昼からの1人宴会
今回は食事シーンをあっさりめにしてみました。
商店街、久しぶりに来たけどいい雰囲気だ。
こう、活気というか。
個人で運営している商店、そんな連なり、店構えが何とも良い感じなんだ。
「おや奥さん、いらっしゃい!」
「こんにちは!」
「今日はねぇ、焼き魚がお勧めだよ!」
「あら、そうなの?」
おお、良い会話してる。
そう、あんな感じにお惣菜が並んでたり。
そんな光景がここにはある。
さて、目的地はもう少し先か。
今日はこの依頼で終わりだし、明日は休日だ。
折角だし、今日は昼のみしちゃおうかな。
・・・いかん、もう仕事が終わった気でいる。
今から仕事だぞ、私。
うん、仕事終わったら酒でも飲もう。
何だかそう考えたら無性に気合入ってきた。
さっさと向かうとするか。
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「どうも、魔術師さん!」
「こんにちは。今日はよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ!まだ何もないんですが・・・。」
今日の依頼、それは内装について。
何でもこの商店街に新しくカフェテリアを設けるらしく。
その内装、中でもインテリアや飾りなどを私が担当する。
「いや、大丈夫ですよ。なんかイメージとかあります?」
「イメージ・・・そうですね。ざっくりとしか言えないんですが、お洒落とか?」
「なるほど。でしたらそのイメージカラーと合わせましょうか。壁の色とか決まってます?」
「色は・・・壁の色はこのまま白で、あ、あと明るい雰囲気にしたいと思ってます。」
「ああ、確かに大きい窓もありますし、開放感が活かせて良いと思いますよ。」
「ありがとうございます!本職の方に言っていただけると嬉しいです!」
うん、白色に明るい雰囲気。
となれば気品、格調高いインテリアなどが合いそうだ。
白のスペースに白のインテリア。
ワンポイントに青色なども落ち着いていいかもしれない。
「後は・・・そうですね。棚やテーブルなど置く場所は決まってます?」
「あ、そうですね・・・えっと、この辺に棚を置いて、この一帯は飲食のスペースにする予定です。それで・・・ここにはレジですね。その下にショーケースを入れて、お持ち帰りもできるようにしたいな、と。」
「そこに棚、でそこが飲食スペース、ここがレジとお持ち帰り用のショーケース・・・なるほど、分かりました。では次回伺わさせていただくときに、内装の案や小物を置いたイメージ図、あとはサンプルなどを用意しますね。」
「ありがとうございます!是非楽しみに待ってますね!・・・あ、折角ですのでコーヒーでもどうぞ!今用意します!」
「ああいや、お構いなく。」
「いえいえ、是非飲んでください!ちょっと待っててくださいね!」
あ、行ってしまった。
この後酒を飲む予定だったんだが。
まぁいいか、酒はいつでも飲めるんだ。
それに新しいカフェ、そのコーヒーにも興味がある。
「お待たせしました!どうぞ!」
おお、これが。
・ホットコーヒー
オープン予定のカフェ、そこで販売予定のホットコーヒー。良い香りしてるじゃないの。
「あ、砂糖やミルクは・・・。」
「いえ、大丈夫です。ブラックでいつも飲んでるので。ではいただきますね。」
さて、コーヒーを口へ近づければ。
漂うは素晴らしい、コーヒーがコーヒーたる所以の様な香りがする。
コーヒーのこの香り、いったい今までにどれだけの人をコーヒー派に沈めてきたんだろう。
では、いただきます。
―――美味しい、良いコーヒーじゃないか。
シンプル、香りも良く味も良い。
これをこのカフェで出す、そうとなればきっと常連客もできるだろう。
「どうです?私の自信作なんですが。」
「ええ、凄く美味しいですよ。結構深めなんですね?」
「あ、魔術師さんコーヒー詳しいんですか?」
「いや、詳しいと言えるレベルではありませんが・・・。毎日飲んでるので。」
「そうなんですか!じゃあよく行くカフェとかもあります?是非そこを参考に・・・。」
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うーん、中々有意義なコーヒー談義だった。
しかもお土産に、これ。
カフェで出す予定のコーヒー豆までもらってしまった。
今度グラウの店主にもあの店の事伝えておくかな。
豆まで渡されたら、ねぇ?
