25話
開けた草原。そこには大勢の人々が集まっている。一見すると、有名バンドのライブ会場のようだが、それとは違う。
皆、同じような鉄の鎧に盾、槍を持ち、規則正しく整列している。そこには旗が掲げられ、見知った紋章が刺繍されている。我が王家、ミヤマ家のモノだ。
「なんだアレは」
晴人はそれらを見て、顔をしかめる。
「我が軍勢です」
「そんなことはわかっている」
カーウェンの言葉に激しい口調で返す。
大勢の兵達にではない。歩兵や騎兵がいるのはわかる。そんな中、装甲車がいるのだ。四輪の装甲車の上には機関銃まで積んである。それらが、大勢の兵の中に、点在しているのだ。その装甲車の周りには、アサルトライフルを担いだ兵の姿まで見える。
「なんでこっちの世界に装甲車がいるんだよ」
そう、吐き捨てるようにつぶやく。
「晴人様、、、」
着いてきたカステリーナも、小さく声を漏らす。
晴人はカーウェンと共に城に戻ると、魔王軍の挙兵に合わせて、国王である父も出兵したと聞き、カーウェン、そしてカステリーナと共に、その陣地へと馬を走らせた。
たどり着いた陣地には、晴人が日本に来る前には考えられないような光景が広がっていた。
小高い丘のようになった場所にある陣地へと向かう。そこには、ひときわ豪華な鎧を来た男が立っていた。晴人の父、ヨシュアだ。
彼は、振り上げるのも一苦労なほどの大剣を地面に突き立て、平原の先を見据えている。
「父上、これはいったい」
「何をしに来た? ラインハルトよ」
「何をしにって。魔王軍が挙兵したって聞いて。帰ってきたら、父上が出兵されたと聞いたので」
「魔王軍が挙兵し、こちらに向かっているのだ。兵を出すのは当然だろう」
「だからって、急に」
「急なのは向こうであろう。先代の意思を尊重し、やつらに自治区を与え、干渉せずにいたのに。まさか別の場所で、軍備を整えていたとは。それに気づかなかった私にも、問題はあるが」
ヨシュアは、いっさい晴人の方を見ずに、まるで独り言のように話す。
「それに、あの装甲車はなんなんです? いつの間にあんなものを用意したんですか。しかも銃まで」
「貴様が異世界のことを知りたいと言って飛び出してから私も調べたのだよ。誠に便利なものがあるのだな。鉄を貫く弓矢のような武器。しかも大した力もなく、連射も出来る。さらに馬もなく、馬より早く走る馬車とは。それに鳥のように空を飛ぶモノや街ひとつ破壊できる武器まであるそうだが、流石にそこまでは無理であったよ」
「あんなもの。この世界には必要ないでしょう」
「しかし、今こうして、アレらがあるおかげで陣を迅速に敷くことができたであろう」
「父上、、、」
「もうよい。今さら帰ってきて、貴様と議論するつもりはない。カーウェン、こいつを連れて城へ戻れ。邪魔だ。そこのは我が騎士団長の娘であったな。聖騎士殿の孫娘。そなたは残れ」
「「はっ」」
二人はそういうと、カステリーナはヨシュアの側へ向かい、カーウェンは俺を連れて下がろうとする。
「父上!」
「来たか、、、」
ヨシュアがそうつぶやくと、側にいた兵の一人がインカムに言葉を発し、兵全体が動き出す。
そして平原の向こう、森の木々がなぎ倒され、巨大なモンスターたちが姿を現した。




