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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
28/37

28話

狭く薄暗い通路を、ランプを片手に歩く。なかなかの距離た。

 ここに来たのは、かなり久しぶりだが、よく覚えている。

 どこの城にもある、隠し通路というやつだ。

 外敵などに攻められた時に、要人などを密かに脱出させるための通路。だが、この城が建てられてから、ずっと平和だったため、使われることはなかった。

 ならなぜ、俺が知っているのか。

 それは、子供の頃に、ここでよく遊んでいたからだ。

 子供というのは、秘密基地的なものが好きだ。俺も子供の頃は、城中で遊び回っていた。そして見つけたこの通路も、お気に入りで、よく走りまわっていた。

 マオの下へ行くと言っても、城から出なくてはどうにもならない。かといって、俺単身で魔王の下へ向かうと言って、正門から出してもらえるはずもない。そこで思い出したのが、この通路だ。

 長年の平和で、この隠し通路を守っている兵士もいなかった。来るのは簡単だ。

 服は、外行きの厚手の服に外套。腰にはおじい様から預かった剣を携えている。本当は鎧とか来てきたかったが、周りの目が気になって、取りに行けなかった。なので、持ち物は、おじい様の侍女が用意してくれた最低限の食料の入ったカバンひとつである。

 ただでさえ、日本でダラけたオタク生活を送ってきた俺が、こんな装備で本当に魔王軍を抜けて、マオの下へとたどり着けるのか、不安しかない。

 それでも行くしかない。

 そんなことを考えながら歩いていると、やっと出口へやってきた。

 そこで気づく。

 扉に鍵かかってんじゃん。

 そりゃそうか。向こう側から入ってこられないように、鍵かけるわな。でも内側からも開けられないのか。こんなんで緊急時、大丈夫かよ。

 なんとか剣でこじ開けられないか。そう思い剣を引き抜く。

「まさか、それで開けるつもりですか?」

「誰だ!」

 引き抜いた剣をそのまま構え、振り向く。

「リナか!」

 カステリーナがそこには立っていた。

「まさか、伝説の剣を、扉の鍵を壊すために使おうとするとは」

 リナは、呆れた様子で懐から何かを取り出す。

「必要なのは、こちらですか?」

「この扉の鍵? 持ってきてくれたのか」

「ええ、あなたの行動が何となく想像できましたので」

「連れ戻さないのか?」

「あなた様を連れ戻すのが本来、私の役目なのでしょうが、あなた様の意思を尊重したいという思いも私にはありますので」

 そう言って、リナは俺にその鍵を手渡した。

 俺はそれを使って、鍵を開ける。

「まぁマオさんが……ない方が私には……いんですが、でも彼女が……のも……ですしね」

「あっ、ごめん。声が小さくて聞こえなかった。なんて言った?」

「いえ、なんでもありません」

「そうか」

 そして扉を開け外へ出ると、そこは森の中だった。すこし離れた場所に城が見える。

「さて行くか」

 そう歩き出そうとしたところで、木々の間から二つの影が現れた。それはまた、見知った顔だった。

「どうしてここに?」

「占いで出たのでね」

「占い万能だな」

 それは、似顔絵師のリディアとコスプレ衣装を作ってくれていたイルナだ。

「私たちも一緒に行ってもいいかな」

「私もマオちゃんのことが心配です」

「しかし、俺たちが向かうのは魔王軍の中枢。おそらく相当危険な旅になる」

「それでも私も、お手伝いしたいんです。おじいちゃんが、伝説の勇者の手助けをしたように」

 イルナは、そう力強く叫ぶ。

「それに、マオの正確な居場所、わからないだろ?」

 リディアも不敵な笑みを浮かべながら言う。

「わかるんですか? というか、魔王軍にいるんじゃないんですか?」

「わかるも何も、あんたたちがここから出てくるのがわかったのは、私の占いだよ。そしてその占いでは、マオは別の場所にいる」

 マオが別の場所にいる?

 聞いていた話では、マオが魔王軍を指揮して、こちらに攻め込んできたとのことだった。でもマオがそんなことをするはずがない。と思っていた。

 マオは魔王軍とは別の場所にいる? 魔王軍とは関係ないのか?

「マオはいったいどこに?」

「では、行きましょうか。勇者様」

 そうリディアはまた、不敵な笑みを浮かべた。


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