第三篇 迷いと覚悟
フロールの支度を待つ熊沢さんは、株価をチェックしていました。別に、株をしているわけではありませんが。すると、思わぬものが。
"熊沢書店 221 228 217 225 ▲3"
「あれ? ここ、株式会社だったんだ……」
「くまたん、準備できたよ」
丁度、フロールが熊沢の所へ来ました。そして、フロールは熊沢に向かって、
「……ところで、くまたんって冬眠しないの?」
「……あの、お嬢ちゃん……、ちゃんと私達の話を聞いてました?言いましたよね? 元々は、人間だったって……」
熊沢に不安が募ります。
ワム・ステュクス川とは、三途の川を意味していると言っても過言ではないかもしれません。また、ウユービッグブリッジも烏有、烏んぞ有らんや、つまり何も無い状態を示します。いかに、この橋と川がマイナスイメージで捉えられているかが分かりますが、何故に漢文なのでしょうか。
フロールが話を聞いていた頃、外では靄がかかっていましたが、徐々に濃霧へと変わったようです。ちなみに、靄と霧は、1キロ先が見えるか見えないかの違いです。
熊沢はバイクの速度を緩め、橋の手前で停止します。
「どうしたの?」
フロールで聞くと、熊沢さんは確認のため
「本当に、行くんですか?」
「行くよ! 皆のためにもね」
純粋なフロールだからこそ、熊沢さんは迷っているのかもしれません。
「Repentance comes too late……。後悔しませんね?」
「後悔なんてしないよ。ここで立ち止まることのほうが後悔するよ。Nothing venture nothing haveでしょ?」
フロールがそう言うと、熊沢は
「怖じ気付いていたのは、私だけかもしれませんね。ただ、お嬢ちゃんにも、呪詛石の危険が及ぶ可能性はありますので、十分に注意してくださいね」
熊沢さんの心配事は、どうやらフロールが呪詛石に近づくことで、フロールも別の姿に変わるのではないかと、心配していたようです。飛蝗君から聞いた話だと、姿が変わると魔法が使えなくなります。ただ、熊沢さんひとりではどうすることも出来ず、呪詛石の被害者が増えるばかりになってしいます。つまり、フロールへの協力は必要不可欠でした。
フロールは、純粋な心で熊沢さんの背中を押し、熊沢さんは一呼吸し、覚悟を決めます。
「dilapidated。おんぼろ橋を渡るには、空へ羽ばたくしか無いですからねぇ……。しっかり掴まっていて下さいね。橋への負担を減らしますから」
アクセル全開でウイリーし、ジャンプ! そのはずだった……。
「あっ、ジャンプ力が……」
2人乗りで、かつ橋の全長が異常に長いため、予測着地地点は遥か彼方……
着地と同時に橋が軋み、嫌な予感が過ります……
To be continued…
この世界に株価あるんだねって話ですが、おおよその作品は同じ世界のどこか別の場所で、なおかつ時間軸も別で展開しています。そのうち『路地裏の圏外』か本編同士で繋がるときがあるかもしれません。というか、どっちも今後あるんですね……。