しかし、やはり実際に一度スペースをみといてよかった。
思ったより広いし、それに解放感もある。
あとはそれに合うインテリアを用意、場合によっては加工。
あ、ついでに家具のカタログも一緒に持っていこうか。
うん、万事抜かりなく。
順調に進みそうでよかった。
と、なれば。
あとは、そう。
―――酒、飲みに行こう。
明日は休日だしな。
今日くらいは昼から酒を飲んでも罰は当たるまい。
良し、飲食街へ向かうとするか。
さて到着、飲食街だ。
今日はどこで何を食べようか。
何といっても今日の私は昼から1人宴会。
それにふさわしい店を探さなければ。
とりあえず、いつも通り歩いて店を探すとしよう。
食堂。
うーん・・・1人宴会にはちと厳しい。
パス。
焼肉。
宴会には当てはまるが、思い切り肉を食ってしまいそうだ。
いや別にそれも悪くはないんだが、今回は・・・パス。
ウドン。
うーん、ウドンか。
宴会には向いてないな・・・。
さて、どうしようか。
どこもこう、ピンとこない店が多い。
・・・というか、普通に居酒屋行けばいいじゃないか。
そうだな、うん。
次見つけた居酒屋、そこで決まりだ。
「いらっしゃいませ!御一人ですか?」
「ええ。」
「ではこちらのカウンターへどうぞ!」
次に見つけた店とは言ったが。
すぐそこにこの店、「居酒屋 ゲンセン」があった。
名前からこう、硬派なイメージがあったんだが。
中は結構お洒落、そしてリラックスできる空間だ。
ここなら私の1人宴会、これも思う存分開催できる。
では、早速メニュー。
飲み物は・・・お、ハイボール。
ハイボール、久しく飲んでないな。
フードは、おお。
色々なメニューがあって目移りしてしまう。
さぁ、この店で1人宴会、どのように組み立てようか。
私の手腕が今問われる。
「お待たせ致しました!唐揚げとハイボールになります!」
お、1人宴会の先触れが来た。
・唐揚げ
1人に嬉しい食べきりサイズ、そんな唐揚げが3個。酒飲みの最初に相応しいぞ。
・ハイボール
ハイボール、酒飲みならば、お好きでしょ?何というか、もう少し喋りたくなる様な…気のせいか。
では、いただきます。
さて、唐揚げだが。
レモンもいいが、先ずはそのままだ。
さぁ、そのままガブッといこう。
―――美味い、ジューシー。唐揚げが唐揚げとして生きている。
美味い唐揚げ、ただそれだけ。
だがその唐揚げを食べたからこそ、私の心は今こんなに豊かだ。
ついでに食欲にも色が着いたぞ。
そしてその豊かにもなる唐揚げ、コイツを食ったならば。
次はハイボールを飲まなきゃ、唐揚げに失礼だ。
―――シュワっと強炭酸、爽快感が液体となって喉を過ぎていく。
あー、この感じ。
確かにウイスキーなのに喉元を焼かず、寧ろスッキリするぐらいだ。
そんな感じで飲んでいると、いつの間にかまた物足りなくなる口の中。
一緒に食欲がぐずり始めた。
そこでまた唐揚げを食べ、ハイボールを飲むこの幸せ。
これだよこれ、今日私が求めていた幸せは、これだ。
お待たせ致しました!アンチョビサラダになります!
おっと。
幸せを楽しんでいたら、更なる幸せのご登場だ。
・アンチョビサラダ
アンチョビがいる、それ以外は普通のサラダ。
うん、見た目も殆ど普通のサラダだが。
果たしてアンチョビ、その実力やいかに。
・・・探してもアンチョビがいない。
もしやペースト状とか?
