1.異世界転生
俺の名前は神崎透30歳。年齢=彼女いない歴で童貞の俺はいわゆる『賢者』だ。
そんな俺だが今日呆気なく死んでしまった。死亡理由は異世界転生あるあるのトラックに轢かれそうになった人を助けて死亡とかではなく、俺は持病で死んでしまった。
生まれつき身体が弱く、体育の授業では見学の方が多かったし運動会ではほとんどの競技に出ることは出来なかった。そのせいであまり仲の良い友達はできなかった。
しかし、その分勉強は頑張ったため県内でもトップの高校へ行き、一流大学にも進学した。そして大手の会社で真面目に働き続けた。それなのに通勤中に呆気なく死んでしまった。こんなに頑張ってきたのにあんまりだ。神様がもしいるのなら残酷すぎる。
俺は意識が朦朧とするなか願い続けた、今度は健康な身体が欲しいと。
◇
「ん…?」
太陽の光が部屋に差し込み俺は目覚める。知らない天井だ。そして今の俺の状況はベッドの上で横になっている。意識がなくなっている間に病院に運ばれたのかもしれない。
俺は上半身を起こし周りを見る。部屋は俺が暮らしていたアパートよりも3倍ほどの大きさで、赤いカーテンが付いている大きな窓が並んでおり反対側には木製の高そうな机と椅子が置いてある。真正面には可愛らしい幼稚園ぐらいの白髪の少年の絵が飾られてある。病院にしては派手な部屋でベッドは俺が横になっているものしかなく他の入院患者がいない。もしかしたらお金持ちの人の病室なのかもしれない。しかし、俺は大手の会社の社員ではあるが社長とかではないためこんな豪華な部屋に入院させられるのはおかしい。
コンコン
俺の部屋のドアがノックされている。病院の先生かもしれない。気になることはとりあえず先生に聞いてみよう。
「はい」
あれ、俺こんな声高かったかな?そんな疑問はさておきドアが開いた。
「失礼します」
部屋に入ってきたのは病院の先生…ではなくメイド姿の女の子だった。15歳ぐらいの見た目で身長は背伸びしたら150センチに届くぐらいの小柄な少女。髪は栗のような色の茶髪で瞳は明るい茶色。とても可愛らしい整った容姿に若さの力を感じる。
「おはようございます」
「お、おはようございます…」
あまり人と関わることがなく、ましては女の子から話しかけられたので緊張してしまう。
「ん?何かいつもと様子が…まあいっかー。お着替えです」
メイドの少女は俺の方に手に持っていた衣服を運んでくる。申し訳ないので俺はベッドから立ち上がり受け取りに行く。
(あれ…?この女の子すごいでかい!?)
遠くから見たときは小さく見えたのに、間合いがなくなると身長が恐ろしいほど高いことに気づいた。俺の身長は178センチあるが遥かに大きい。2メートルぐらいあるのではないだろうか。
「はいじゃあお着替えしますよー」
そう言って俺が今着ている服を脱がしはじめた。
「何してるんですか!?」
「えっ何っていつものことじゃないですか、お着替えですよ」
躊躇なく俺の服をどんどんと脱がしてくる。俺は必死に抵抗するも自分よりも遥かに大柄な体格のためパンツ以外全部脱がされた。
「どうしたんですかそんなに暴れて」
「どうしたもなにも服脱がされそうになったら抵抗しますよ!?」
「もしかしてもうお年頃なんですか?」
「もしかしても何も俺は成人してます!!」
「はいはい〜ほらもう着替えれましたよ。鏡見に行きましょうか〜」
メイドの少女は俺を抱きかかえる。
(俺の体重は65キロもあるのにこんなに軽々と…この人何者なんだ!?)
腕の中で暴れ回ったが「大人しくしなさい」と俺の顔をメイドの少女が胸の谷間に押しつけた。やわらかい感触と女の子独特の香りに抵抗する気力が失せていくなか「未成年に手を出した」として性犯罪者扱いをされてニュースにならないかが心配になった。
「ほら鏡を見てください、今日も男前ですよ?」
顔を胸の谷間から解放される。
(本当になんなんだよ……えっ!?)
俺は鏡に映った自分の姿に目を疑う。俺の姿はさっきの部屋にあった少年の絵そのものだった。