第十八篇 第7
突如、空から雨粒が落ちてきた。雨かと思ったが違った。空に雲が少しあるものの、雨雲には思えない。しかし、雨粒が10粒ほど降ってきた。上空には、龍しかいない。
「龍の涙……」
シェイがそう言うと、熊沢は
「天下の大泥棒が盗みそうなjewelのネーミングみたいですねぇ」
少し走ると、障害物が次々とあった。
「障害物がまたあるな……」
シェイは心当たりが少しあった。
「世にも奇妙なストーリーの始まりですかねぇ……」
熊沢はバイクを加速させた。
(他にも妙なものは落ちていた。だけど、路上に落ちていたのは数少なかった。……魔法を疑うしかないな。フロールの魔法か?)
シェイは十中八九そうだろうと思った。他に思い当たる節がないし、しっくりくる。
「ガールフレンドに罪を擦り付ける飛蝗」
「熊、何か言ったか?」
「いえいえ。"Bride in the future"といったところでしょうか」
笑う熊沢。直訳すれば、未来の花嫁。シェイは熊沢の背中を何回か殴った。
(でも、結ばれないfateですか……)
熊沢はある話を聞いていた。運命は時に残酷……
熊沢のスイッチがオンになった。何の前触れもなかった。だが、シェイには理由が分かった。
熊沢が運転するバイクは、時速120キロに達した。法定速度が定められていない道路。交通量はバイク1台とリムジン1台。
リムジンも熊沢のバイクを追うため時速120キロに達する。
「一回恐怖を味わうべきか…」
シェイは諦めた。120キロのバイク、二人乗り、熊沢をつかんでいる両手のうち、右手を離す。
人差し指で呪文を描く。
龍、バイク、リムジンの速度が徐々に落ちる。
「遠隔操作魔法の応用、同時遠隔同一操作魔法……」
複数のモノを同時に、同じ命令に従わせる魔法。禁止魔法類に属し、いかなる場合でも使用してはならないが、例外がある。シェイはある理由でこれをはじめ、一部の禁止魔法を使用しても構わない。
完全に停止すると、シェイはバイクを降りて、リムジンの方へ歩く。
フロールが気づいて窓を開けると、
「メネア君はスゴイね。今の魔法はどうやるの?」
シェイは自分がメネアと偽名を使っていたことを思い出した。危なく、自分の名前を言いそうになっていた。
「ランダム魔法は、禁止魔法類に属して、一般階級の魔法使いは使用できないんだが……」
「だって、第7なんたら階級とかで……」
「もしかして……、第7特殊非皇族……」
シェイが詰まると、ロバが
「第漆特殊非皇族魔術師血縁関係者資格譲渡無試公認階級暫定最高階級」
「よく知ってるな……。普通は、そんな長い言葉知らないはずだが。それに、知ってても覚えられないんだけどな……」
シェイは回答次第では、敵対すると感じた。しかし、ロバは
「趣味が読書。それだけです。確か、熊沢書店で魔法関係の本を読んだことがあって、長い名前だったから、面白半分で覚えたんですよ」
と、笑って答えた。
バイクを止めた熊沢はシェイとロバに、
「何ですか? その中学生が考えたような長い階級は?」
「お前、魔族のお偉いさんに消されるぞ……」
と、シェイ。ロバが説明口調で
「名前の通りですよ。まず"第漆"の"7"は漢字で漆っていう意味もあるんですよ。漆職人だった皇族ではない魔術師が代々自分の家族の人、主に息子や娘に魔法使いとしての資格を受け継がせるんです。その際に、試験や公認の必要は無くて、その時点で最高とされる階級になるわけです」
「協会があって、そこが決めたことだ。つまり、フロールの家族は全員、階級が最高ランクって訳だよ。詳しい階級区分は分からないけどな」
と、シェイ。
To be continued…
第漆の名称は、長すぎてコピペもミスりそうだな……。注意せねば。とはいえ、ここしか出てなかったような……
無駄に長い名称って、なんとなく覚えたくなりますよね。覚えられるかどうかは、別として。