昼、ソースカツ丼
GW真っ最中ですね。
今回文字数少なめです。
「いらっしゃいませ・・・魔術師さん。」
「どうも。」
「最近本当に良く来るね?」
「はは、仕事が結構順調で。おかげでコーヒーもすぐ無くなってね。いつものお願いします。」
「わかりました。」
「ああ、あとホットコーヒーと・・・ガトーショコラをお願いします。」
「はい、了解。お好きなお席にどうぞ。」
今日は1日加工の日。
先日の大口案件を進める日だ。
ある程度宝石の加工は終わったから、この後は仕入れだな。
アクセサリー工房に行って親方と商談だ。
だがその前に休憩という事で。
・・・しかし、最近本当によく来てる気がする。
まぁいいか、スイーツ美味しいし。
「お待たせいたしました。ホットコーヒーとガトーショコラです。」
来た来た、本日のダブルブラック。
・ガトーショコラ
黒い見た目に華やかな甘さが込められた1品。・・・どっちかっていうと黒より茶色か。
・ホットコーヒー
いわずもがな、いつものコーヒー。でもその「いつも」、その言葉に重みがある。
では、いただきます。
まずはガトーショコラ。
こいつにスッとフォークを通せば。
おお、手に伝わる、伝わってくるぞしっとり感。
この感じがもう、手から伝わって美味しさを私に教えてくれる。
では、切り取ったその先端を。
―――ほーら、やっぱり。しっとりとした美味しさ。
やはり想像通り、美味しいガトーショコラだった。
何といっても、この味、濃厚。
なのに生地はしっとりと、そしてホロホロとした口どけがたまらない。
ああ、今私は濃厚な甘さの塊を食べている。
やはりここのスイーツ、全てが美味しい。
「コーヒー グラウ」、いつ来てもこの味、見事也。
そして甘味を堪能すれば。
その後待ち受けるは素晴らしい苦み。
そう、ホットコーヒーだ。
うーん、この香り。
もはや説明不要、素晴らしい香りだ。
そして味も。
―――素晴らしい、いつも通りのいつものコーヒー。
これをいつもの味と言い切る私、もしかして凄く贅沢しているのでは?
だが、このコーヒーこそいつもの美味しさなんだ、仕方ないじゃないか。
リラックスタイム、良い時間。
ずっとこんな時間が続けばいいのに。
「おう魔術師、よう来たの。」
「どうも親方。お久しぶりです。」
リラックスタイム、永遠には続かず。
結局あの後スイーツとコーヒーを堪能し、その足でここまで来た。
「それで、今日は何だ?仕入れか?」
「ええ、結構大口が来まして。」
「ほぉ、そりゃまたありがたいこって。ばあさん呼んでくるからちょっと待っとれ。」
だが今回は大口の依頼。
しかも結構値が張るからな。
これは親方も喜んでくれるに違いない。
「はいはい、あら。魔術師さん。いつもどうも。」
「どうも奥さん、お世話になってます。」
「おう、魔術師がなんか大口とってきたってよ。」
「あらあら、ありがとうねぇ。それでどれくらいかしら?」
「ええ、実は・・・。」
―――――――――――――――――――――――――
いやぁ、凄いはしゃぎっぷりだった。
年甲斐もなく、とはああいうのを指すんだろうか?
だが、まぁ。
嬉しくなるのは正直分かる。
私としてもかなりの金額になるからな。
それにあのアクセサリー工房も最近はヒット商品があまりなかった。
しかし今回の件を機に、もしかすると流行りになるかもしれない。
まぁ、そこらへんはジュエリーショップの手腕次第か。
大口が決まって私も嬉しい、工房も嬉しい。
そして新商品として出せるジュエリーショップも嬉しい・・・はず。
とにかく三方良し、これぞ商売の理想郷。
ならば、後は。
―――飯でも、食いに行こう。
親方の所でお茶は大量に飲まされたが、固形物は食べてない。
お腹がタプタプでも腹は減る。
となれば、向かう先は飲食街だ!
到着、飲食街。
タプタプのお腹も歩いたら丁度いい具合になった。
そうなると突然空腹が私を、食欲を襲う。
これは早く店を見つけないと。
さて、今日はどこにしようか・・・。
焼肉。
並んでる・・・パス。
レストラン。
ここも並んでるのか。パス。
居酒屋。
ここに至っては昼営業していない。
なんだ、これは。
どの店も並んでいてすぐ入れそうにない。
こう、目につく店全てが並んでいる。
これはどうするか。
どこかに何かないか・・・そうだ。
屋台、屋台にしよう。
良し、そうと決まれば屋台飯だ。
「いらっしゃい!そこどうぞ!」
さてさて、座ってと。
あの後見つけた屋台、その名も「串と酒 ミノワノ」。
酒は今日は飲まないが・・・こういう屋台、そこには美味い飯が潜んでいる、そんな実感があった。
さて、席に座ってメニューを取って。
どれどれ・・・おお。
串は勿論、それ以外にもいろんなメニュー。
特に、飯系。
一番人気、ソースカツ丼。
この文字は見逃せないな・・・!
となれば、これを確定としてサイドだが。
これは、そうだな。
やはり串焼きの店。
だったら串焼きを頼まないと。
さーて、何にしようかな。
「はいお待ち!ソースカツ丼とコリコリつくね串だ!」
お、来たか。
・ソースカツ丼
卵で閉じてない、ソースでブラックなカツ丼。今日は黒い食べ物に縁があるな。カツとライスだけのシンプルさも何だか良い感じ。
・コリコリつくね串
棒状のつくねが串に刺さった料理。軟骨入りでコリコリするからその名前がついたらしい。何とも美味しそうなこの二本、期待してるぞ。
では、いただきます。
先ずはソースカツ丼。
ソースが染み込んだこの黒いカツ、もう食べる前からワクワクしてる。
お、この肉、箸で持つと意外に軽い。
良し、このままガブッと・・・。
―――黒い衝撃が、私の口から胃袋を貫いた。思わず笑っちゃうようなこの鋭さ、素晴らしく美味い。
まるで、槍。
豚がソースという鎧を見に纏い、神速で突撃して来た。
だが、速さと言う勢いだけじゃない。
肉が薄いのに凄くジューシーで、カツ丼への確かな技術も感じられる。
薄いのにジューシー、矛盾の様なその美味さ。
これが、この美味さが屋台の味だと言うのか?
衣もしっとり過ぎず良い塩梅じゃないか。
全く重くない、でもサクサクしっとり。
この揚がり具合、店主の手腕が見て取れる。
しっとりサクサク、ジューシーなカツ、まるでトライデント、三叉の槍。
そしてトライデント、コイツが。
ライスと言う大地に突き刺さってる訳だ。
さあ、豊かな大地でカツを追おう。
―――ソース染み込むこのライス。正にカツを追う為に存在しているか様だ。
美味い。
いや、この場合は幸せの方が適切だろうか?
美味しいカツを美味しいライスで追いかける。
またカツを食べ、またライスで追う。
ライス、カツを差し切るか?
いや、カツの美味しさ、その圧倒的な逃げ。
これにはライスも追いつけない・・・!
永遠に終わらないループ、それに組み込まれた歯車の様な私。
でもこんな歯車なら、大歓迎だ。
ヒレ肉に平伏す私、喜んで歯車となろう。
しかし、ずっと回り続けては磨耗してしまうと言う物。
ここは一つ、落ち着く為に変わり種へ行こうじゃないか。
そう、コリコリつくね、君だ。
二本あるし・・・一本目は豪快にいっちゃおうか。
物足りなかったら更に追加すれば良いし。
ではでは、早速。
―――ジューシーなつくね、そこからコリコリといきなり出てくる軟骨よ。どうしてくれよう、この美味さ。
噛めば噛むほど噛み締めたくなる、そんな美味さ。
この串焼き、ここには確かに店主の経験と歴史が詰まっている。
いやしかし、本当にこのコリコリ。
軟骨が凄くアクセントになって、美味しい。
しかもつくね、こいつ自体も凄くジューシー。
こんがりと焼きあがったつくね、ここまで美味いと、もう。
勝手に笑顔になってしまう。
そんな軟骨とつくねが融合すれば。
噛むほどに美味しい、この屋台をかみ砕いて食べている様な。
この幸せを、串一本で堪能できるとは。
これは串焼き、頼んで大正解だった。
さぁ、食べ勧めよう。
私の食欲に火がついてしまった。
串焼き・・・このままもう一本いくしかない。
この美味しさは夢中になってしまう。
そして串焼きを食べきったら。
カツ丼、こいつにまた再挑戦だ。
槍を持って突撃してくるカツ丼。
ここまで攻撃的なカツ丼、今まで他に合っただろうか。
この美味しさ、幸せの串刺し。
カツ丼、やっぱり美味しい。
美味いカツ丼、これには何かこう、不思議な力があるに違いない。
食べる人を元気にするような、ゲン担ぎに食べる気持ちも今ならわかる。
食べれば食べるほど湧いてくる元気。
そして食べているはずなのに熱く燃え滾る食欲。
これはカツ丼じゃないと体験できないだろう。
美味い、ただただ、美味い。
・・・串焼き、お代わりしちゃおうかな。
「すいません。」
「はい!」
「串焼きなんですけど・・・」
「ありがとうございました!」
うっぷ、満腹。
しかしこの幸せ、満腹ならではの達成感。
これだよこれ、美味しい満足感。
美味い飯には人を幸せにする力がある。
だが、本当に満腹だ。
これは最後に頼んだ串焼きのお代わりが効いたか?
調子に乗ってつくね以外にも色々頼んでしまった。
これは、落ち着くためにも。
一旦煙草。
こいつで少し休憩だ。
吸って、吐いて・・・。
ああ、少しだけ気分が落ち着く。
さて、家に帰るか。
大口案件、再開だ。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。この後酒を飲みたくなるも、無事我慢。
「コーヒー グラウ」の店主(女性)・美人。スイーツ系が得意料理。ただし太りやすいのであまり自分で食べれない。