ意味はないと思います。聞いているだけではいくら何でも限度がある。」


「大丈夫ですよ!その為の補修なんですから!」


「いえ、しかし・・・。」


「確かに1度聞いただけじゃ忘れるかもしれません。なら覚えるまで聞かせればいいんです!」


ニコッと笑顔。

おっと、怪しい。


「理解しようとしないなら、理解するように努力してもらう、それが私の役目です!だから・・・。」


「だから?」


「覚えてくれるまで、毎日補習をすればいいんですよ!そうすればそのうち興味を持ってくれるはずです!」


あかん。

というか君、最初同期とかに断られたって・・・。


「でも私1人じゃ補習にも限度がありますし、暴動を起こした生徒を鎮圧するのも大変ですので・・・。」


えへへ、とはにかむ教師。

物騒だな。

前言撤回、学院の教師、やっぱ悪魔だわ。


――――――――――――――――――――――――――――――


ふぅ、まずは1日目が終わった。

明日、明後日も座学だが・・・。

何だろう、生徒に少し同情してきた。


何だかいろんな意味で疲れた。


・・・飯でも食おう、そうしよう。


さて、今日は何にしようか。


焼肉。

これは授業4日目、気合を入れるためにとっておく。パス。


レストラン。

今の私には、何だか気分じゃない。


大衆食堂。

まぁ、これだろうな。しかしなんかもう1味欲しい。


とりあえず飲食街へ行こう。




「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


「あ、1人です。」


「かしこまりました。こちらのカウンター席へどうぞ。」


おお、シックな雰囲気、ピシッとした店長の雰囲気、良い感じだ。

「Bar・食堂 スピリッツ」、バーと食堂の名前に惹かれて入ったが、中々良い。

さてさて、メニューは・・・。

色々あるな。


なるほど、確かに食堂というだけあって、食堂にありそうなメニューを網羅している。

野菜炒め、卵焼き、カレー、その他もろもろ。

これをつまみに美味い酒をバーとして飲める、うれしいポイントだな。


と、いいからメニューを決めなければ。


とりあえずライスは確定、あとはメインとスープが欲しいが・・・。

うーむ・・・。




「お待たせしました。鳥ライス大盛、卵焼き、ブラックボアのカツ、コーンポタージュです。ごゆっくりどうぞ。」


来た来た、少し変わり種のメニュー。


・鳥ライス

ジューシーな鳥のもも肉がライスの上に。というか、鳥優勢でライスがあまり見えない。これだけでもメインじゃないか。


・卵焼き

出汁を使用した卵焼き。ぷるぷるした黄色の塊、齧り付きたくなる。


・ブラックボアのカツ

ブラックボア、大きいイノシシの魔物のカツ。その大きさ、見た目、私の食欲へ突進してくる。


・コーンポタージュ

甘く、それでいて食欲を掻き立てる香り。優しいその存在、良き。



では、いただきます。


まずは・・・この鳥ライス。

そのもも肉、真っ向からぶつかっていこうじゃないか。


肉、がぶり。


―――ジューシー、かりふわ。こんなのライスに合う、決まってる。


口の中で鳥が空を羽ばたいているようだ。

この味付けもいいかんじ。

くどくない、でも薄くない。


じゃあさっそく、ライスと合わせて・・・お。

このライス、たれがかかってて、且つほぐした肉が入ってる。

なるほど、だからこその鳥ライス。いいね。


となるとこれはまたライスだけで行ってみよう。


・・・あ、良い。


なるほど、こうきたか。

この感じ、良い。

タレが良い仕事してて、ほぐした鶏肉とベストマッチ。

ぱさぱさじゃない肉、そしてタレライス、その上にでかい肉。


1度で3粒美味しい、何て素晴らしい料理・・・。


では次、そうだな・・・いったん卵焼きを挟もうか。


箸で持つと・・・おお。

ぷるぷるの見た目に弾力のある感触。

綺麗な黄色とあいまって卵焼きの魅力を存分に訴えてくる。


この黄色に抗えない、ええい、がぶりつくぞ。


おお、これは、たしかな弾力、確かな旨味、口の中でとろける美味しさ。

何だろう、ザ・卵焼きって感じ。

ザ・卵焼きなんだけど、この美味しさはすごい。


シンプルに、技術を突き詰めた結晶の様な卵焼き、良い。


よし、このまま突き進むぞ。


次はブラックボアのカツ、君に決めた。

でかいカツ、そして黒いソース、見るだけで分かる力強いカツ。

いただきます。


―――ブラックボアが、衣という名の牙を携えて、私に突進を仕掛けてくる美味さ。


これはすごい、すごいカツだぞ。

サクッとした衣、しっかりとした弾力の肉、そこから漏れ出す肉汁。

ジューシーなんてもんじゃない、凄いジューシーだ。


またこのソース。

こいつが更にブラックボアを凶悪にうまくしている。

これ手作りのソースなのかな。

市販なら欲しい、そんなレベルのソース。


ブラックボアの凶暴さ、それをカツという形で体験するとは思わなかった。

突進の威力、凶暴さ、そしてどこまでも追いかけてくる執念深さ、その強さを料理で今感じている。


いかん、ここは応援を呼ばねば。

しかし哀れ、今の私が呼べる応援は鳥とコメ、卵のみ。

ライスとカツが、このままでは止まらない。


いや、そうか、ここでコーンポタージュだ。

優しい香りで私に今だと訴えかけてくる。


どれ・・・おお・・・。


なんて、優しい、味。


まるで口の中で暴れていたブラックボアが子守歌で眠りについたような、そんな安心感。

まさに食事の1休止、そんな素晴らしさがぎゅっと詰まっている。


甘いのに、ライスに、カツに合う。

トロっとしたこの感じもまたたまらん。


鳥ライスを掻き込み、鳥を口に含み、ライスを食べ、カツ。

小休止に卵焼き、そしてコーンポタージュ。


万全じゃないか。

完璧の布陣、さぁ、口の中のブラックボアよ、覚悟はいいか。

この定食の王者、私は食らいきって見せる!!




「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」


美味かった。

哀れブラックボア、勝利は私の口と胃だったな。

だがまだ口の中に残る足跡、余韻がすごい。


飯を食い終わった後のこんなゆったり感、嫌いじゃない。

むしろ好き。

そしてこんな時、美味い飯を食った後にする煙草の一服がまた最高なんだ。


という訳で・・・灰皿の前でさっそく煙草に火をつける。


さて、明日は2日目、気合を入れなおさなければ。

幸い座学についての雰囲気は今日で分かった。


頑張れ私、負けるな私。

明日も美味い飯が私を待っている。


ああ、でも


願わくば、次も美味い店に会えるように。

主人公(男)・魔術師。腹パンの人呼ばわりに愕然とした。


過去に事故った主人公の同級生(男)・連結魔法に失敗して全治3週間。今も生きてる。事故った後落第を回避するために先生に実力行使、先生ごと無事爆発した。

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