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『レタス』と『きゅうり』



「なあ、どこから調べる?」


『きゅうり』は『レタス』とロビー右側の通路を歩きながら聞く。

既に3つほど扉をスルーしていた。


「建物から外に出るなら、普通玄関だろ?ならあの玄関をぶっ壊すモノを探すか、もしくは勝手口とか非常口を見つけるしかないだろ」


「つまり建物全体を把握するって事か」


「そー言う事」


5つ目の扉をスルーしたら、直角に左に曲がる。するとさっきまで左側に扉があったが、今度は右側に扉がある。

左側には高い場所に窓があり、逆側の二階部分と思われる建物が、その通路の窓から漏れる灯りで分かる。


「こうして見ると、この建物はコの字の形かもしれないな」


「あーあり得るわー。こういう洋館って左右対称に作ってそうだもんな」


2人は建物全体について話しながら歩いき、突き当たりにたどり着く。

そこには他の扉とは感じの違った扉がある。どんな違いかというと、他が高級な扉なら、この突き当たりにある扉は業務用な感じだ。


「どー思うよ?」


「出口っぽいよな?」


2人は顔を合わせながら、目の前の扉にある取手を見つめる。


「やっぱり何かあると思うか?」


『レタス』の問いに『きゅうり』は黙って頷く。

『レタス』は後ろのポケットから財布を取り出すと、そのから10円玉を手に取り、取手に向かって投げる。


キーン


金属同士が当たる音。

大丈夫そうだ。

2人は互いに頷くと、『レタス』が手を伸ばして取手を掴む。


そしてゆっくり押していくと2人の眼前には真っ暗な部屋があった。


「なんだここ?」


「なんか物置っぽいな」


「明かりをつけられないのか」


2人は壁を手探りしながらスイッチを探すが、見つからない。

かろうじて通路の明かりで部屋の一部はなんとか見える。

色々な木箱が積み重なって置いてあった。


「なー、取り敢えずあの木箱開けてみねー?」


「あー、なんか良いものが入ってるかもしれないよな」


2人は一緒に部屋に入ろうとしたら、扉が勝手に閉まろうとする。

『きゅうり』がそれを慌てて抑える。


「これ抑えておかないと閉まるわ」


「閉まったら何も見えないから、そのまま抑えおいてくれ」


「おう」


『レタス』は部屋の中入って重なってる木箱を手に取ろうとする。


「げ!くっそ重い!これはダメだ」


そうして見える範囲にある木箱の中から、持ち上がりそうな木箱を手に取り、それを扉の抑えにしながら置く。


「取り敢えずこれから開けてみるか?」


「だなー」


木箱の蓋は簡単に外れた。

その中にはロウソクと燭台が入っていた。


「お?これを明かりにすればいいんじゃね」


「だなー、でもマッチもライターも無いんだが……」


「一緒に入れて置いてくれりゃいいのにな」


『レタス』の願望を言ったところで火をつけるものが無ければ、意味がなかった。


「チッ、他の木箱を開けてみるか?2人なら持ち上がるかもしれないし」


「あー、それでもいいんだが……」


「ん?どーしたよ」


「わりぃ、すげートイレに行きたい」


『きゅうり』のその言葉に『レタス』は笑う。


「はははは。だなー俺も行きたいわ」


「じゃ、ちょくら探すか?」


「おう」


2人は物置の扉を開けたまま、来た道を戻る。すぐ別の扉があり、『レタス』がさっき使った10円玉をまた使う。

今度も大丈夫そうだ。


「もしかしてヤバイのはあの玄関の扉だけじゃね?」


「あり得るわー、じゃ試さず取っ手に触るか?」


「……ないな」


「だよな」


2人は扉を開けて中を見ると、そこは紛れもなくトイレだった。

入って右側には個室が並び、左側には大きな鏡と洗面台がある。


「うっわ」


「くっさ」


2人は同時に顔をしかめた。

その空間の匂いときたら吐き気を催すレベルの悪臭だった。

しかもトイレ特有のアンモニア臭ではなく、生ゴミのような匂いだ。


しかも壁一面に血文字で落書きがしてある。


垂れて形が崩れたことを考えても、その落書きがなんの文字で書かれているのか2人には読めなかった。


「悪趣味過ぎるトイレだな」


『レタス』の言葉に、便意と吐き気のダブルアタックを受けてる『きゅうり』は答えるゆとりがなかった。


「もう!無理!」


『きゅうり』は手前のトイレのドアを開けてて中に入った。

洋式トイレもトイレの壁も血だらけだったが、『きゅうり』にはもう猶予がなかった。


トイレのドアを閉め、中からカチャカチャとベルトを外す音が聞こえる。


『レタス』に他人のトイレの音を聞く趣味は無かったが、まだ猶予がある身としては、どうにもここで用を足す気にはならなかった。



ザッ


ズボンを下ろした音。



ブシュ



あの音だろうか?







その後は何も聞こえない。


「?」


『レタス』は自分がする時の音を想像していたが、人によってはこんなにも音がしないものなのだろうか?


「おーい!ギリギリセーフだったか」


『レタス』は笑いながら『きゅうり』に話しかける。

だが、返事が無い。


「おい!返事くらいしろよー」


だが、やっぱり返事は無い。


『レタス』はあまりしたく無いが、床に膝をつけてトイレの下の隙間から中を見る。

そこには『きゅうり』の足が普通に見えた。


「……んだよ」


『きゅうり』がシカトしてるだけだと思った『レタス』は、トイレのドアにジャンプして上を掴むと懸垂の要領で中を覗く。




そこには




便器から伸びた金属が





『きゅうり』を串刺しにしていた




『レタス』は手の力が抜け、床に尻から落ちた。


「……おい、嘘だろ……」


そして視点が低くなった状態でトイレを見ると、さっきまで見えていたはずの『きゅうり』の足が……そこには無かった。



【きゅうり】

野菜界のアイドル。

どんなサラダでも活躍してるし、冷やし中華やサラダうどんなどでも活躍している。

本人のプライドはそれなりに高く、実は俺寿司なんだぜっていうカッパ巻きが最高だと思っている。

尚、きゅうりを串刺しにして味噌を付けて食べるアレは、料理とは思っていないらしい。

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