表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勝利の女神は微笑まない~最弱だった僕が神になるまでの軌跡~  作者: あろ
第4章 ジェフティ・トートリス
99/102

第98話 ジェフ師匠の実力

翌日もその翌日も、師匠に連れられてダンジョンに潜る。

師匠は魔石や魔鉱石を採るフリをしながらも、しきりに何かを探している様子だったが、その()()は見つけられずにいる。


勿論その道中の僕らは、相変わらず師匠の攻撃から身を守ることに必死だったが。


そしていよいよ、最後の階層である地下25階層に到達してしまった。


「……中も探索が必要か。」


師匠は目の前に立ち塞がる巨大な石扉(いしど)を見上げ、ボソリと呟いた。

僕らの10倍はありそうかという程の高さ、それに伴う横幅。

床についた開閉の跡を見る限り、厚みも相当ありそうだ。

そして古めかしくも美しい、ノスタルジックな彫刻が施されている。


「ふむ……。 よし、お前らコレ飲んどけ。」


「わっ! えっと師匠、これなんですか?」


扉をながめて逡巡(しゅんじゅん)していた師匠が、ふと投げ渡してきた小瓶をなんとかキャッチする。

中身はドブ川のような色の液体だ。粘度もかなり高いようで、瓶を傾けてもモッタリとした動きをしている。

同じく受け取ったヒロも、頬が引き攣っていた。


「この私特製のポーションだ。 効果は保証する。」


「飲む……? これをか?」


「見た目はそんなだが、無味無臭さ。安心しなさい。」


僕は意を決して瓶を開け、恐る恐る無臭であることを確認する。

ヒロと目線で押し付け合いをしたのち、僕が根負けしたのだ。


(えぇい、どうにでもなれ!)


僕は(なか)ばヤケクソ気味に、中の液体を喉の奥へと押し込んだ。

味は確かにしないが、常温でドロリとしたこの液体は、飲み込むには中々に厳しいものがある。


飲み干すと同時、体から青い光が淡く放たれたかと思うと、(おさ)まった頃には僕はその効果に目を見張った。


「わ――、 わかんない!!」


さっぱりポーションの効果がわからないのだ。

説明を受けなければ、ただ体が青く光るだけの不思議ぐすりだ。


「なんだ、わからないのか? ったく、ヒロマサも飲んでみろ。」


「いや、おれは……」


「いいから飲む!!」


師匠に無理やり突っ込まれた瓶の口から、ヒロの口へと液体が移動する。

ごくりと喉が動くと、僕と同様に青く光るが、それだけだ。


僕らは互いに顔を見合わせ、首を(ひね)る結果となった。


「ったく、揃いも揃って……。ま、この扉の向こう―― つまりボス部屋に入れば、嫌でもわかる事になるさ。

お前ら、目を守っておきなさい。」


師匠は(おもむろ)に何やらアイテムを取り出した。天使を(かたど)ったガラス細工だ。

それを、高レベルの腕力を活かして重厚な扉に叩きつけると、ヒーーンと透明な音を奏でながら、粉々に砕け散った。

周囲に生える魔石の淡い光を反射し、細かなガラスの破片が降り注ぐ。

それらが地面に到達すると、光る液体となって溶けだし、まるで光の回路が出来上がるかのように、地面に模様が走った。


ヒュイーーーーーーーン


ファンが高速で回転するような音を立て、思いのほか静かに目の前の扉が開かれる。


「うっ、眩し……!」


あふれ出る光に目がくらむ。


扉の先で僕らを迎えるのは、巨大な石製の天使だった。


しかしその天使は、決して――僕らを癒してはくれないだろう。

そう予感させるに足るだけの、神々しさと禍々しさ、そして圧迫感を、その天使は絶妙なバランスで(たずさ)えていた。

部屋内部の壁は、卵の殻のようにつるんとした白色で、反射する光が目に痛い。

ちょうど先日師匠に見せてもらった、魔鉱石のような質感だ。


何でもないような足取りで、大部屋に入っていく師匠。僕らはその背中に隠れるようにして、おっかなビックリになり、完全に腰が引けていた。


部屋の中央まできた。壁に埋まっている天使を見上げると、なんだか妙に落ち着かない。

隣のヒロを見ると、情けなく口を開けて感心したように天使を見上げていた。

それはまるで文化財を観るような、観光にでも来たような気軽さだ。


「相変わらず嫌味な石像だ。」


師匠が地面に描かれた文様の 中心に手をつき、魔力を流す。

魔力が光を放ちながら文様をなぞるように走り、やがて一本の回路に集約されると、まっすぐ向かう先は天使の像。

天使の像の全身に光が回ると、天使の目がカッと光る。


パラパラと壁のかけらを落としながら、(おもむろ)に天使は脚を踏み出した。


ズシンと、床が揺れる。


天使の一歩一歩が、その攻撃の重さをも容易に想像させ、僕は体中の血の気がサッと引いていくのを感じた。


「来るぞ!!!」


ゴゥッッ!!!


