表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/102

第81話 サクッとボス討伐

 ヒロの持つ冊子を、やや不自然にのぞき込む。

 冊子の情報によると、目の前に顔を見せている縦穴に入れば、その先はボス部屋だ。その直前で、僕らが何を悩んでいるのかと言うと……。


「うーん、やっぱり駄目じゃないか?」


「でもヒロのときは、なにも言われなかったし……。」


 小声で話す僕らは言葉を濁しつつ、背後にいる悩みの原因を伺いみる。


「お願いなんだぜ!助けてほしいんだぜぇぇぇ!!」


「おいこらサボっ!これ以上コイツらに迷惑かけんじゃねぇ!!つーか、コイツらに頼ったら意味ねぇだろうが!俺らで落とし前つけんだよ!」


 そう。先日僕らを罠にはめ、闘牛を(けしか)けてきた3人組のうち、生き残った二人だ。

 彼らがなぜ僕らに助けを求めているのかと言うと、話はあの日にさかのぼる。


 あの日彼ら2人は助けを呼びに先に地上に出たわけだが、助けを求めた相手は、既に洞窟前にいた師匠だった。

 そのせいで有耶無耶(うやむや)になってはいたが、元はと言えば窮地(きゅうち)に陥る原因は彼らが作ったのだ。

 師匠への謝礼と僕らへの謝罪を兼ねて、何かできないかと彼らなりに考えた。

 その結果、ここのボスのドロップアイテムである片手剣を、ヒロの壊れた剣の代わりに(おく)ろうとした。


 ここまでならば、話は簡単で「そんなものは要らない、気にしていない」と伝えればいいだけのこと。

 ではなぜこんなに必死に頼み込まれているのかと言えば――。


「しっかし、なんでまた倒せる確証もないのに、こんな依頼を受けてんだよ……。」


「そう、そこなんだよね。」


 彼らは何を思ったか、ついでに小銭稼ぎでもしようと、なんと討伐依頼を受けてしまったのだ。

 しかも依頼の遂行期限間際のものを、よく確認もせずに。期限が極端に短い依頼は、何度か討伐に成功しているような人が受けるのが常識だ。


 彼らは二人でダンジョンに挑み、「これ以上進むのは無理だ」と判断しては逃亡してを繰り返していた。ところが、一向にボスを倒せる目途が立たない。

 焦って依頼の期限を確認したところ、既に期限の前々日。その日から彼らはレベル上げもせずボスへの挑戦を繰り返して、すでに3回敗走しているのだとか。

 そしてなんと、今日がその期限日。


 焦りすぎずにレベル上げしていれば、なにか使えるスキルを習得できたかもしれないのに。急がば回れって、こういう時に使うんだなぁ……。


 とか考えながら、縦穴を上ってきた2人の話を聞いていたのもつかの間、冒頭の通り「助けてくれ」コールをされたのだった。


「師匠は『ボス討伐は物のついで』みたいな言い方してたし、4人で討伐するのもアリだと思うんだけど……。」


「まぁ、それはそうだが、ハッキリと『二人で』倒してこいとも言ってたぜ。」


 僕らはうーむと(うな)って腕を組む。師匠の出した課題的に、連れて行っていいのか駄目なのか。

 サボと呼ばれた末弟はどうも僕らに(すが)る気満々で、その兄貴分の2番目の男――デュアルもまた、ドランを制しつつも僕らに期待の(にじ)んだ眼を向けてきている。


「あ、そうだニケ。あの女神像で監視してんだろ?だったら、呼びかけてみりゃいいんじゃないか?」


「……!!な、なるほど!」


 ヒロの提案に僕は目から鱗だった。たしかに、師匠は先日の洞窟事件の全てを把握していたから、この女神像を使えば連絡を取れるかもしれない。


「師匠ー?聞こえてますかししょー!この2人連れて行ってもいいですか??」


「おーい、ジェフ師匠ー?」


 僕とヒロは女神像に呼びかけ、反応がないので上に下に、女神像を振ってみたりした。


「何も起きないし、師匠もこねぇ。『俺たちの判断に任せる』っつーことか?」


「そうだね……。より師匠っぽく言うなら『それくらい自分で考えろ馬鹿弟子!』ってところかな。」


 僕が師匠の真似をして拳で虚空を殴りつけると、ヒロは嬉しそうに笑った。

 話に置いてきぼりをくらい、ぽけっとしているデュアルとドランに、僕らは向き直る。


「ま、そう言うことなら好きにさせてもらおうぜ。一応お伺いはたてたっつーことで、これで課題不達成なんてケチなこと言わねーだろ。」


「師匠だからどうかな。でもそうなったら、2人で討伐しなおせばいいよね。」


「じ、じゃあ…!!!」


 僕らの言葉に、デュアルとドランは目を見開き、輝かせて食いついた。


「あぁ、一緒に行こうぜ!」





 ヒロの剣は、魔鉱石の剣にしては、あまり強いという印象は抱かなかった。

 その代わりということなのか非常に頑丈で、盾として使っても折れたり刃こぼれしたりしない。

 そして、いちいち血を拭わずとも、その刀身は輝きを失うことはない。

 ヒロから――いや、剣を扱う者からすれば、それだけで儲けものらしい。

 戦闘中でもデュアルは羨ましそうに、彼の白い剣を眺めていた。


 ダンジョンのボスはといえば、これは呆気なく倒してしまった。

 ボスの種類は闘牛の上位種1体。攻撃力と素早さこそ高いものの、頑丈さは然程通常種と変わらない。

 僕がバリアと持ち前の身体能力を活かして、ボスの鼻先をチョロチョロと動き回ればヤツは完全に僕に気を取られる。

 その隙をみて、他の3人に攻撃してもらったところ、随分アッサリと倒すことができたのだった。


「と、闘牛が動くものに反応するなんて知らなかったんだぜ……。」


 突入前の作戦会議中、ドランは先日の事件で真っ先に狙われたことを思い出したのか、若干顔を青ざめながら言った。


 その反応をみて気がついたことがある。

 師匠が僕らにボスの討伐を命じた本当の理由は、「トラウマを残さないこと」だったのではないか、ということだ。


 一度「怖いことだ」と覚えてしまうと、その後もずっと避け続けてしまうのは、生物の本能として当然のこと。

 だからこそ師匠は多少手荒でも「闘牛は倒せる存在。怖くない。」と体に覚えさせようとした。

 推測にすぎないが、あの不器用な師匠なことだ、案外そうである可能性は高そうだった。


 さて無事にボス討伐できたわけだが、このダンジョンのボスから取れる素材は大きく3種類。

 ツノ、蹄、皮だ。

 そしてドロップアイテムが、ガラス玉4つ。


 どういう仕組みかは知らないが、ダンジョン内のボスを倒すと部屋の中に宝箱が降ってくる。

 まるでダンジョンが落とし物をしたような、その様子から「ドロップする」と言うようになったとか。


 ともかく僕らはそれぞれ目的の物を手にし、ダンジョンを後にしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