まぁいいや、美味しければそれでいいんだ。
いただきます。
―――お、ほおう、へえぇ。アンチョビサラダ、こうなるんだ。
意外や意外、不思議な美味しさの漂うサラダ。
これがアンチョビサラダか。
こう、野菜でさっぱりするのに塩の味というか、がっしりした美味しさがある。
こいつこそアンチョビの美味しさなんだろう。
この塩というか、海の味。
サラダにバッチリ合ってます。
海の味が豊かなサラダ。
コイツにもやっぱり、ハイボールがバッチリ。
ハイボールが進んで、進んで・・・無くなった。
酒、お代わり確定。
何を飲もうか。
「お待たせ致しました!ウイスキーのロックとミニかけソバです!」
ありゃ、ウイスキーと〆が一緒に来てしまった。
・ミニかけソバ
どんぶりサイズの小さいソバ。シンプルなかけソバだが、香りは豊かな一品。
・ウイスキー
ハイボールからのウイスキー、これぞウイスキーコンボ。
仕方ない、ソバからいこう。
折角のソバ、伸びてしまっては勿体ない。
それにソバを食べてからでも酒は飲めるからな。
シンプルにスープとソバ、それだけのかけソバ。
しかし今の私にはとっても魅力的に見えるぞ。
ささ、つるっと。
―――香り豊か、味も豊かなかけソバだ。このシンプルな一杯に、酒を飲んだ後に必要な美味しさが全て詰まっている。
これは、この味は。
このソバ、ソバならではの美味しさだ。
ウドンでもパスタでも出せない、そんな太い美味しさが細麺のソバに込められている。
透き通るような茶色のスープ、そこには分厚い壁の様な風味があり。
シンプルながら奥深い、その言葉をこの味で体現していると来た。
いや、美味しいなこのソバ。
こいつを〆で食べれるこの店、素晴らしいじゃないの。
しかし、今回はこのソバ、〆じゃない。
何故か?
それは、ここに唐揚げ、アンチョビサラダ、そして。
ウイスキーがあるからだ!
丁度いい、ここでウイスキーを一口行こう。
この琥珀色、それに酒飲みは抗えないんだ。
スッと、雫を口に含む様に。
―――ああ、これぞウイスキー。小さな雫から大きな香り、強い酒精のご登場。
決して高級とはいえない、晩酌用のウイスキー。
しかし、美味いものをたべ、こいつを飲めばそこには確かな美味しさがある。
ガツンと、しかしどこか華やかなウイスキーが、意外にもソバを食べた口に合うじゃないか。
高い酒も美味いが、こんな風に飲む安い酒、コイツも私にとっては確かな幸せだ。
さて、ソバ食べきっちゃうか。
どうしても食べたくなったらもう一杯頼めば良いし。
サッと食べて、残りのおつまみで晩酌再開と行こう。
いやしかし。
本当にツルツル入ってくな、このソバ。
ハイボールが入った体が原因か?
こう、温かい喉越しが何とも言えぬ快感だ。
そして食べるほどに逸る、晩酌をしたいと言うこの気持ち。
ソバを食べているのに他の事を考えるのは失礼かも知れないが、この気持ちをどうしても抑えきれれない。
ああ、やはり私は酒飲みなんだな。
そう自覚してしまう。
決めた。
このソバ、後でもう一杯注文しよう。
だから今は酒を飲みたい酒飲みの思考、これを許してくれ。
「ありがとうございました!」
ああ、食べすぎた。
やはりお代わりのソバ、そこにかき揚げをトッピングしたのは間違いだったかも知れない。
だが、凄く美味しかった。
煙草を取り出し、一服。
・・・何かこう、何というか。
もう少し酒、飲みたくなって来たなぁ。
梯子酒、しちゃう?
しちゃおうか。
二日酔いにならないよう抑えればいいんだ。
良し、そうと決まればバーでも行こう。
美味い酒と美味い飯、ついでに小噺でもあれば立派な宴会だ。
さ、向かうか。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。翌日は勿論二日酔い。なぜなら彼もまた、酒飲みだからです。
「居酒屋 ゲンセン」・店主が厳選した食材を取り扱う居酒屋。豊富なフードメニューどれもが美味しい。