第十二篇 朧気な記憶
暗闇に光が射す。朧気だけど、うっすらと見える。
さっきまでいた城……。しかし、まだ新しく外も賑やかだ。誰かがもめている。
「どういうことだ!? ここを手放せって言う気か!?」
男性が女性に叫んでいる。女性の手には水晶玉が。十中八九、占い師だろう。占い師の女性は
「私の占いは絶対です。間もなく、この地が巨大な生き物に破壊されてしまいます」
確かに、その占い師の占いは百発百中で評判が良かった。しかし、急にそんなことを言われて、100%信じる方が変である。
その光景がフェードアウトしていく……。
次の光は、巨大な怪物が街を襲うところであった。フロールも逃げている。
それが10秒ほどでフェードアウト。
その次の光は、フロールが何故か大勢の人に囲まれ、暴力を受けていた。
それを止めようと、一人の男の子がフロールをかばう。
*
気づいた時には、熊沢のバイクに乗っていた。
「お目覚めですか? こっちはバイクから転落するじゃないかとハラハラしてたんですけど、その調子なら、大丈夫ですねぇ~」
熊沢は軽く言っているが、ここは高速道路である。70km/sで走行中のバイクから転落すれば、ただ事ではない。
「……どこ?」
「今、フリューゲル国です。ドラゴンの進路が変わって、西に進んでるみたいです」
フリューゲル国、東西アガガラミ高速道路を西方向に走行中。左手には、コロシアムや球場が見える。
「シェ……、メネア君からの連絡で、No.13、No.16が共にある国を目指してるみたいなんです」
「……ふ~ん」
熊沢は珍しく空気を読んで黙った。
(シェイ君には「熊は黙っとけよ」って言われたしなぁ……)
少し走ってすぐ、熊沢が吃驚した!
「あっ!」
「……どうしたの?」
「ガス欠になるかも……」
バイクの燃料メーターは"E"を指していた……
バイクに燃料を入れるため、サービスエリアのガソリンスタンドへ。
「セルフかぁ……」
熊沢は困った。熊の手では、ガソリンを入れるための一連の操作ができない。恐ろしき、呪詛石の力……って、何か違う気がするが。
「セルフでも店員がいるとは思うけど、熊がガソリン満タンでお願いしますって、言う自分がアレなんだけど……、怖いよなぁ」
苦笑する熊沢。フロールの魔法でバイクの燃料を出してもらうことを一時考えた熊沢だが、フロールが燃料を出すということは、色んな意味で危険な予感がし、聞かなかった。
熊沢はガソリンスタンドの店員を見つけ、
「すみませ~ん!」
すると、店員と話をしていた客が
「ギァァーー!!」
「あっ、驚かないでください!! あの……、着ぐるみです」
熊沢がそう言うと、客と店員は目を合わせた。
「着ぐるみですか?」
「はい。実は、罰ゲームみたいなもので…、この格好である所に行けって言われて……」
苦笑する熊沢。
「大変ですねぇ~」
と、完全に他人事としてそう言った客は、愛車を洗車機に移動させる。店員は熊沢のバイクに燃料を入れた。
「ありがとうございます。……スミマセンね、ご迷惑をかけまして……」
熊沢の平謝り、炸裂。店員は「いえいえ」と。
しかし、ここで疑問が1つ。熊沢はお金を持っているのだろうか……
To be continued…
異国だと、当たり前ですが熊の姿は普通ではないので、こういったお芝居が必要なんでしょうね。
『龍淵島の財宝』でも、同じようなことがあった気はしますが。
動物の姿になると、いろいろと生活に支障をきたすのでは?