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勝利の女神は微笑まない~最弱だった僕が神になるまでの軌跡~  作者: あろ
第4章 ジェフティ・トートリス
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第87話 道中にて


バァァーーーーン!!!


「おわっ?!なんだ?!?!って、またやったのかニケ……。」


俺が爆音に驚いて飛び起きると、すぐにその音の正体に思い当たる。

直後白けてきた空に、ジェフ師匠の怒声が飛ぶ。


「テンメェ、こんのアホ弟子が!!!!話聞いてたか?!材料は入れる順番も大事だっつったよな?!」


「うぅ、いったた……。わかってますよ!

だからコレより先にコッチを入れたら、効能が上がるんじゃないかっておも――」


「この馬鹿!!あの理論には例外が複数あるって、資料に書いてあったろ!

 そんでもって、基礎が出来てないヤツが応用やろうとすんな!!」


「いったぁ?!い、一々殴らなくてもよくないですか?!

僕今爆発の衝撃で、火傷してるんですよ?!」


「口答え無用!!ったく、ほら回復薬でもかけとけ。」


「わっ、ちょっと!服まで全部濡れたじゃないですか!!」


これで何度目かわからない言い合いを始め、双方ギャンギャンと吠えたてる。

それでも後始末の手を止めないのだから、あの師弟にとってはあれがデフォルトのコミュニケーションなのだろう。


バニパルを出てから、ほぼ丸一日が経過した。

道中は問答形式の座学と、徒歩移動を利用した肉体的な訓練を受ける。

そして夜になってから、寝るまでの間にニケの実技試験を行う……、という予定だった。しかしニケは、自身の予想に反して出来ないことが相当悔しかったらしい。

ジェフ師匠と俺が野営テントに潜り込んだ後も、離れた場所で爆発音を轟かせていた。

それに対して痺れを切らしたジェフ師匠が「一発殴ってくりゃ、寝るだろ。」と出て行ったのが始まりだ。


まさか明け方までやっているとは……。この調子で、目的地まで体力はもつのだろうか?


「うるさくて寝れねぇ……。くわぁ」


度々起こされた俺は、完全に寝不足だ。

周囲も明るくなってきたことだし、顔でも洗ってくるかとテントを出ると、二人は川で黒焦げになった鍋を洗っていた。

相変わらず言い合いをしていたが、ニケは俺に気が付くとパッと無邪気な顔になり「ヒロおはよう!」と笑顔を向けてくれた。

その目には若干クマが出来ているが、笑顔に陰りはない。


「おうヒロマサ、起きたか。このアホのせいで寝れなかっただろ、悪いな。」


いや、爆発音もだけどアンタの怒声もだよ……。

体づくりの賜物なのか、ジェフ師匠の声はよく響く。その声で張り上げられたら、近くではとても聞きたくない大音量になるのは必至だ。


焦げを落とした鍋に持ってきた食材を乱雑に入れ、豪快に煮込む。

木製のスプーンで味の薄いスープを掬うより、硬いパンを浸した方が美味しく食べられるというのは、フリュネーさんの元にいた時は知らなかった。


「で、結局ダメだったのか?」


「うんん。3つの課題の内、1つはできたよ。ほら見て、魔力の回復薬。超がつくほどの低級だけどね。」


そう言ってニケが渡してきたのは、小さな瓶に入れられた青色の液体。

色は暗く、かなり濁っている。俺の知ってる魔力回復薬は、もう少し明るい色だったけれど本人も「超低級」というのだから、そういうものなんだろう。


「なんだ、ずっと失敗続きなのかと思ったぜ。すげーじゃんか。」


「ん、えへへ。ありがとう。」


器に視線を落とし、照れくさそうに笑う。

そんなニケを、ジェフ師匠はここぞとばかりにからかって遊んでいた。

ニケも頑張ってるんだし、少しは褒めてやればいいのに……。

そう思わなくもないが、ニケを弄りたくなる気持ちはよくわかる。なにせ反応がいい。

俺はつい、ジェフ師匠に加担してしまうのだった。




しばらくニケいじりを堪能したのち、目的地に向けて再び歩き始める。

驚くべきことに、ニケは重りを付けて歩かされているし、ジェフ師匠は逆立ちしながら進んでいる。

因みに俺は荷物持ちなんだが、これがまた相当重い。ニケの重りよりはマシだけど、レベルの恩恵がなければ、まず間違いなく引きずることすらできない。


昼休憩の時間ニケは、夜の調合のための準備をする。

隣で素材の加工方法を教えているジェフ師匠の姿は真剣で、それに質問をしたり実際やってみたりしているニケも熱心だ。

普段あれだけ言い争いをしているのが嘘のようで、なんだかんだちゃんと師弟なんだな。

そんな和やかな気持ちで眺めていたが、ニケがなにか失敗したらしくジェフ師匠のこぶしが彼の後頭部に炸裂していた。


そして再び夜が来る。夕飯をサッと作って、野営テントの設営をする。

俺は今回初めて設営をするので、昨日ジェフ師匠に教わったことを思い出しながら、必死にテントを建てた。

少し距離のある所では、もう何度聞いたかもわからない爆発音が轟いている。

二人の応酬と爆発音は、再び朝まで続いていた。




「……大丈夫か?」


「うん、なんとか……。はぁ、さすがに眠たいよ。」


翌日ニケの隈は見るからに濃くなっていた。俺は耳栓をジェフ師匠に貰ったことで、さほど寝不足を感じてはいない。

しかし一番元気なのがジェフ師匠というのが、俺には全く納得できない。

ニケと一緒になって2夜連続の徹夜を決め込んでいる上に、あれだけ怒声をばらまいて動き回り、道中はずっと逆立ちしている。

しかも隈もなければ、疲労を一切顔に出していない。

正直言って、化け物並みの体力していると思う。




結論から言って、ニケは目的地の到着までに、与えられた課題のすべてを達成することはできなかった。

ニケは相当悔しそうにしていたが、ジェフ師匠としては想定内だったらしく、珍しくフォローをいれていた。


さてその目的地だが、小さな農村だった。

門も外壁もなく、ただ背の高い簡易的な柵に囲われただけの、質素な村だ。

この村から数分のところに、目当てのダンジョンがあるらしい。


「トートリス様、お久しぶりでございますな。」


「お、村長じゃないか。久しぶりだな。」


ジェフ師匠はこの村の村長らしき爺さんに歓待を受けた。

二人に続いて村長の家へお邪魔すると、村長と同じ年頃の婆さんが紅茶と軽めのお菓子を出してくれた。

お言葉に甘えて、温かいお茶をすする。


「この度はいつものダンジョンへ行くのですかな?」


村長が長い白ひげを撫でながら、ジェフ師匠に問いかけた。

ジェフ師匠は短く「まあ、そんなところだな。しばらく世話になる。」と答え、お茶請けに手を伸ばしていた。


「左様でございますか。では、いつもの部屋をお貸ししましょう。鍵をお渡ししますぞ。」


「助かる。」


婆さんが箪笥から取り出したカギを受け取ると、ジェフ師匠はスッと立ち上がって村長の家を出て行く。

俺たちはジェフ師匠があまりにも突然出て行ったので、食べかけのお茶請けを大慌てで押し込み、村長たちにお礼をいってジェフ師匠の後を追いかけた。


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