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勝利の女神は微笑まない~最弱だった僕が神になるまでの軌跡~  作者: あろ
第4章 ジェフティ・トートリス
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第89話 飛び級

師匠の凶悪な顔に尻込みし、思わず後ずさる。

それに気づいた師匠は目にも止まらぬスピードで僕の腕を引っ掴み、ズルズルと引き摺りだした。


「ま、魔女かよ…」


ヒロの呟きがやや後ろから聞こえる。


「どした??なんも怖いことなんてないぞ?ん?」


本人はこれで"優しく微笑みかけている"つもりなのだろうか??


「あ、あのあの、師匠!僕今、師匠がめっちゃ怖いです!!!」


「うっせぇこの馬鹿弟子!さっさと来い!」


「いっっったぃ…!!」


師匠は青筋を浮かべて僕の頭に鉄拳を落とすと、再びズカズカと祭壇へと歩いていった。

ヒロに助けを求めて振り返るも、近くにあった木箱に身を隠している彼は手だけを出して"グッドラック"のハンドサインを送ってくる。


ヒロのばか…。今度なんか奢ってもらおう、絶対に。


祭壇の下で待つ師匠の元に辿り着くと、今までの雰囲気が嘘のようにスッと和らいだ。


「え…??」


「何ぼさっとしてんだ?やるぞ?

まぁ、とりあえず先に取得可能なスキルを教わってからだな。

えっと、あのスキルなんて文言だったかな…ったく、聖職系のスキルってなんでこうも面倒なんだか。」


ブツクサと文句を垂れる師匠の口調は、全くいつもと変わらない。

なのにどこか雰囲気が柔らかい。

ちょっと不気味である。


「あー、えっと?


『この者、魔を討ち払う者。数多の魔を払うため、進むべき道を示せ』


――だったか?」


師匠がそう唱え終わってから数秒後、師匠は何やら紙とペンを取り出して黙々と書き込んでいる。

すごいスピードで筆記していき、突然ピタリと動きを止めた。


「ふふふふふ…はっははは!!!!」


「――?!?!え、ど、どうしたんですか?!」


「ジェフ師匠……!?」


突然高笑いを始めた師匠に、僕らは困惑して駆け寄る。

それでもしばらく笑いが止まらず、瞳に涙を浮かべたところでやっと「ひぃーーー」と長く息を吸ってから落ち着いた。


「いやいや、見てみろニケ。お前は大したやつだよ。

全く私は優秀な弟子を持ったな。」


師匠が差し出した紙を受け取り、その上の文字を追う。


「これ……、ニケのスキル……なのか?」


「上の数個はな。残りは、現段階で習得可能なスキルだ。」


2人の会話を聞いて、身に覚えのない単語の羅列に納得する。

けれども師匠が、あそこまで笑い転げていた理由はわからない。

不思議に思っていると、師匠が再びその紙を手に取り、嬉しそうにニヤけた。


「いいかニケ、お前の凄いところは3つだ。」


師匠がズイと僕らの前に紙を突き出す。

僕だけではなく、ヒロまで食い入るように見つめた。


「まず1つ。単純に、数が多すぎる。選択肢が多いのは良いことだが、この数は異常だ。

普通にしてりゃ、転職5〜6回経験した位の数だな。

転職回数が多い奴らは、それだけ色んな経験をしてるから、選択肢が増えるんだ。」


「5〜6回!?そりゃ、なんつーか、凄いな。」


「あぁ、これだけでも笑っちまうくらいには、凄い。そして2つ目に、想定していたいくつかのスキルが取得候補にない。」


「えっと、それって逆に悪いことなんじゃ…?」


僕が疑問を挟むと、師匠は「わかってないな」と肩をすくめた。


「いいか?想定してたのは、コレとコレ。

つまり、神に頼らず自力で習得済みってこった。」


師匠が指し示したのは、紙の上方に書かれたスキル名だ。

たしか、取得済みだと言っていた欄にある。


「【調合初級】と【脚力】。この2つを候補に出すための訓練だったが……、ちょーっとばかしやりすぎたかな?」


茶目っけを出そうとしたのだろうけれど、師匠がやると恐ろしいだけだ。

「いや、どう考えてもやりすぎだろ」という言葉は、ヒロと2人で喉の奥に仕舞い込んでおくことにした。


「そんで3つ目は?」


「あぁ、3つ目が1番凄いぞ。

候補欄にある、このスキルだ。」


「えーっと、【錬金初級】?このスキルの何が凄いんです?」


「わからないか?いいか、重要なのはこのスキルそのものじゃない。

このスキルはな、私のジョブである錬金術師になる為に必要なスキルだ。

逆に言えば『スキル・ジョブ相互作用の法則』で"このスキルさえあれば錬金術師になれる"んだよ。」



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