第十九篇 ランダム
フロールのランダム魔法で、巨人が出た。ドシーン! ……。
「違うの出たけど、行っちゃぇ」
フロールが巨人に命令した。熊沢が
「お嬢ちゃん、余計な一言でgiantの威勢を殺さないように……」
即座にシェイは
「お前が言うのかよ」
このコントを見たロバは微笑んだ。
「仲の良いメンバーですね」
そんなやり取りのなか、巨人が龍を抑える! が、龍が暴れて尾が熊沢のバイクに激突!!
「アァー!? 五千万のバイクが!!」
熊沢、失神。
「五千万のバイクなんか、戦闘が起こることが分かっているのに乗ってくるなよ……」
シェイはそう言ったが、フロールが
「メネア君も乗ってたよね」
「何とも言えないけど、バイクの持ち主兼運転手は熊だからな……」
いつの間にか、フロールに対してため口になっていた。フロールはランダム魔法を続けて唱えるが、空振り。ロバは道路地図を広げて、
「ランダム魔法で出るモノは、自分が目にしたモノや体験したモノでなければならない。でしたよね?」
「あと、想像したことのあるモノでも大丈夫らしい」
シェイは実のところ、ランダム魔法が使えない。階級を少なくともあと2つ上がらなければ、使用できないのだ。フロールの階級ならば、タブー以外はほぼ全ての魔法が使用できる。階級は、協会が定めているらしい。詳しいことは、魔法使いでも、ごく一部の人が知っているぐらいで、他は噂のみだ。
影が最も薄くなっていた、栗鼠山は尚もクルミを割っていた。熊沢が一言、
「あっ、そういえば教官もいたんですね」
それを聞いた栗鼠山は、割っていた手を止めて、熊沢を睨み付けた後、大きく振りかぶって、割っていたクルミを投げる!! 熊沢の顔面直撃!!
「痛いですよ、教か……」
熊沢は一瞬間だけフリーズした。そのすぐ後、栗鼠山が大量のクルミを熊沢にぶち当てる!!
「イタタタタタタタタ──」
1秒間に3個のクルミが激突!
「くまたん! バイクが星になったよ!!」
フロールの声がかろうじて熊沢に届いたようで、熊沢は涙を流していた…
熊沢のバイクは壊滅的だ。
熊沢とシェイもリムジンに乗り、再び飛ぶ龍を追うこととなった。
7年前の無未来事件。ルディシオン。フロールの母方の曾祖父。フロールの母親の失踪。ディアモス。複合キメラ第二形態。シェイにフロールを託したフロールの曾祖父。呪詛石。20年前の館の焼失。
一旦、整理する必要がありそうだ。それに、熊沢の兄の話とクェーヴァーの話に若干の矛盾があることに気付いているだろうか。熊沢兄は火事で父方の曾祖父が亡くなり、曾祖父の強い魔法が石に染み付いて呪詛石となったと言っていた。しかし、クェーヴァーは、7年前にディアモスを封印した魔術師が呪われて、その呪われた魔法によって呪詛石になった。白い城でシェイと会った魔術師により、7年前にディアモスを封印したのは曾祖父であったことが分かる。しかし、呪詛石についてはそれほど語られなかった。では、呪詛石を作ってしまったのはどっちか。答えは簡単だった。
「呪詛石を誕生させるキッカケを作ったのは、どちらも。呪詛石は3つある。フロールが見つけた、白い城にあったモノ。俺が見つけたモノ。そして、あと1つ。おそらく、城の石はフロールの母方の曾祖父の魔法だろう。俺が見つけた石はフロールの父方の曾祖父だと思う。3つ目は、俺の曾祖父の魔法だろう……」
シェイは、このままフロールに明かすつもりで言った。メネアという偽名もここまでだろう……
フロールは首を傾げて
「メネア君の父親?」
「あぁ、俺」
次の瞬間、シェイの口が動かなくなった。不審に思ったフロールは
「どうしたの?」
と問うと、シェイはただ
「何でもない……」
それしか言えなかった。我慢しなければ、忽ち涙が溢れただろう。ぐっと堪え、シェイは熊沢に向かって
「Fate was cruel.」
たった一言、そう伝えた。
テンションが低い熊沢はそれを聞いて、
「Cruel fate can be changed by my hand. I would like to believe so.」
と呟き、外を眺める。
シェイは、"運命は残酷だ"と言い、熊沢は"運命は自分の手で変えられる。そう信じたい"と呟いたのだった。
To be continued…
五千万のバイクは多分嘘じゃないかなぁ。ただ、熊沢の労力を考えると、金額以上に価値のあったものかもしれない。ちなみに、熊沢さんって何台所有しているんだろうか……?




