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紅頭巾Ⅲ・Ⅳ ~呪詛石の戦慄~  作者: サッソウ
紅頭巾Ⅲ
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第十五篇 雪国緊急病棟24時(後編)

 気づいた時は、ベッドの上だった。シェイ、いや、フロールの前ではメネアという偽名を名乗っているから……、メネアは起き上がろうとした。しかし、体にうまく力が入らず、自由に動くことが困難であった。窓の外は、暗闇。部屋のテーブルに置かれた時計を見ると、深夜2時をまわっていた。扉がノックされ、看護師が入ってきた。

「お目覚めですか。医師を呼んできますね」

 看護師は点滴の交換にやって来たのだ。残りの量を確認して、看護師は医師を呼びに行った。すれ違うように、熊沢が病室に入ってきた。

「ここは?」

 シェイが問うと、熊沢は窓の外を見た後、答える。

「ネージュ大国の緊急医療病棟です。お嬢ちゃんも心配していましたが、大丈夫そうですね」

「すまなかった」

「謝らないで下さい。言うとすれば、お嬢ちゃんにお礼でも」

 熊沢は近くに置いてあった椅子に座った。しかし、その椅子の脚が折れ、熊沢は後ろに転げる。

「ジョークか?」

 シェイは冷たい目でそう言った。

「残念ながら、マジです」

 熊沢は必死に起き上がろうとするが、なかなか体勢を持ち直せない。遂には、ジャックナイフで起きた。

「流石は、元芸人」

「それ、誉めてますか?」

「熊には、それで十分だ」

 シェイは苦笑した。が、すぐに

「っで、今、どうなっている?」

「2体のディアモスが融合(フュージョン)したみたいです。それで、名前を今決めているところです」

(ゆう)(ごう)……。事態は深刻か。名前を決めるとかいう悠長な時間などないはずだろ」

 シェイが立ち上がろうとすると、医師が部屋に入ってきた。

「大事な話があるのだが、身内の人はいるかね?」

「……いえ、誰もいません」

 シェイはそう言った。熊沢は珍しく空気を読み、黙っている。

 医師は黙った。そして、口を開けると

「私達が君に(ほどこ)した治療は完璧ではない。別の病院に行ってもらいたい」

 そう言った。そして、熊沢が呟いた。

「つまり、インフォームド・チョイスということかな……」

 熊沢は発言は誰も聞いておらず、

「俺にはそんな時間、残されていない」

 シェイはすぐにでも出発する気だ。


 結局、シェイは医師の絶対安静を受け入れた。やむを得ず……

「中途半端な気持ちじゃ、倒せる敵も倒せませんよ」

 熊沢は、院内のとあるパフェ店のパフェを食べながらそう言った。このパフェ店、世界展開する有名な店だそうだ。

 朝日が窓から差し、フロールが目を覚ました。

「メネアくん大丈夫?」

 何色にも混ざらない無色のフロールは、いつものように振る舞う。フロールの振る舞いは、いつもシェイを悩ませていた。シェイは、フロールに何が出来た、何が出来るのだろうかと。答えは出ない。(むし)ろ、答えを出したくは無かったのかもしれない。ディアモスを倒した後、何をして何が出来るのか。

 熊沢は自分がこの姿になったことを自業自得というよりも、願いを叶えてくれた結果だと考えていた。あながち間違いでもないかもしれない。熊沢の願いは、多くの人々を笑わせられる才能がほしいと呪詛石の前で思った。ブラックコメットが更なる飛躍を遂げるには、自分の能力を上げる必要があると考えていたからだろう。

 謎であるのが栗鼠山だ。彼、もしかすると彼女かも知れないが、彼ということで話を進める。彼は呪詛石の前で何を願い、何を思ったのだろうか。熊沢でさえ、その願いを知らない。そもそも、栗鼠山は人であった時、どんな人だったのだろうか。少なくとも、熊沢の元相方ではない。

 それに、フロールの母親はどこへ姿を(くら)ませたのだろうか。

 ただ一言言えるとしたら、物語は終息へと向かっているということだろうか……

 

To be continued…


当時『紅頭巾3 ~呪詛石の戦慄~』がこの話で終了。ブログ版に移行し、『紅頭巾4 ~潸然と頬を伝う紅涙~』として、続きが始まりました。このタイミングで2019年が終わり、2020年へ。1月5日までは、引き続き、毎日更新します。来年もよろしくお願いします。

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