表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅頭巾Ⅲ・Ⅳ ~呪詛石の戦慄~  作者: サッソウ
紅頭巾Ⅲ
1/39

第一篇 雪降る街

お待たせしました。紅頭巾シリーズ第三弾です。

本作の後半が『黒雲の剱』の第7部と関連するため、進められなかったのですが、今年はかなり進んで第7部が見えてきたので、『紅頭巾3・4』を開始します。

『紅頭巾3・4』も引き続き、よろしくお願いします。

 空からは雪が舞い、時々吹く風で踊っているようです。街の屋根は薄らと白くなりつつあります。フロールはいつものように、トレードマークである紅色の頭巾を被り、配達に専念しています。母があの後失踪し、フラワーショップ・紅は、今年の冬よりも厳しい寒さを痛感する窮地(きゅうち)に立たされていました。ラオ店長は、いまだにトドの姿で、浴槽の水に浸っています。店長が動けないというのは、経営難どころか、いろいろと問題が起きそうですが……。

 隣の熊沢書店では、熊沢さんが、店長である兄にこっぴどく叱られていました。その理由は、熊沢さんが書店の通路にテーブルと椅子を置き、優雅に紅茶を飲んでいたからです。なんで、そんなところで飲んでいるのでしょうか。本に紅茶がかかるとか言う次元じゃないですよ。

「そんなところで紅茶を飲むなんて馬鹿か!? そんな暇があるなら、隣を手伝え!」

 店長は熊沢を、文字通り、放り出します。外に追い出された熊沢さんは黙りました。反省しているのでしょうか。熊沢さんの頭に、白い雪が積もります。雪で頭を冷やしているようです。

 ダンボールを抱えた人物が、書店前に来ましたが、熊沢さんの棒立ちを見て戸惑い、

「新書が入りましたよ」

 でも、熊沢さんは遠くを見つめたまま、黙っています。店長は、熊沢さんにわざと聞こえるように、

「アルバイトは、よく働くやつだよ。お前とは大違いだな」

 そう言い残して、アルバイトと一緒に、店の奥へと姿を消しました。熊沢さんは、振り向かずにとぼとぼ歩き、

(Mistake(ミステイク)だったのかなぁ……)

 見上げても、雪雲が空を包み込み、ただそこから雪が降ってくるだけだでした。

 飛蝗君に会って、熊沢さんの何かが変わったようです。今までの自分を振り返り、迷っていました。自分は、何をすべきなのか……。

 熊沢さんがそのままとぼとぼと歩いていると、フロールに出会いました。熊沢さんは、すぐに気持ちを切り替え、

「お嬢ちゃん、手伝いましょうか?」

 と、フロールにいつもの調子で尋ねると、

「大丈夫。今日の分は全部終わったから。それに、明日からは休みだしね」

 と、笑顔で答えたのでした。

 明日からは、ロートン国のウィンターウィークです。通称、W.W.などと言われる冬の大型連休で、今年は8日間です。この地域は、この時期、激しい吹雪に見舞われ、外出など到底できないときがあります。そのため、大気が一番不安定なこの時期に、大型連休のW.W.という制度があるのです。天候に左右されるため、毎年開始の日にちは変動します。とはいえ、おおよその時期は決まっているため、変わっても1週間前後ですが。

 フラワーショップ・紅に戻ったフロールは、熊沢さんに手伝って貰いながらシャッターを下ろします。店内の棚には、花が数輪しか残っておらず、W.W.前の売れ残りとしては、平年並みになったようです。

「寂しくありませんか?」

 唐突に熊沢さんが聞いたのもの、自分で聞いておきながら、後悔しました。フロールの気持ちを一瞬でも考えなかった自分の失態です。ただ、フロールは素直に答えます。

(さび)しいよ……。お父さんは、どこかに行っちゃったお母さんを探しに行ったきりだしさ……。お祖父ちゃんは、野生の狼に()()されたお祖母ちゃんを助けに行ったし、(せっ)(かく)友達になれた飛蝗君もどこかに行っちゃったみたいで……」

(あれ? 何か今、さらりと大変な事を聞いた気が……)

 と、熊沢は感じた。祖母は、よく野生の狼達に(なん)()されていたが、仕舞いには(さら)われたようです。あなや……。

「お嬢ちゃん、あの……」

 と、熊沢さんは言葉にも詰まったようです。言うべきか言わぬべきなのか。

「ねぇ、くまたんなら知ってるのかな? ジュソセキって、知ってる?」

 不意を()かれました。熊沢さんは、(しばら)く何も言えませんでした。迷っていたことを言う前に、先手を取られたようです。(じゅ)()(せき)について、熊沢は酷く悩んでいたのです。

「明日、隣の書店に来て下さい」

 そう言って、熊沢はその場を立ち去りました。

(お嬢ちゃんに言うには早すぎる気がするけど……。兄貴から聞いた20年前のことも言うことになるけれど……)

 深刻になる熊沢は、この日は一度も笑わせようとしませんでした……


To be continued…


いつもと異なり、少しシリアスな感じで始まってますが、いつも通りの『紅頭巾』になると思いますので、ご心配なく(?)

すでに、”呪詛石”に関しては、前作『紅頭巾2』でシェイと熊沢が話していましたが、一体”呪詛石”とは何なのか。次回に続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