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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
2/37

2話

大学からの帰り道。

 マオとふたり、並んで歩いている。

 マジヤイバーを3話まで見たところでマオは「この続きはかなり気になるが、まだ引越しの片付けが終わっていない。今日はもう帰ろうと思う」と言った。

「そうか、続きが見たくなったらまたおいで。他にも面白いアニメたくさんあるから」

 葵先輩の言葉に頭を下げると、マオは部屋を出て行った。

 俺はそのまま、マジヤイバーの4話目を見ようとしたが「なにやってるんだ、途中まで送ってやれよ」と葵先輩に言われて、マオを追いかけて出てきたのだ。

 そういうところはカッコイイ葵先輩。

 俺の家は大学のすぐ近くだ。父が用意してくれた。

 聞けばマオも近くらしい。ならそばまで送るよと、ついてきた。魔王がこっちの世界でどんなところに住んでいるのかは気になる。わざわざ毎日マースフィードの魔王城からやってきてるってこともないだろう。というかマースフィードのどこに住んでるんだ? 魔王城は祖父が魔王を倒してから、王国の管理下に置かれているはずだが。

 そういえば、マジヤイバーを真剣な顔で見ていたマオを思い出す。

「マジヤイバー面白かった?」

「よくわからなかったが、興味は沸いた。あれは、こちらの世界の魔法使いなのか? 不思議な格好をしていたが」

 マジヤイバーは、魔法で変身して戦うヒーローだ。マースフィードからしたら不思議な格好だろう。

「魔法で攻撃するのではなく、魔法で変身とか言っているが、変な布を全身に着て、拳で戦うというのが面白いな。しかもそれほど見た目では強くなった気がしないのだが。それが驚異的に強くなっているのが興味深い」

 真剣に考えているマオはすごく可愛い。本当にこちらの世界の魔法に、純粋に興味があるんだなと感じる。

「あれは、物語だから。そういうのが面白いと思ってやってるものだから」

「そうか。物語ならそうなのだろうな。しかし考えたものは素晴らしい発想力だ。ぜひ我が軍のマジックアイテム開発部門に迎え入れたい」

 魔王軍の兵隊がマジヤイバーみたいなのばかりになる絵面を思い浮かべるとかなり面白い。

 しかしマジックアイテム開発部門なるものが魔王軍にはあるのか。てか魔王軍あるの?

 知らん間に戦力整えられてる感じ? それヤバくないか?

「ところであのテレビというものとVHSというものは、魔力で動いているのか? あれこそ物事を記録したり、映し出し再生する魔法なのだろう?」

「あれは魔力ではなく電力で動いているんだよ。魔法というより科学」

「カガクというのが、この世界の魔法か?」

 どこから説明したものか。

 俺は、祖父からいろいろ聞いていたからわかっていたが、科学や電気についてまったく知らないマオにしてみたらそうなるんだろうな。

「この世界に魔法ってのはないんだよ。電気ってエネルギーがあってそれで機械ってのを動かして、暮らしを豊かにしている。エネルギーは電気だけではないけど。それが科学。まあ科学もそう一言では言い切れないけど、だいたいそんな感じ。国、ではないけど国の管轄するところから電気やガスってエネルギーを買って、それで機械を動かして生活してる」

「なるほど。争いではない、生活に特化した魔法具を作り出し、電気という魔力のような物をお金を払って買っているのか。それにより魔法使いではない者でも、魔法と同等の力が得られる。そのおかげでこのような城のような家を建てたり、我が城と同等かそれより大きい大学なる学び屋を作ったりしているのか。なんと興味深い世界よ」

 めちゃくちゃ理解力あるなこの子。魔王だから頭がいいのか? すごく話が捗るんですけど。

 でも俺はこの世界の人間。という設定。魔法について詳しいとバレると、勇者の孫だということがバレて、殺されかねない。どうやらまだ、俺のことはこちらの世界の住人だと信じているようだし。

「しかしならばなぜ、あのマジヤイバーなる物語は、魔法と言っていたのだ? 魔法がないのなら、魔法を使った物語も書けないであろう?」

 めちゃくちゃするどい。

「魔法はないけど、魔法を使った物語は昔からあるんだよ。なぜかはわからないけど。あの研究会を作った昔の先輩は、そういうことも調べてたらしいけど」

「なるほど、もしかしたら大昔にこちらの世界にきた者がいたのかもしれないな。そして魔法の概念だけ教えたのかもしれん。そして魔法という言葉だけが残り、独自解釈されるようになり、あのような物語が生まれたのか。実に興味深い」

 なんか、自己解決して納得してくれたっぽい。

「ところでマオの家ってのはどこなんだ?」

 そろそろ自分家につきそうなんだが、そうとう近くにあるのか?

「この世界での我が城はここだ」

「ここって、俺んち、、、えっ!」

 マオが指さしたのは、父が用意してくれた俺の家だった。

「マジか! ここ俺んちなんだけど」

「そうなのか。同居人が他にもいるとは聞いていたが、晴人、君だったとは。ならばよろしく頼む」

 マオはそう言うと「ただいま」と言いながら玄関の扉を開け入っていった。

 魔王と一つ屋根の下での生活。どうなっているんだ。

 1年後輩のくせに、さらっと呼び捨てにされた気がしたが、そんなことはどうでもよくなってしまった。


7月6日

途中、矛盾を発見したため、修正。

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