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紅頭巾Ⅲ・Ⅳ ~呪詛石の戦慄~  作者: サッソウ
紅頭巾Ⅳ
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第二十三篇 色の薄い街

 代償は大きい。リムジンで気絶していたシェイが目を覚ますも、体が動かない。少しずつ右手を動かして、生きていることを確認する。

「気が付きましたか?」

 シェイは声がする方へ顔を少し向き、

「メナードリーさんですか?」

「はい。私のことは、驢馬(ロバ)で結構です」

「……メナードリーさん、フロール達は?」

「外で家宅捜索をなさっています」

「家宅……捜索……。……外で?」

 ため息をした後、シェイは右手で魔方陣を描く。

「タブーだけど、この際は仕方無いだろ……」

 自己治癒。またの名を自己再生。魔法使いにおいて、回復魔法使用者が自身の魔力を回復させてはならない。他者への回復のみ使用を認める。この禁止事項ができた背景には、強力な回復魔法をもった者が自身を回復させると、魔力の増減の差が大きければ大きいほど長期戦に持ち込むことが可能のため、有利となる。実際、過去に回復魔法を自身に用いたことにより、魔法使いの一番に上り詰めた者がいた。しかしその者は自身に回復魔法を使いすぎにより幻覚に襲われ、暴走した挙げ句、死亡したという事例がある。

 シェイは回復魔法を使用後、体がまだ重いがゆっくりと起き上がった。

「残った魔法が少なかったけど、ギリギリ動けるぐらいには回復できたかな…」


 熊沢とフロールは、フラワーショップ・紅の店内を捜索。しかし、何も収穫は無い。ただ1つを除いて。

「くまたん、カレンダー見た?」

「タイムスリップですかねぇ?」

 カレンダーの日付が気になるようだ。


 カレンダーの日付は何年も前のモノだったが、印刷の字が薄れて年は不明である。

「昔のカレンダーを掛けてあるということでしょうか? あんなに薄れるはずはないでしょうし……」

 熊沢の推測は的中していた。


 シェイはフロール達との鉢合わせを避け、店から遠い方のドアから降りて身を隠す。周辺を観察して、

「現実世界にあらず……。誰かの記憶の中か?」

 街は色が薄れているが、熊沢書店などの一部店舗は色がついている。だが、少し角度を変えると曖昧になっていた。

「……フロールの、それも昔の記憶と考えれば説明がつくけど……」

 シェイが全てを考えきる前に、ガラスの割れるような音が周囲から響く。

 その音を聴いたフロールと熊沢は外に飛び出し、周囲を見渡す。

 シェイはリムジンの陰に隠れて周囲を見渡す。

 白い空。決して雲ではない白き天井にひびが入り、巨大な穴が発生する。白い天井の穴から黒き底知れない空間が垣間(かいま)見られる。

「ドラゴンデストロイ」

 意味不明な発言をする熊は無視して、龍が天井を破壊する。

(全て破壊されたらどうなるかなんて、未知の領域だぞ……)

 シェイはまだ魔法が使えるほど回復していない。フロールと熊沢はその光景を眺めるだけ。天井は半分以上が無くなってきた。

 箱のような空間。縦横高さ、全てに制限がある。色塗りの完成は程遠い塗り絵に、無数の破損。出口無き今、龍を止めるしか道はない。


 空間の天井が7割にまで損失したときだった。リムジンの中から光が周囲に放たれ、目が覚めると、豪雪のなかにいた。時が動いたのではなく、元の空間に帰ってきた。

 リムジンの中にいるのは、ロバと栗鼠山のみ。消去法により、栗鼠山が何らかの力を使い空間を脱した模様。栗鼠山の正体にシェイと、意外にも熊沢も一層怪しく感じたようだ。しかし、熊沢は軽視して

「もしや、教官もマジシャンでしたか?」

 改めて説明すると、熊沢が免許を取るときの教官が栗鼠山だったため、熊沢は栗鼠山のことを今でも教官と呼ぶ。

 栗鼠山はクルミをただ割る。割り続ける。一切喋らない栗鼠山に、シェイは違和感さえ感じ始めた。

 一方、フロールは豪雪のなか雪だるまを作り、(ゆき)(むろ)を作り始めた。ちなみに、雪室とはかまくらのことである。


 豪雪のなか、龍が暴れる。

「このままだと、街が崩壊しますよ!」

 熊沢の言う通りだろう。だが、フロールは

「あの龍、何で暴れてるのかなぁ?」

 と。フロールの疑問。普通ならばスルーされがちだが、熊沢がこれを拾い、

「暴れる場合、故意か過失か」

()(ひつ)の故意……」

「お嬢ちゃん、何故そんな言葉を……。その言葉の意味がイマイチ、ピンとこないのですが……」

 その会話を聞いたシェイは

(心理状態の問題だけど、故意にかわりないってことだな……)


 豪雪は勢いを増す。フロールは魔法で身を守る。もちろん、熊沢の身も。

「龍にいつまでも時間をくって、それじゃ魔法使いなんてやめてしまえば?」

 フロールの背後から声がして、振り替えるとフロールの母親がいた。

「お母さん……」

 再会にフロールが涙する。いや、母親のオーラに(あっ)(かん)され()(しゅく)して涙が溢れていただけだった。

 母親は魔方陣どころか何も使わずして、呪文を簡潔に述べると、龍の周りを文字のような模様が描かれたリングが取り囲み、龍が先程以上に苦しみもがく。

 フロールは母親に

「龍が苦しんでるよ! やめてあげて!」

 しかし母親は無視。シェイはこの魔法の正体を悟った。

(龍を殺す気だ……。暗殺魔法。ランクが上でさえ使えるはずのない魔法……)


To be continued…


フロールの母親、登場。完全に敵みたいな感じだけど……

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