師匠の声と同時、石造りの天使が空中に飛び上がる。

天使が地面を蹴った衝撃によって生じた、豪風。それに乗って無数の石つぶてが槍のように飛んでくる。


「うっ……、 障壁よ(バリア)!」


杖の力で障壁を展開し、それらを防ぐと 「何をしてる上だ!! 防御、早くしろ!!」 師匠の声が鋭く響いた。


はっとして上空を見上げると、天使が槍を構えて、突撃してきていた。


「……っ、 ヒロ!」


僕がヒロに声をかけるより早く、ヒロは既に僕の前に躍り出ていた。


――ギィィィイイイインン!!!!


「ぐっ、重っ!!」


ヒロの盾と、天使の槍が衝突し、激しく火花を散らした。

天使は攻撃を防がれたとなると、すぐに翼をはためかせ後退。

しかし再度上空から落下攻撃を仕掛けてきた。


「障壁よ!!!」


次は僕が上空に障壁を作り出す。

バリンと聞き慣れた音を立てて、障壁は破壊された。


天使は「上空からの攻撃は通用しない」と判断したのか、次は高く退避するのではなく、後方にとんで平面的な距離をとった。


「ほーう? なんだ二人とも。なかなか良い動きじゃないか。どうだ、薬の効果は実感できたか?」


「ま、なんとなくわかったぜ。防御系のアシストアイテムってとこか。ポーション型なのは珍しいけどな。」


師匠が渡してきた体が青く光るポーションの正体は、防御行動時に瞬発力や防御力のステータスが、瞬間的に増幅するものだ。

僕の場合は反応速度の上昇に加え、同じ強度の障壁を、より少ない魔力で展開できるようだ。


「材料を聞いたら飛び上がって、二度と飲みたくなくなるぞ。」


師匠はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

何があっても聞くまい。

僕とヒロは顔を見合わせて、決意を共有しあった。


「そろそろ、私が出るかな。」


そう言った師匠は、普段の戦闘で使用している薙刀を、大容量サックにしまい込んだ。

代わりに取り出したのは、赤い刀身に黒く禍々しいラインの入った薙刀だ。普段の物もかなり大きいが、そのさらに数段大きかった。


「さ、せっかくの機会だ。馬鹿弟子たちに、私の本気を見せてやろう。」


大容量サックからはさらに、3つ4つのアイテムを出したかと思うと、惜しげもなく使用する。

いくつかのエフェクトの後、師匠が地面を蹴った。


――ゴッッッ!!!!


先ほどの天使と同等か、それ以上の風と土埃が舞う。


「しっかり見とけよ、馬鹿弟子ども!!!」


薙刀と槍が、火花を散らす。


―― 一撃。

たった一撃、撃ち合うたびに、周囲に豪風をまき散らす。

僕らは師匠の戦闘を見逃すまいと、必死に身を守りながら目をこらした。


天使はかなりの重量級で、一撃ずつが相当重い。なのに師匠は、それらを薙刀一本でいなし、(かわ)し、ときに(やいば)(まじ)えてせり合う。


驚くべきは、師匠は前衛のジョブではないという事だ。

アイテムを使用して能力の底上げをしているにしても、あれだけ自由に薙刀を使いまわす様は、上位の戦闘系ジョブと全く重なって見える。


「なんで……。師匠、転生は『錬金術師』で止まったって言ってたのに……。」


転生出来なければ、レベル上限も上がらないしリセットもされない。そうなれば、神様から取得できるスキルには限りがあるはずなのだ。


「それだけ、戦闘を重ねてきたか、あるいは――」


「逆に、戦闘系のスキルを取って、錬金技術を自力で磨いたか。 ってことだよね。」


石で出来た巨大な天使像と、互角以上の戦闘を繰り広げるジェフ師匠。

その力強く頼もしい背中に、僕は兄の姿を重ねずにはいられなかった。


僕もいつか、あの境地に立てるだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