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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
24/37

24話

「お久しぶりね」

 現れたのは山田尚子こと魔王エリスだ。今日もまた以前とは違うコスプレをしている。おそらく何かのゲームのキャラなのだろうが、俺も最近ついていけなくなってきた。

「あぁエリスか。ひさしぶり。今日のコスプレも似合ってるよ」

「まぁありがとう。お世辞でも嬉しいわ」

 エリスにも、冬コミに参加することはメールしていたので、ねぎらいに来てくれたのだろう。

「コスプレ撮影はいいのか?」

「一旦休憩。流石にずっとは疲れるしね。それに寒いし」

「まぁ海風がね。それに今回も露出多いし」

「その辺は気合よ」

 エリスの今回の衣装も露出多めだ。夏コミの時も日焼けが大変そうだったが、冬コミは冬コミで寒そうだ。そういうところはコスプレも大変だと思う。

「ところでお宅の魔王さまはどうしたのよ」

「どっかで休んでるよ。ギリギリまで頑張ってたんだ。しかも昨日まで緊張であまり寝てないらしい」

「あっそ。貧弱な魔王さまね」

 呆れた様子のエリスだが、どこか寂しそうだ。

「ところでさ、晴人」

「なに?」

「私たちって、コミケでしか会わないじゃない?」

「そうだな」

「だからその、、、もう少し別の機会にも、、、」

「晴人さまぁぁぁ」

「どうしたんだリナ、血相変えて」

 突然、リナが走り込んでくる。

「あらあなたは以前の偽魔王」

「あなたは何か剣を振り回していた、晴人の知人とか友人とか」

「そんなことより晴人様」

「そんなこと、、、って」

 不機嫌そうなエリスには気にせず話を続けるリナ。

「幼い少女に、ふしだらな行為をする書籍を描いている不届き者どもに、説教をしてまわっていたのですが」

「何やってんだよリナ、、、」

「そんな中、見つけてしまったんです。男性同士で、その、ふしだらな行為をする書籍を!」

「あぁBLね」

「あんなものが許されるというのですか!」

「いいんじゃない? 考え方や趣味嗜好は人それぞれだし。所詮は、マンガの中だけだし(いや現実にもあるけど)」

「なるほど。マンガの中ならなんでもあり。そういうものなのですね。わかりました。私はもっと世の中について知る必要があるようです。もう少し、その、そういった考え方について勉強して参りたいと思います」

 そう言って、また駆け出すリナ。

「あぶないから走るなよリナ」

「変わった子ね彼女。今どきBLくらいで」

「彼女の家は、えーと、なんていうか昔ながらのお堅い家で、道場みたいなのもやってて。最近なんだよ、こういうのに触れるのは」

「そうなの」

「ところで、さっきの話し。なんだっけ」

「いや、いいわ。またメールする。一冊ちょうだいその本」

 そう言って千円札を差し出す。

「いいって、あげるよ」

「いいの。彼女に借りを作りたくないのよ」

 そう言って、強引に千円札を渡すと、マオのマンガを一冊受け取って帰っていった。

「あれ、さっきのエリスちゃん?」

「葵先輩、おかえりなさい。どうでした?」

「おうありがと。戦利品がっぽりよ」

 先程まで、お目当ての同人誌を探しに行っていた葵先輩は、両手に大きな髪袋を下げている。ずっしり重そうだ。背中のリュックもパンパンである。

「そういやマオちゃんは、まだ帰ってこないのかい?」

「そうなんですよね。どこで油売ってんだか」

「店番替わってやるから、探してこいよ」

「そうですね。ありがとうございます」

 

そして、俺はブースを離れ、マオを探しに会場中を回った。


だが、マオの姿はどこにもなかった。

そして、別の人物がそこに現れた。

「カーウェン先生」

「お久しぶりですラインハルト様」

「先生の黒マント。ここでは違和感ないですね」

「外は寒いですからね。防寒にもなってちょうどいいですよ」

「ところで、先生がいらしたということは、何かあったんですか?」

「察しがいいですね。流石は勇者の血といったところでしょうか」

「いいから、そういうの。俺、今少しイラついてるんだ。用があるなら早くしてくれないか?」

「マースフィードへお戻り下さい」

「まだ帰らないと言っただろ」

「魔王軍が挙兵しました」

「それはホントか!?」

「えぇ。それに、率いている者は、魔王の孫と名乗っているそうです」

「なんだと! 魔王の孫? そんなバカな」

「お戻りいただけますか?」

「あぁ、当たり前だ」


 そして俺は、約二年ぶりにマースフィードに戻ることにした。

「お久しぶりね」


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