26話
まずは先行して、狼のようなモンスター、コボルトが森から駆け出す。
続いて、小ぶりな人型をしたモンスター、ゴブリンが現れる。
それらに一斉に放たれるは、銃弾の嵐。
モンスターたちが次々となぎ倒されていく。
弓矢をもったゴブリンが現れ、撃ち始めるが、兵の前に装甲車が壁のように立ちふさがる。その影から、携行したアサルトライフルを撃ち続ける。
すると、今度はそれらのモンスターを守るように、森の木から手足が伸びゴブリンたちの前に壁となる。さらにその影からは巨大な人型のモンスター、オーガやビルほどの大きさの人型モンスター、ギガンテスが現れる。
オーガやギガンテスにも銃弾が放たれるが、あまり傷がついていないように見える。
「あれはいったい」
思わず、疑問の言葉が口をついて出る。
銃弾の効いていないギガンテスは、ズンズンと前に進み、ついに一台の装甲車までやってくると、上部についている機関銃を拳を叩きつけ破壊する。
どうやらそれが痛かったのか、その拳を抱え呻いているが。
その後、装甲車を持ち上げるとこちらの陣の方へと投げつける。
それらが、各地で起こり、陣が崩れ始める。
ついで、オーガが棍棒を振り回し、ライフルを持った兵たちをなぎ払い始める。
「父上!」
「いや、まだだ」
すると、アサルトライフルを持った兵たちが下がり始め、代わりに別の兵が飛び出していく。その戦闘にいるのは、遠目でもわかる、なびく金髪と白銀の鎧。カステリーナだ。
彼女は、剣を抜くとギガンテスを次々と切り裂いていく。
それに続くように、カステリーナの後ろから現れた兵たちが、剣を抜きオーガたちを倒していく。
「あのギガンテスやオーガは、おそらく物理防御を魔法によってかなり高めているのでしょう。なので銃弾があまり聞かなかった。しかしカステリーナ殿の剣は、その魔法障壁を切り裂くことができる。他の兵もそうなのですね」
カーウェンの言葉に、ヨシュアが頷く。
「ギガンテスやオーガにその魔法障壁をかけるが、ゴブリンどもにかけなかった。かけれられなかった。魔法障壁をかけられる術者はそう多くはない、といったところでしょうか」
「そう見るか、カーウェン。ならば前線を押上げ、その術者を見つけ、倒す」
そうヨシュアが言うと、側にいた伝令が走る。
そして陣全体が動き、ライフルをもった兵たちが前へと進み始める。それ以外の兵も槍を持ち、攻勢をかけ始めた。
「これならば、この戦いも時間の問題か」
そう父、ヨシュアがつぶやいたとき、また別の影が空から現れた。
ドラゴンだ。
トカゲのような身体にコウモリのような翼が生えている。しかしその大きさは、人の十倍以上、ギガンテスほどもある。
それらが突如、十数体現れた。
それらはこちらの陣の真ん中に降り立つと、火炎の息を吐き、辺りを焼き払っていく。
さらに魔法障壁を張っているのか、銃弾もあまり効いていないようだ。
「誘い出されたか」
カステリーナも一体のドラゴンを倒したようだが、その間に、他のドラゴンによって兵たちがなぎ払われていく。
その中の一体が、飛び立ち、こちらにやってくると、俺たち目がけ火球を吐いた。
俺は慌てて身をかがめる。そんなことをしてなんとかなるとは思わないが。
しかし、俺とヨシュアの前にカーウェンが立ちふさがり、両手を掲げると手前で火球は何かに阻まれ霧散した。
「大丈夫でしたか、お二人とも」
「あぁ助かった、カーウェンよ」
そう言うと、今度はヨシュアが手を掲げる。すると先ほど火球を吐いたドラゴンに落雷が当たり、地上へと堕ちていく。
「うむ。撤退、、、か」
そう言うとヨシュアは、マントをひるがえし、その場を去っていった。
その後、陣全体が下がり始めたが、魔王軍の追撃はなかった。
向こうもかなりの損害がでたためだろう。
撤退してきた兵たちの中に、カステリーナの姿があった。
「晴人様。まだこちらにおられたのですか!」
「あぁ、まあな」
「申し訳ございません。このような形になってしまい、私の力およばず、、、」
「リナが無事で良かった」
「そのような、もったいなきお言葉」
カステリーナは俺の前に跪く。
「いいよリナ。さぁ帰ろう」
そして、まだ黒煙立ち込める平原を一瞥すると、その場をあとにした。




