第十四篇 雪国緊急病棟24時(前編)
一方、リムジンに乗るフロール御一行様は、高速道路を終点まで乗り、蓊鬱諸国北バイパスを走り、ネージュ大国へと行く。
「汚いバイクをリムジンに載せちゃって大丈夫なの?」
フロールの言葉が熊沢をズタズタにしていることは、言うまでもない。
「お嬢ちゃん、言葉って言うものはですねぇ……」
「もうすぐネージュ大国です」
ロバのファインプレーで熊沢は言葉を失った。
「そう言えば、くまたんの真名って、何?」
フロールの疑問を熊沢はこう答えた。
「覚えていない……、呪詛石に記憶を奪われました」
「呪詛石って、記憶を奪うの?」
「フツーは、姿のみを奪うのですが、私は二度、呪詛石に願ってしまいましたから…」
熊沢の表情が暗く……
キキーー!!
熊沢が前に飛ぶ!?
「グハッ」
前のシートに投げ出された。
「くまたん、後部座席のシートベルトの着用は義務化されたんだよ」
シートベルトを締めていた、フロールと栗鼠山は無事だ。
「この体格だと、シートベルトが締まらないですよ…」
「だから、バイクなんだ…」
と、フロール。そういう問題だろうか。
栗鼠山が新たなクルミを物凄いスピードで割り始める。
「空から人が……」
ロバは喫驚していた。
熊沢は「そんなバカな」とリアクションしようと思ったが、その時、脳裏に電流が走った。
「クレナイマジックでシートベルトの長さを調節すれば良かったんだ……」
苦笑する熊沢。って、そっちかよ。
フロールが外に飛び出す!
「メネア君!?」
積雪の道路脇に血を流して倒れているのは、メネアだ。
「なんというタイミング……。道中で、先に行ったシェイが傷を負うも、偶然乗り込んだリムジンの目の前に落下して、再会するという仕組まれたかのようなこのシチュエーション……」
熊沢よ、そんなことを言う暇があるなら、さっさとシェイを助けてやれ!
負傷のシェイをリムジンに乗せ
「これから、このリムジンを緊急車両とし、ネージュ大国の病院に急行します。ちゃんとシートベルトを締めてください!」
人が変わったじゃなくて、ロバが変わった運転手は、ダッシュボードに何故置いていたのか、気になっていた赤いサイレンをリムジンの屋根に載せて、緊急車両と変化を遂げた。
「もしかして、警察官ですか?」
熊沢が問うと、ロバは
「現役の警察官ですよ」
「警察でイメージするのって、犬なんですけど……」
熊沢はある歌を口ずさむ。♪迷子の、迷子のこ……
「ウチの警察署は、78%がロバで、11%がシマウマ、8%が水牛、2%がヘビです」
と、ロバは言った。
(残りの1%が凄く気になる……)
しかし、ロバは何故残りの1%を言わなかったのだろうか。もしや、聞いてはいけないものなのだろうか……。熊沢には迷いが生じていた。いつもは空気を読んではいないが、事故になってしまえば、ツッコミがいないから危ない。かといって、このまま聞かずにいれば、眠ることができないような気がしてならなかった。そして、熊沢は意を決して、
「あとの1%は?」
「あぁ、"か"ですよ、カ」
「蚊?」
疑問がいくつも残る、謎のアニマルな警察署。人間はいないのかよ!? えっ? ツッコミを入れる所が違う?
雪が降る静かな道を、サイレンを鳴らしながらリムジン一台が走行する。信号も人も対向車もいない。緊急車両に変わった意味はあったのか、こちらにも疑問が残った……
To be continued…
ちょくちょく出てくる諸国名や国名。他作品でも登場するけれど、確認取ってないが多分大丈夫でしょう。蓊鬱諸国と言う名称を修正したような気もするけれど……。後で、確認します。




