第二十七篇 助ける方法
森の方が赤く燃え上がる。いつの間にか、豪雪は疎らにちらつく程度の雪となっていた。しかし、相変わらずの厚い雲で昼夜を問わず真っ暗で、時間を忘れる。
赤く燃え上がり、黒煙を上げる。
その光景に、全員が喋ることさえ出来なかった。森と関係を持たないイオは、過去の焼失した建物などがフラッシュバックしていた。首飾りを握り、
(あってはならないんだ……。二度とあんなことは……)
シェイは後悔する。しかし、それは次なる固い意志となって現れる。
「護るべきは、自分ではない……」
自ら、リムジンから降りて魔法を使う。
熊沢が驚くも、何も言わなかった。
フロールから姿が見えるようになってすぐに、シェイに重い負荷がかかる。
(フロールの母親の魔法か……)
無駄な詮索はしない。フロールの結界が崩れ、龍が向きをかえる。
「フロール、何で龍に攻撃しなかったんだ?」
シェイは半分分かっている質問を敢えてした。フロールは
「だって、メネア君も攻撃してないよね?」
フロールがまだシェイをメネアと呼んでいることに、多少悲しく感じた。しかし、もう決心している。全ては自分が責任を取ることを。
「龍は倒さないでもらえるか?」
イオが2人に言い、すぐに聞かれる前に補足する。
「あの龍も助けたい」
敢えて"を"でなく"も"にした理由は、方法があり成功したことがあることを意とするためだ。
ところで、誰もつっこまないが、龍とドラゴンは一応異なるモノを示す。しかし、龍・竜を英語に直すとドラゴンになり矛盾する。ドラゴンは翼と爪をもつ。竜は4本の足、2本の角、耳や髭をもつ。ただ、この龍は特殊でありどちらでも通用しそうなので、このまま通す。
シェイは口に出さず
(龍を助ける、か。異論はないし、おそらく……)
「賛成!」
フロールが賛成した。おそらく攻撃をしなかった理由は、龍を倒したくなかったためだろう。ただ、現段階では龍を助けるのが目標でそのあとは分からない。イオに考えがあるなら別だが。
(さて、どこまでオブラートに包んで話せるか……)
イオは決心して、
「作戦はあの龍を地上に落とす」
危うくもう一つの選択肢も言いそうになった。龍を誘導して、高い建造物から飛び移る。ちなみに、魔法を使えば龍の上に飛び乗るぐらい容易だろう。しかし、この選択肢を言えば封石について話さなければならない。ならびに、実例などを上げる必要もあり、イオにとってマイナスになることだらけである。
「地面に落とした後、どうする気だ?」
シェイが当然の質問をする。
「俺達はあの龍が暴れる要因が分からずに、結局捕まえ仕損じた」
「理由を話すと時間がかかるので割愛しますが、あの龍を本当の意味で自由にすることは叶わない…。ただ、現状から見て、早期に回復しないと取り返しのつかないことになります。あの龍を地上に留めてもらうだけで……」
イオは自分から話を切り上げて
「後から話しますので、頼みます」
そう言って、龍の方へ走る。
「フロールの言う通りに俺達は動く。どうする?」
シェイの質問にフロールは
「あの龍を飛べなくすればいいんだよね?」
つまり、賛同を意味する。
龍を地上に落とすとしても、方法が限られる。
「フロール、あの龍の視界を遮る魔法を頼む。俺は魔法糸で龍の行動を制限する。熊沢はバイクでまた頼む」
フロールが魔法で布を出し、龍の顔を覆う。暴れる龍に、熊沢運転のバイクで追い付いたシェイが魔法糸で龍の行動をコントロールする。
一部始終を見届けるロバは意味深な発言、
「あの龍が素直に言うことを聞けばいいのですが……」
何かを知っているかのような言い方であった。それもそのはずだった。このロバの正体は、国王に元々仕えていた人物であったのだから……。
「やっと思い出せそうですよ……、国王様」
To be continued…
これを書いたのは、2012年2月頃。もう8年前なのか。信じたくは無いが……




