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紅頭巾Ⅲ・Ⅳ ~呪詛石の戦慄~  作者: サッソウ
紅頭巾Ⅳ
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第二十九篇 国王

「メナードリーよ。あの少女の言う戦争のことは誠かな?」

 国王は側近に仕えるメナードリーに聞いた。

「……それは」

「相変わらず、喋るのが下手だな。もう少しはうまくなったかとは思ったが……」

「すみません…」

「謝るでない」

「あっ、すみません……」

「……まぁ、よいだろ。異国からの訪問者。城の外に倒れていたから助けたものの、あの少女は一体……。しかし、急ぐことはない。じっくりと情報を集めるのだ」

 国王は気長に待つタイプだったようだ。ここまででシェイとイオが、それぞれある可能性を考えた。確率は非常に高い。

 シェイは過去にフロールが行方不明になったことを知っている。そうは言っても、5歳か6歳に満たないぐらいだろう。また、フロールは罰を受けていた。時渡り魔法の使用によって……。真相は簡単だ。フロールがなんらかの原因で過去に飛び、国王に未来のことを魔法で伝えてしまったことだ。近いうちに正体不明の敵が現れるということだ。ただ、"近いうちに"とはフロールにとっての時間感覚だった。戻って来たときに、罰を受けて非難の対象となった。そのフロールをシェイはかばっていた。ただシェイはその罰が何かは知らない。フロールが時間移動した時期にルディシオンとされる誰かがディアモスを復活させた。そのタイミングも怪しく思えてきた。

 一方、イオは、国王が龍であるということは、イオと同じく国王は器であり、封石が作用するはずであると考えた。ならば、封石の力が足りないのかと思っていたが、時間を考えるとこの龍が最も古いことが分かった。つまり、もう人間に戻る猶予など()うの昔に終わっていたのだ。人間の記憶などもうないのか。それは分からない。

 即伝達魔法により、まだ1秒さえも経っていない。シェイとイオの考えも脳内のみで処理され、さほど時間をくってない。ただ、シェイはフロールの母親の魔法により少々時間の経過を早く感じている。

 再び回想へ。国王は他の者にも同じ質問をした。無論、返答は子供だから()(たら)()だという意見が大半を占めていた。

「国王様、橋の着工はまだでしょうか?」

 ある若者が国王のもとを訪れて質問をした。国王は

「橋は架けるが、ただ単に架けるだけではつまらないだろう」

「と(おっしゃ)いますと」

「橋に絡繰(からくり)を…」

 熊沢はすぐに自分が会心の一撃(クリティカルヒット)を喰らわせた橋を思い出した。確か橋の名は、ウユーブリッジだった記憶がある。

(いえ、あれは偶然であって、私が(とど)めを刺したわけではありませんし、アクシデントですよ……アクシデント。自分で自分につっこむこんな私って……一体……)

 ウユーブリッジに仕掛けがある。その絡繰(ギミック)については一切の情報が無い。しかし、ロバに聞けばその一部ぐらいは知っているのではないかと思うも、回想が終わらない限り聞くにも聞けない。


 回想を一部抜粋により簡単に説明すると、この後国王が橋に施したギミックは敵国からの侵略を妨げるものであり、龍とは無関係のようだ。橋の着工とほぼ同時期に、国王のもとへ手品師を名乗る女性が現れた。この手品師が闇商売の魔法使いであった。しかし、魔法使いで国王に信用してもらうための魔法というのは(でっ)ち上げで、(あたか)も沢山の人を救ったようなありそうな話で国王の信頼を得てしまった。元々、この国王は情に(もろ)く、あまりにも人を簡単に信用していた。その分、民からの支持はよかったのだが、それが裏目になってしまったのだ。その女は異国の技術を高く売り付けた。

(妙にリアリティーあふれた話ですね……)

 熊沢もボケを挟む気にもなれないようだ。それに、ボケても自分の脳内での処理だから、ツッコミはいない。今ボケると、火傷(やけど)で済む話ではなさそうだ。

(異国の技術……)

 イオには思い当たる節が多い。国王はその異国の技術により犠牲者となったという推測をした。ロバの回想もそれ以降国王の姿が一切現れず、代行者を名乗る女が主導権を握る形となっていた。映像は(おぼろ)()で、風貌は分からない。推測でしかないが、その女が国王を騙して異国に国王を売ったと考えるのが妥当か。国王は龍に姿を変えられた。

 ファンタジー風に言うならば、悪い魔女が国王を罠にかけて国を乗っ取り、国王は龍に姿を変えられてしまった。龍の姿となった国王が今、記憶がなくて街で暴れている。龍を、国王を救うため、フロールとシェイ、熊沢たちが力を合わせて立ち向かう。そういったところだろう。

 即伝達魔法の効果が切れて、シェイが即座に質問

「国王イコール龍だが、元々2体だったはずだが?」

 ロバが答えられない質問か否か考えるより、聞きたい質問も聞いておく。ロバは回答した。ただ一言。

「国王は双子だったのかもしれません」

((ずい)(ぶん)、あやふやだな……)

 シェイはもう1つ質問したいことがあったが、聞かない。その質問はメナードリー本人に大きく関わる質問である。メナードリーの年齢について。

 なぜシェイは聞かなかったのかというよりも、なぜ聞けなかったのか。それは、なんとなく分かっているからかも知れない。ロバとしてなら質問に答えられるけれど、メナードリーとしては質問に答えられない。


To be continued…


本編にあるとおり、ここまでの話をまとめるとこうなります。

悪い魔女が国王を罠にかけて国を乗っ取り、国王は龍に姿を変えられてしまった。龍の姿となった国王が今、記憶がなくて街で暴れている。龍を、国王を救うため、フロールとシェイ、熊沢たちが力を合わせて立ち向かう。

難しい話をしている分、憶えてないことが多いけれど、大筋は流石に憶えてます。8年前ですが。

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