第五篇 城内
白い城の門が閉まっていて、中に入れないようです。
(私は、お嬢ちゃんに全てを話せるのだろうか……?)
熊沢さんには城が、少し暗く見えていました。
「ここ、覚えてる。……でも」
フロールにも城が暗く見えてきます。空を見上げた熊沢さんは、
「荒れますね……」
空を暗い雲が覆います。
「予報によれば、今年はダイヤモンドダストやオーロラが見られるみたいですよ。少なくとも、昨晩の予報では」
熊沢さんとフロールは、ホワイトキャッスルの中に入る。どうやって、門を開けたのか。お察しの通り、フロールの解錠魔法です。
「ビューティフル! これぞ、形容しがたいほど美しい内装」
「スゴいね」
フロールにツッコミを入れてもらうどころか、ボケをさらっと潰された熊沢は、ツッコミがいないことを改めて痛感しました。そもそも、”形容しがたいほど”って、伝わるんですかね?
(私の願い、この体を犠牲にしてまでの願い、本当に叶ってるんでしょうか……)
熊沢さんは溜め息をつきますが、フロールは城内を見回して、
「やっぱり、ここ知ってる。でも、なんでだろう……」
来たと言わんばかりに、熊沢は「なんでだろう」と寂しく連呼し、フロールに冷たい目で見られたことは、言うまでもない。
城内5階。廊下。
白いマントに、白い帽子を被った魔導師が、宙に浮いています。さらに、左手には杖を持ち、右手には本を持っています。杖の頭部には、透明の瓊玉が埋め込まれ、木製のようです。
「まさか左利きとはな……」
と、近くにいる少年が言いました。魔導師は無表情のまま、呪文を唱え、不気味な声で
「ワタシハ ムテキダ。ナンピトタリトモ、ワタシニ フレルコトスラ デキヌ」
「生憎、無敵だとか完璧だとかは嫌いでね。触れることくらい、簡単……」
少年は瞑想し、唱えて、
「魔法を使えるのは、お前だけじゃない」
魔導師は火焔、少年は雷電を繰り出し、その2つが衝突し、激しい爆音と煙を発します! 両者に届くこと無く、相殺したようです。少年の名は、シェイ君。
戦闘は、階段を下って、城内3階へ。激戦により、床が抜けてシェイと魔術師は2階へと転落。魔法が常に衝突し、煙が立ち込めます。
一方、城内1階では、熊沢さんが唐突に、
「やっぱり、私は口が堅くありません。葛藤をしても、天秤は傾き続けました。……お嬢ちゃん、あなたは──」
それを聞いた、フロールの表情は少しずつ変わり……
To be continued…
解錠魔法が今回も登場。なんか、毎回登場している気がするのは、気のせいでしょうか?『龍淵島の財宝』の時も出てきましたし。
さて、シェイ君が登場しました。『龍淵島の財宝』で先にヒトの姿で出てますが、本編ではお初かな。飛蝗の姿では無く、ヒトの姿で魔法を使ってます。