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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
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8話

イベントに行ってる葵先輩、ダイちゃん先輩と合流するため、マオと二人で会場の方へと向かう。

 つもりだったのだが、マオがいちいち目にとまる店に入ろうとするのでなかなか進まない。気持ちは分からなくもないが。

 そしてまた、露店に出ている中古のフィギアを眺めている。

「晴人ぉ。なぁこれ――イタッ!」

 マオが声を上げたのに、驚きそちらを向く。

「おう嬢ちゃん。こんなところに座り込んでたら邪魔やろ」

 どうやら店の前で座り込んでいたマオに、男性がぶつかったようだ。それも運の悪いことにガラが悪そうだ。

「人にぶつかっておいて、その言い草はなんだ。前をよく見ていなかったそなたにも非はあるだろう」

「なんだ? こんなちんちくりんのくせにケンカ売ってんのか?」

「なぁ晴人、ケンカを売るとはどういう意味だ?」

「闘いを挑む? って感じかな」

 というか、こっちにふるな。というか、そんな面倒くさそうなのと関わるなよ。

「ほう、闘いを挑むか。きさま勇者には見えぬが、この魔王であるエグゼローザ様に挑もうというのであれば、容赦はせんぞ」

 そう言うと、マオは詠唱を始める。マオの内側から邪悪な魔力の高まりを感じる。

 直感でヤバイと判断。

「やめろマオ!」

「何故じゃ。闘いを挑んできたのはこのモノたちだぞ」

「いやそれシャレにならないから」

 下手したら、この辺一帯が吹き飛ぶ魔力量だ。さすがは魔王なだけはある。

 そんな俺たちのやり取りを見て、男はゲラゲラと笑っている。どうやら中二病のイタい女と同じくイタい友達くらいに思っているんだろう。

 いやお前、いま生と死の狭間にいるからな。わかってんのか?

「マオ、ダメだ。この場を離れよう」

 そう言ってマオの下へ向かおうとして止められる。

「おっと兄ちゃんは俺と遊ぼうぜ」

 仲間がいたのか。俺は、後ろにいた男に羽交い締めにされる。

「なにやってるそこのモノ。晴人を離せ」

 またマオは魔力を溜め始める。

「やめろマオ。それはダメだ。街を吹き飛ばすつもりか」

「しかし晴人。このままでは」

「どうした嬢ちゃん。なんだ? この街吹き飛ばせるのかよ。面白そうじゃん、やってみろよ」

 はじめにぶつかってきた男は、ニヤニヤしながらマオを煽ってくる。

 マオはグッとガマンしてくれているが、いつまで持つのかわからない。

 ってかこんなチンピラの挑発に乗るなよ魔王さま。

 だんだん、人だかりも出来始める。店員らしき男性も出てきて男を止めようとするが、言うことを聞いてくれていないようだ。

 こんなことなら兵士長の訓練を、もう少し真面目にやっておくんだった。

 あれを使うか? でも上手くいくか?

 祖父から教わって、唯一マジメに練習して出来るようになった魔法。

「風の精霊よ。水の精霊よ。いにしえの盟約により、我の下に集いて、その力を示せ」

 この世界に風の精霊と水の精霊がいるのかどうかもわからないし、マースフィードでの盟約が通用するのかもわからないが。

 とりあえず魔力を高め、呪文を唱える。しかし、魔力は最小限に。

 雲がだんだん集まってくる。辺りがだんだん暗くなる。

 男たちや野次馬たちも異変に気づき空を見上げはじめる。

 だが、マオだけはこちらを見ている。

「晴人、それ、、、」

 マオにバレるかな、勇者の孫だってこと。でも今はこの場をなんとかしないと。

 雲は稲光を発しはじめ、それが近くのビルの避雷針に音を響かせ落ちる。

 それに驚いたのか、俺を羽交い締めにしていた男はその手を離す。

 今だ。そこで呪文詠唱をやめる。

「逃げるぞマオ」

 そう言って、マオの手を引いてその場から離れた。

 後ろの方ではパトカーのサイレンの音が聞こえる。野次馬の誰かか店員が呼んだのかもしれない。

 マオの手を引いて、なんとか人気のない場所までやってきた。

「なんとかなったな」

「晴人、さっきの、、、」

「なんか急に天気悪くなってきてたな。おかげで逃げられたからラッキーだったけど」

 とりあえずテキトーに誤魔化してみる。

「そうか。まぁそうだよな」

 マオは納得してくれたのかどうなのか。でもそれ以上は追求してこなかった。

「おっ! 晴人にマオじゃん」

 声のした方を向くと、葵先輩とダイちゃん先輩の姿があった。

 やみくもに逃げたら、どうやら葵先輩の行っていたイベント会場の方に向かっていたようだ。

「なんか、向こうの方で騒ぎがあったようだけど、二人は大丈夫だった?」

「それはだな。無礼な男が、、、」

「いや、大丈夫でしたよ」

 慌ててマオの言葉を遮る。

「どうしたのだ晴人よ」

「いいんだ。話せばややこしくなる」

「そういうものか?」

 納得いってないような表情を見せるマオをなんとか黙らせる。先輩達にあまり心配かけるのも申し訳ない。警察沙汰になったとか知れたら、最悪サークル活動ができなくなるかもしれない。

「そっか。大丈夫なら良かった」

 ダイちゃん先輩は何かに感づいている様子だったが、それ以上は何も言わなかった。

「じゃあ、腹も減ったことだし、飯でも食いにいくか」

 そう言って歩きだす葵先輩の後を三人でついていく。

 なんか今日はいろいろあってどっと疲れた。

 そしてお金のないという葵先輩に付き合って、牛丼屋で4人で牛丼を食べて、帰ることにした。


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