第二十六篇 結界
再び旋回する龍はフロール達の方へ飛ばずに、別の方向、街の方を見る。
「逸れ龍、潜竜。聞けば分かる……はず」
タワーにいた少年は、龍を見て
「残念ながら、記憶にありませんがお久し振りです」
龍は少年を見る。
リムジンに乗っているシェイはカーテンの隙間からその光景を見る。
(誰だ? 魔法使いではなさそうだが……)
熊沢とフロールもその光景を黙って見ていた。
少年はカバンからあるものを取り出す。龍の態度が一変し、少年へ火の玉を吐く!
「危ない!」
フロールが魔法を使う前に、少年は背中の鞘から剱を出して火の玉を裁断。
「封石を拒否……」
少年の目付きが変わる。
「ねぇ? 君、名前は?」
フロールが少年へ叫ぶと、少年はフロールの方を見て少し考えたあと龍をチラッと見た。剱をしまって、フロール達の方へ歩み寄り、
「俺はイオ・センタガス」
少年の名はイオ。誰よりも早く、ロバが
「"センタガス"というと、確かどこかの国を統治していた方を思い出したのですが……? あ、いえ、不躾な質問で申し訳ありません」
「いえ……。この名前は本名じゃないから……」
龍が火炎を周囲に吐く。イオはすぐに切り上げて
「まず、あの龍をどうにかしないと……」
イオは、過去は容易に語るものではないと学んでいた。
シェイはリムジンのカーテンの隙間から、イオが石を持っていることを見逃さなかった。
(呪詛石か……?)
フロールは魔法で龍の行動範囲を縛る。結界より外に出ることはできない。
「結界の魔法があるなら先に出して下さいよ」
熊沢の言うことはもっともだ。結界魔法を使えば、あれほど龍を追い掛ける必要はなかった。だが、ロバがそれを否定するように
「結界魔法は継続的な魔法で魔力の持久なども言えますが、最大の欠点は位置指定魔法の特徴である当事者の移動不可能と魔法併用禁止。つまり、結界魔法を用いた場合、当事者以外の人間が対象物を押さえ込まなければならないということです」
「つまり、お嬢ちゃんは結界以外のことは出来ないってことですか?」
熊沢にロバは頷いた。しかし、シェイは
「……特定結界魔法。特定の人や物を結界内に封じる魔法で、魔力の消費量は尋常じゃないはず。フロールの魔力に底はあるのか? ……ここまで多くの魔法を使っていて、普通は倒れていてもおかしくはない。それなのに……」
龍は結界の壁に衝突して叫ぶ。結界魔法により制限されているフロールは
「後は任せたよ」
事情を知らない者以外は、(誰に?)との疑問。特に、シェイとロバはその言葉が妙に感じられた。熊沢はイオに言ったと思っている。だが、イオは自分に言われたとは思っていない。
栗鼠山がシェイへクルミを投げつけ、後頭部に直撃。
「イテッ」
シェイは栗鼠山の方を見ると、栗鼠山がまたクルミを投げつけ、シェイの額に直撃。
「……まさか」
たった1つ、栗鼠山が先程のフロールの台詞によりシェイへ早く行けと言っているのではないかと考えた。栗鼠山の人柄…リス柄から考えても、その行動に深い意味があると思われる。
しかし、フロールに会わないと決めていた。どうするか迷う時間は惜しい。
一方、龍は結界をお得意の火炎で攻撃するも結界は無傷。イオは封石を使うタイミングを探すも見つからず。
もし、結界の効力持続時間を知っていれば、こんなにも拒むことは無かったはずである。結界の効力持続時間は40分。だが、特定結界魔法のため効力持続時間は5分の1の8分。既に3分が経過していた。そして、この8分が無駄となる……。
早刻魔法。時を操ることは禁忌であるからして、この早刻魔法はある特定の人物に時間を早く感じさせる魔法である。3分ぐらいだと思ったら10分以上経過していたとかいう感じだろうか。フロールの母親がシェイに条件発動魔法としてかけていたようだ。条件はフロールから半径5メートル以内に近付けば発動する。リムジンの中だろうと、半径5メートルに入っていれば発動。
そして、最大の問題。龍が結界へ攻撃をすることによって、結界の耐久がガクッと下がってしまう。あと5分程が3分未満となる。
予定外の出来事が発生する。龍が火の玉を溜めて口を開くと、火の玉は結界の外に突如としてワープして加速、通過中に街を焼く!
「あの龍、次元を移動させた!?」
シェイが窓の外で起きた出来事に目を疑った。
熊沢は火の玉が放たれた方向を見て
「あの方向には森が!」
位置からして、フロールの祖母の家がある近辺の森だろうと推測される。
To be continued…
結界魔法は『MOMENT・STARLIGHT』で、一部先取りした魔法ですね。あと、イオのフルネームは、こっちで先に出ちゃいました。
紅頭巾3・4はかなり長いな。5月ぐらいまでかかりそう……




