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勝利の女神は微笑まない~最弱だった僕が神になるまでの軌跡~  作者: あろ
第4章 ジェフティ・トートリス
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第85話 師匠の所属組合は

「へぇ?世界一の冒険者に、ねぇ?」


師匠はニヤニヤと半分馬鹿にして、笑いながら僕らの話に相槌をうつ。

そんな師匠の様子に、僕らは二人で顔を真っ赤にして「ソウデス……」とつぶやく事しかできない。


あのあと宿に戻った僕らは、先に帰っていた師匠に「騒ぎを起こすな馬鹿どもが」と怒りの鉄拳を食らい、その後ことのあらましを説明していた。

結局宿屋での騒ぎは、受付の人に責められた師匠が納めてくれたらしい。

……のだが、冷静になって振り返ると、自分たちの言動すべてが恥ずかしくて、語るに語れない。


ひとしきり僕らを小ばかにした師匠は、やっと満足したようで自身の荷物を持って立ち上がった。


「ま、ニケもいい経験になっただろ?他人の考えを、話も聞かず決めてかかるのはよくないってこった。」


「う、はい……。」


「明日も朝一の馬車に乗る。今日はさっさと寝とけよ。」


どうやら師匠は、ヒロが僕と一緒に来るつもりでいることを察していたらしい。今にして思えば確かに何度かヒントは送られていた。

「ヒロマサと話さなくていいのか?」「ヒロマサのことはどうするんだ?」と、しつこく聞いてきたのはこのためか、と納得する。


師匠の言葉に従って、僕らは互いの寝床に潜り込み、悩みがなくなったことで僕は久々に安眠を得られたのだった。


「って、寝坊した!!!!ヒロもなんで起こしてくれないのさ!!」


僕はとっくに朝の準備も朝食も終えて、隣のベッドで武器の手入れをするヒロを睨みつけた。

ところがヒロは楽しそうに笑って言う。


「昨日俺を置いていったから、仕返ししてやろうかと思って。」


「もうっ!ごめんって言ったのに!!」


言いながらバタバタと慌ただしく準備した僕は、何とか朝食も食べ、師匠の待つ乗合場に間にあった。

ヒロはしばらく呆けていたかと思えば、突然馬車の上でポツリと言った。


「ニケお前……、朝の準備バカ速いな?」




その後の道中は穏やかなもので、師匠からの課題とヒロとの会話、そして日々の体づくりに忙殺された以外は特にトラブルもなく、ついにバニパルに到着した。


手続きを終えて街に入ると、ヒロは感嘆の声を上げた。


「へぇ。ここがバニパルか。あのでけぇ建物が例の大図書館か?」


「そうだよ。知識の都たる所以ってやつかな。ほんと、何回見てもおっきいよねぇ」


僕らが見上げているのは、街の中心にそびえ立つ、巨大な建造物だ。

噂では外壁全てがダンジョン産の特殊な物質で出来ていて、ドラゴン種のブレスですら完封できるほどの耐久性を誇るとも言われている。

そしてその蔵書数は「世界の知識全てがここにある」と言われるほどである。


「実はあれ、地上部だけでも結構大きいんだけど、地下にもあの2倍の広さがあるらしいよ。そのほぼ全部に本棚があるっていうんだから、噂もあながち嘘じゃないかもね。」


「ま、マジかぁ……。そりゃスゲーな。さすが知識の都……。」


あまり本を読むのが得意ではないらしいヒロは、その言葉に顔を引きつらせていた。

そんな僕らを師匠は「ほら、先に用事済ませるぞ」と言って先導する。

この街の路地は入り組んでいて、師匠と離れるとすぐに迷子になってしまう。僕らは慌てて追いかけたのだった。


ヒロは師匠の家で留守番――という名の課題地獄を命じられ、僕が師匠に連れられてきたのは、師匠の所属する錬金組合の本部だ。


錬金組合の本部は、バニパルの東の端にある。朝訓練の休息日に、西の端にある師匠の家から往復でお使いさせられたのは、中々苦い思い出である。

年中日の当たらない、暗い玄関を開けてすぐに見える階段を降りていくと、再び現れる扉を開けて中に踏み入る。


師匠と僕を見た途端、組合の受付担当者数名が一斉に立ち上がり、どこか慌てた様子で駆け寄ってきた。


「トートリスさん!!よかった、到着したか!

 すぐに組合長を呼んでくる、応接室で待っていてくれ!」


「あぁ。ほらニケ、ぼさっとしてないで行くぞ。」


一番ベテランらしき男性に連れられ、僕は一切入ったことのない組合本部の内部へととおされる。

「すぐに組合長を呼んでくる」と言って退室していく男性に、師匠は「ついでだ」といって、何かの書類を複数渡していた。

そんなことよりも僕は、部屋の薄暗く息苦しい淀んだ空気に、一刻も早く地上に戻りたいということで頭がいっぱいだ。


しばらくして、丁寧にドアがノックされた。直後入室してきたのは、色白でやせ細った老齢の男性だ。

魔術師の扱うような杖を支え代わりにしているように見せているが、脚運びは滑るように上品で、何とも言い難い違和感がある。


「久しいな、ジェフティ・トートリス。」


「元気そうでなによりだよ、じぃさん。緊急事態だ、挨拶は省略させてもらうぞ。

 単刀直入に聞く。手紙に書いてあったのは、本当か?裏は取れてるんだろうな?」


師匠の声は聞いたこともないくらい、張りつめている。師匠は呼び出しの手紙を読んだ時から、雰囲気がピリついていたが、組合長と呼ばれるこの男性が来てからはそれが顕著だ。


「その子は。」


組合長が視線を向けているのは僕だ。疑問符のない問いかけに、僕は威圧を感じて背中に汗が伝う。


「私の弟子だ。」


「弟子?所属は。」


「たった今申請したところだな。」


「……チッ、メギツネめが。」


二人の会話について行けず、僕は定まらない焦点で机の端を見るフリをしていたが、どうやら組合長は観念したという雰囲気でハッと短いため息を吐いた。

組合長は僕に骨と皮だけの指を向けて、睨みつけながら言った。


「今からする話は、錬金組合の所属者の中でも、本部に身を置く者にのみ話される機密事項。

 貴様の申請は今すぐ受理し、錬金組合に籍を置いてもらう。加えて、”トートリスの弟子”という特別な立場をもって、例外処置とする。」


「いいかニケ、くれぐれも他所で口を滑らすんじゃないぞ。ヒロマサにもだ。」


師匠にもそう厳しい口調で釘を刺され、僕は頷くほかになかった。正直言うと「それなら今すぐでてきますんで」と退室したいところだったが、師匠の圧力は僕に「yes」以外の選択肢を与えてはくれない。


「では本題に入る。賢者の石の、発見について。」


――賢者の、石??


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