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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
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18話

「私も同人誌を描く!」

 あまりにも唐突な発言。いや、このサークルに入って、夏コミまで行って、そのうち言い出すんじゃないかとは思ってはいたが。

 放課後のマホ研。俺、マオ、葵先輩、ダイちゃん先輩といつものメンツだ。

マオは読んでいた同人誌を閉じると、それを掲げ高らかに宣言していた。

 結局前回の夏コミでもコスプレだけで終わったし、マオが同人誌を買っている素振りも見てないので、おそらく葵先輩のだろう。

「葵先輩、大丈夫なやつですかアレ」

「さすがの俺も、そのくらいの配慮はできるさ。ヤバイ奴は、自宅に持って帰った。どうせ読むのは俺だけだしな。一応、この部屋にあるのは、全年齢対象のやつだけにはしてある。微エロはあるけどな」

 失礼な話。葵先輩にあまり常識を求めていなかった、というか初めは求めていたが、途中で諦めていた俺としては、そんな配慮ができるようになった先輩に驚きを覚える。

「ところでマオ、なんで同人誌を描こうと思ったんだ?」

「葵殿がな。オタクは同人誌描いてナンボだ、というのでな。そして読んでみたら面白いではないか」

「やっぱり葵先輩が焚きつけたんですね」

 葵先輩の方を見ると、聞こえないといったふうに、背中を向け自分も同人誌を読んでいる。

「それに、アニメではその製作者の独自解釈での魔法やモンスターなんかが描かれるが、同人誌ではそれをさらに別の人間が独自解釈で物語を展開している」

 なんかマオが語りだした。とりあえず聞いてみる。

「これはこうだという固定観念がなく、製作者自身の私はこう思うが形になっている。それらが集まり売ったり買ったりしているということは、それをみんなで認め、広げていこうという思いがあるということだろう」

 すごく最もらしいことを言い出した。まぁおそらく葵先輩の受け売りだろう。

「そこでだ。私もそれにならい描いてみようと思うのだ。もしかしたら、新しい何かが生まれるかもしれん」

 マオの新しい何かって、魔法やモンスターのことだとは思うんだが、魔王が新しい魔法やモンスターを生み出すきっかけを作っていいものか、少し疑問に思う。

「ところでマオ。マンガ描けるのか?」

「描けないぞ」

「じゃあどうすんだよ」

「描けるようになる」

「どうやって」

「それを考えるのは晴人の仕事だろ」

 そして結局、俺も巻き込まれることになった。


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