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第14話 ×××

*性的暴行要素、同性愛要素を含みます。苦手な方は読みとばしてください。

読みとばしても問題ないよう、今回は短かめにし、次回の最初に今話のあらすじを載せます。


 パライさんが頭上でそれは楽しそうに笑っている。

 声に歓喜と興奮が滲み、部屋の空気が変わる。

 それとは対照的に、僕は混乱と恐怖に支配されていた。

 パライさんが背中から僕に馬乗りになる。

 ヒタリと冷たい何かが首筋に当たったとき、それが彼のナイフだと気がついた。

 体の体温が急激に下がるのを感じる。

 次いで僕の耳に熱っぽい声が吐息とともに吹きかかる。


「あぁ、ニケ……その怯えた表情とっても素敵だよ。俺はね、ニケ。レンブラントの村で君を見つけたとき、神様から(たまわ)った奇跡だと思ったんだ。

 君だけが輝いてみえた。君は僕の理想そのものなんだよ。君を歪めるのが楽しみで仕方なかった。

 君を汚して、(なぶ)って、犯して、その表情が悲痛に歪むのがね!ふふふ、美味しそうだなぁー。

 この白くて綺麗な肌を、傷と僕の種でぐちゃぐちゃに汚してしまうのが。」


 彼の指がつうっと首筋を伝う。

 表情は見えないが、声色はその恍惚を僕に伝える。

 むせ返るほどの興奮の臭いが、部屋に充満する。


「ぼ、僕は男ですよ……?」


 声を絞り出して、僕の性別を認識させる。

 今まで僕に言い寄ってきた人は、僕が男だと知ると一気に興味をなくしていったから、その可能性に賭けたのだ。

 だが、その希望はあっさりと打ち砕かれる。


「知ってるさ。俺はね、美しいものが大好きなんだ。

 俺の奴隷――パーティのメンバー達はさ、みんな美しいだろ?彼らの見えないところはね、傷だらけなのさ。

 完璧な美しさは傷物にしてこそ際立つものさ。彼らはあらゆる美しさを集めた、俺のコレクションなんだよ。

 ふふ、ニケも今日からはそこに加えてあげるからね。」


 そう言ってパライさんは、僕の服をナイフで切り裂くと、腹に手を這わす。

 彼が触れたところから、得も言われぬ不快感が広がっていった。


「やめっ……やめてください……!パライさん!ど、どうして……こんな……」


「ん?どうしてだって?君は恋に理由をつけるのかい?君は美しいものを美しいと感じることに理由をつける?

 君はしたいことにしたいと思う理由を一々考えるの?答えは簡単だよ、シたいからスるのさ。」


 ヌルリと生暖かいナメクジが這ったような感覚が、僕の首筋を襲う。

 僕はパニックが加速して、声も出せずにハクハクと必死に息を吸っていた。


「でも、そうだな。明確なメリットを提示してほしいなら、君を奴隷にする為かな。

 俺は奴隷化が得意なジョブ、スキル系統でね。発動条件が僕が先に何かを与えること。だから僕は、恥辱(ちじょく)を与えることにしているんだ。

 素晴らしいだろう?これを使ってみんなも俺の配下に加えたんだ!

 あー、あのときの顔といったら……。思い出しただけでも、興奮してしまいそうだよ。」


 スキル……?そんなひどいスキルがあるの?

 僕は「スキル」という、自分の意思が及ばない力で強制的に自身を変容させられるという事態に、ひどく恐怖を覚えた。

 なんとか彼の拘束から抜け出そうともがくが、体は一向に動いてくれない。

 慌てて大きく声を上げる。


「っだれか!!!誰か助けて!」


「やっと現状に気がついたの??鈍いニケちゃんも素敵だね。

 でも残念。この宿は俺が所属する"黒の花園"専用の宿だからね。これでも俺、組織内ではそれなりに幹部に近い部類でさ。

 上層部の部屋には立ち入り禁止だから、誰も助けには来てくれないよ。勿論、建物の外に音が漏れることは一切ない。

 君が世間知らずでなければ、もしかしたら逃げ出すチャンスも、あったのかもね?ふふふ。」


 そう言って笑うパライさん。

 やけに暗く人通りの少ない場所にあることや、窓がないこと、一階の食堂では顔を隠している人が多いこと。

 気づかなければいけない要素は多々あった。

 パライさんが何か、危ない人かもしれないとは思っていたけれど、まさか僕を狙っていたとは。


「あぁ、どれだけ見ても美しい。美しいよ、ニケ。肌も、その顔も、瞳も……。君が僕の手に()ちてくれて、うれしいよ。」


 嫌らしく笑うパライさんの顔は、もはや(おぞ)ましいものにしか思えなかった。


「たっ、たすけて……。誰かっ!に、兄さん……、」


 ドガンッ


 爆発音に近い轟音を立て、部屋のドアが拭き取んだ。

 一瞬兄さんが助けに来てくれたのかと錯覚した。

 けれど、勢いよく部屋に飛び込んできた姿は兄さんではなく、トルマリンさんだった。



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