第三十七篇 ありったけの魔力で……
熊沢がバイクで釣り竿を宅配。
「baitを選んでたら時間がかかってしまいました」
「ベイト?」
気力も減ってきたシェイは英語の意味を考える。
「……エサか!? 間際らしいな!」
「大物を釣るなら、疑似餌より本物がいいっておっしゃってくれたんですけどね」
「擬餌なんて選ぶ必要あるか!?」
頭の回らないシェイはツッコミもグダグダだ。
「擬餌針はどのような?」
ロバが熊沢のボケを処理するようだ。
「ジャジャン! 擬餌はエビ!」
「……で?」
ロバの一言に、熊沢は持っていた釣り竿と擬餌を落とす。
(流石に、それは言わなかったけど、実際に言われると一番痛いな……。まぁ、エビは無いだろ)
シェイは熊沢が落とした釣り竿を拾う。
「熊、釣り竿の先にルアーが元々ついてるんだが……」
熊沢がやっと動くと思いきや、涙目のうるうる
「だって、鮭のエサが分からなかったんだよ……」
鮭は餌を食わないらしい。だが、釣れる。その因果関係については、面倒なので説明は割愛です。ところで、確か熊沢は鮭を釣っていたはずだが……。河童が釣れたこともあったが、釣りをしていたような……。
「鮭の餌って、塩サンマ?」
熊沢が突如そう言ったが、
「さぁ?」
釣りに詳しい者は居なかった……
さて、字数と話数、それに時間がもったいない。早く進めてくれ。
シェイは釣り糸に魔法をかける。釣り針はなく、取っ手のようなモノを先に付けた。
「熊、龍の口を目掛けて一振り頼む」
「では、代表して」
「ASAP!!」
「Let's go!」
熊沢は釣り竿を振りかぶって、大きく振る!
ルアーは龍の口のやや上、鼻に当たるかと思われたが、
「ナックル!」
急にルアーが下へ落ち、見事に口の中へ!
「俺がルアーを操作してるんだが……。あと、knuckleは"指の関節"って意味だからな。ボールじゃないが、ナックルボールの略って言うなら話は別だが……」
集中したいシェイだが、自分自身も自分が壊れかけていることを感じている。高熱で寝込んでいるときのような感じだろうか。いや、それ以上か?
シェイの代わりに補足すると、ASAPは"as soon as possible"の略で、"可及的速やかに"という意味だ。
最初はフロールの手を掴み歩いていたが、フロールが歩かなくなり、背負って歩くこととなった。スミシュにとっては、なかなかハードな気がする。いや失敬。さほどハードではなさそうだ。
フロールの意識は幻想空間に在り。その幻想空間が自分の無くした記憶の断片であることは知らず。
スミシュの目の前にルアーが泳いできた。最初は宙に浮いていたが、浮遊の力はほんの少しで無くなってしまった。
「熊、あとは任せた……」
シェイはその場に倒れ込む。栗鼠山が倒れるのもそう遅くはない。
「リールを巻けばいいんでしょうか……?」
テンパる熊沢。釣り竿が撓る。
「Hit!?」
獲物ではなく、フロール達が気づいたのか?
「ゆっくり巻けばいいのでしょうか……?」
メナードリーはその光景を見て、祈るしかできない。熊沢を見て
「戦々恐々……」
と呟く。戦々恐々とは、恐れてびくびくする様子を表す。ちなみに、この字は代用であり、"戦戦兢兢"と書く。
リールをゆっくり巻いては、時々止める。熊沢はそれを繰り返す。手応えさえも分からない。リールを巻くのを止めると、釣り竿が撓る。
To be continued…
ブログ版をぶつ切りにしているので、たまに短くなってしまいましたが……。
さて、話数の多い『紅頭巾3・4』でしたが、あと2話です。最後までよろしくお願いします。
なお次回は、同じくブログ連載時の仲間である『メイズ・ラビリンス』に合わせて、23日夜に更新です。




